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しおりを挟む「お袋 の?………っ」
頭からそれを剥ぎ取り、畳に叩きつける。
しゃくりが治まらずに震えたままの唇で要らないと呟く。
「……大事にしてよ?大切な形見なんだから」
汰紀はそう言うと無情に投げ出された振り袖を拾い、埃を払う振りをした。
「形見…」
「あれ?言ってなかったっけ?」
再び侑紀の体に振り袖をかけながら、母親に良く似た顔で微笑まれて後ずさるが、汰紀の腕が侑紀を捕まえる。
「母さんも亡くなったよ」
耳元で囁かれた言葉に、しかし侑紀はなんの反応もせず、逆に体の震えを抑え込むように汰紀を睨み付けた。
「…子供を置いて出ていくような女、どうなろうと知ったこっちゃないっ」
「うん…あの時は大変だったよね」
汰紀の遠くを見やる目は、母親が突然いなくなった為に起こった騒動を思い出しているようだった。
「でも──────」
侑紀は、汰紀の微笑み中にある、黒く澱んだ物に気付いて顔をしかめた。
「母さんが亡くなったのがここだって言ったら?」
つぃ…と指先が、格子内の一角を指す。
「同じ事が言える?」
「は…何言ってんだ……あいつは男と……………」
変わらない笑みに、言葉が途切れた。
「死因はね、多分餓死だと思う」
「が…?」
「見付けたのが、父さんの四十九日の少し前だから。一ヶ月以上、食事もせずにいたんだから当然だろうけど…狂死かも知れないね?」
「 こ、 こで?」
掠れた声が確認する。
「うん」
あっさりと返して、侑紀の足を掴み上げる。
歩かないせいか柔らかな足裏に口づけた。そのまま舌を這わし、擽るように足裏を舐めて行く。
「…死んだ?」
「うん。両足首がなかったよ。理由は推して知るべしだ」
「あ…し……」
舐められている足から駆け上がる悪寒に、侑紀は逃げようとするが許されず、縫い付けられるように畳へと倒された。
龍を背にした汰紀の目の中に欲情を見付けると、自然と受け入れるように足を倒す。
「ふふ 分かってるね」
満足そうに微笑む汰紀から逃げるように顔を背ける。
「今はそれでいいよ」
ポツリと呟かれた言葉と、柔らかに頬に添えられる手。
切なさの中に愛しさを混ぜて侑紀を見詰めた。
「焦らない。兄貴の世界が俺だけになるまで…ずっと待つよ」
指の甲が瞼を撫で、鼻筋を通り、唇の上で止まる。
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