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しおりを挟む乱暴に引き摺り下ろされ、体のあちこちからゴツンゴツンと打ち付ける音が響く。
「ぃ…────っ、ぅ…」
最後にバタンと床板の上に倒れ伏した瞬間、チカリと灯りが瞬いた。
「…………点いた、ね」
部屋を見渡しながら、こちらを見向きもせずに言う汰紀から逃れようと尻餅をつきながら後ずさった。
感情の消えた目が、ひやりとそんな侑紀を追い掛ける。
「どこに、行こうとしてたの?」
「…っ」
伸ばされた手が侑紀の髪を鷲掴み、ずるずると格子内へ引き摺って行く。
ぶちぶちと切れて鳴る髪の音と痛みに喚くが、汰紀の表情は変わらない。
どん…と突き飛ばされたのは慣れ親しんだ格子内で…
「ぁ……あ、ぁ…っ」
「逃げようと、した?」
傍らに座り、ひきつる兄の顔を覗いた。
「どうして?今は…嫌いじゃなくなったって、言ってたのに」
激情の欠片すら映さない平淡な目が射すくめる。
「…ぁ…あぁ、嫌いだったよ。今は…─────大っ嫌いだっ!!」
そう怒鳴り付けて間近にあった汰紀の横っ面に唾を吐き掛けた。
「………」
袖の裾でそれを拭い、汰紀は視線を下ろして拳を作る。
「…騙してた?」
「 はぁ?てめぇで勝手に勘違いしたんだろうが!!頭ん中めでてぇな!」
「そう…」
緩く呟かれた言葉。
侑紀は微かに揺れた汰紀の肩にすらびくりと震えていたが、それでも毅然と顔を上げて目に力を込めた。
「やっぱり、壊してしまわないと…ダメ?」
一種艶然とした笑みを見せて汰紀は立ち上がった。
猿轡に含み切れなかった唾液が頬を伝い始める。
胸の前できつく縛られた腕は、血が流れにくいのか紫色に変色し、人体にあるまじき冷たさになりかけていた。
「ん…ぐ……」
コンクリートブロックが投げ出された足の間に鎮座する。
膝下辺りに置かれたそれが何に使われるのか分からず、侑紀の震えは次第に増して行く。
「痛み止…打って上げたいけど、痛くないと反省しないでしょ?」
「ぅ…」
痛み止を使うと言う事は、それ相応の痛みを伴うナニかをされると言う事で…
今まで汰紀が行った、精神を追い詰めるような所業を思い出して侑紀は震え続けた。
「なんて映画だったっけ?兄貴は覚えてる?」
そう言いながら足の間のコンクリートブロックの位置を調節する。
「あの映画のオバサン、怖かったよね?」
猿轡のせいで言葉を返せずにいる侑紀に、にっこりと微笑む。
「一回で終わるように頑張るから」
そう言ってしゃがんで何かを持ち上げる気配がした。
仰向けに転がされたまま、侑紀は視線を汰紀の方へと向ける。
「っ!!」
鈍い色のそれは、光を反射してギラリと光る事は無かったが、逆にそれが存在感を際立たせ、侑紀は昔見た映画を思い出した。
監禁された小説家。
逃げようとした彼は足を…
「じゃあ、折るからね」
ハンマーで叩き折られた。
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