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るり
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しおりを挟む「お前はっ! ちょっとは考えろっ! 俺がいるんだぞっ⁉」
怒鳴る俺の耳に熟れすぎた果物を啜るかのような粘膜の犯される音が響き、追いかけるように「はぁ」と玄上の安堵のような、感嘆のような吐息が続く。
今、逸らした視界の外で玄上があの可憐な赤みを見せていた箇所を蹂躙しているのだと思うと、座りが悪くなるような何とも言えない居心地の悪さを感じてしまう。
「 ぁ、ああっおにいちゃんっ……そこぉ、っぅ、ぃいよぉ、にいちゃんのおぉっきくて、きもちぃ……」
艶めかしい淫らに誘う声が上がり、狭い部屋の中では逃げることもできずに仕方なく腹の下を押さえ込むようにして身を縮める。
「 ──卯太朗」
もっと突いてくれとせがむ声に混じり、荒い息を吐きながら玄上が名を呼ぶ。
つい振り向きそうになったが、ぎしぎしと板の軋む音に慌てて視線を剥げた畳に向けた。
「こいつはなぁ、こんな:形(なり)のせいか、稼ぎが悪いんだ」
「そっそんなに美しいのにか?」
はっ と短く吐き出されるような笑いが背中に投げつけられ、それが嘲笑かどうなのかわからずに眉根を寄せる。
「お前ならそう言うと思った」
粘つく水音と板の軋む音、それからあの白い肌がぶつかって立てているぱんぱんという音が次第に激しくなって行くのを聞きながら、気まずい思いに返事ができない。
「そ っそこっだめぇっ‼ あぁっ、あっあ、ああっ……ぁんっ ────っ」
甲高い悲鳴のような喘ぎが一際高く上がり、それとは対照的な玄上の零す小さな呻き声が聞こえる。
「……っ、だから、俺がこうやって時々買うんだ。るり、次はあいつを頼む」
「ぁ、……ん、わかった」
そのやりとりに「は?」と返す前に、白く細長い手がするりと首に絡んだ。
「や っお、俺はいい! やらない!」
避ける俺にるりは硝子の瞳を向けて不思議そうに首を傾げる。
「俺っ……俺はっ‼ か、金は払うからっ!」
まるでおぼこい生娘のよう声を上げて逃げると、一瞬はっとした表情を見せたるりの顔がくしゃりと歪んだ。
次の瞬間、咄嗟に止めようとした玄上よりも早く、るりの手が湯飲みに伸びて飲み残された水を俺に向けてぶちまけていた。
突然に顔を打った水飛沫の冷たさに、冷たい硝子の目に見下ろされていることに気づく。
冷ややかな、夏でも温まない神秘を湛えた泉の色だ……と、雫を払うのも忘れて見入る。
「おれはっ何もしてないのに金もらうほど落ちぶれてないっ!」
ごとん と音がして足元に湯飲みが転がり、名残のように水滴が零れ落ちた。
「あんた、やっぱり嫌なやつ」
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