とある画家と少年の譚

Kokonuca.

文字の大きさ
上 下
63 / 192
るり

8

しおりを挟む



「お前はっ! ちょっとは考えろっ! 俺がいるんだぞっ⁉」

 怒鳴る俺の耳に熟れすぎた果物を啜るかのような粘膜の犯される音が響き、追いかけるように「はぁ」と玄上の安堵のような、感嘆のような吐息が続く。

 今、逸らした視界の外で玄上があの可憐な赤みを見せていた箇所を蹂躙しているのだと思うと、座りが悪くなるような何とも言えない居心地の悪さを感じてしまう。

「  ぁ、ああっおにいちゃんっ……そこぉ、っぅ、ぃいよぉ、にいちゃんのおぉっきくて、きもちぃ……」

 艶めかしい淫らに誘う声が上がり、狭い部屋の中では逃げることもできずに仕方なく腹の下を押さえ込むようにして身を縮める。

「  ──卯太朗」

 もっと突いてくれとせがむ声に混じり、荒い息を吐きながら玄上が名を呼ぶ。
 つい振り向きそうになったが、ぎしぎしと板の軋む音に慌てて視線を剥げた畳に向けた。

「こいつはなぁ、こんな:形(なり)のせいか、稼ぎが悪いんだ」
「そっそんなに美しいのにか?」

 はっ と短く吐き出されるような笑いが背中に投げつけられ、それが嘲笑かどうなのかわからずに眉根を寄せる。

「お前ならそう言うと思った」

 粘つく水音と板の軋む音、それからあの白い肌がぶつかって立てているぱんぱんという音が次第に激しくなって行くのを聞きながら、気まずい思いに返事ができない。

「そ  っそこっだめぇっ‼ あぁっ、あっあ、ああっ……ぁんっ   ────っ」

 甲高い悲鳴のような喘ぎが一際高く上がり、それとは対照的な玄上の零す小さな呻き声が聞こえる。

「……っ、だから、俺がこうやって時々買うんだ。るり、次はあいつを頼む」
「ぁ、……ん、わかった」

 そのやりとりに「は?」と返す前に、白く細長い手がするりと首に絡んだ。

「や  っお、俺はいい! やらない!」

 避ける俺にるりは硝子の瞳を向けて不思議そうに首を傾げる。

「俺っ……俺はっ‼ か、金は払うからっ!」

 まるでおぼこい生娘のよう声を上げて逃げると、一瞬はっとした表情を見せたるりの顔がくしゃりと歪んだ。
 次の瞬間、咄嗟に止めようとした玄上よりも早く、るりの手が湯飲みに伸びて飲み残された水を俺に向けてぶちまけていた。

 突然に顔を打った水飛沫の冷たさに、冷たい硝子の目に見下ろされていることに気づく。

 冷ややかな、夏でも温まない神秘を湛えた泉の色だ……と、雫を払うのも忘れて見入る。

「おれはっ何もしてないのに金もらうほど落ちぶれてないっ!」

 ごとん と音がして足元に湯飲みが転がり、名残のように水滴が零れ落ちた。

「あんた、やっぱり嫌なやつ」

 充血して赤い唇を噛み締めたるりに目の前で仁王立ちに立たれ、「あ」だとか「う」だとか呻き声しか出ない。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...