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しおりを挟む自分の下にある腕からそっと頭をずらす。
「………」
その顔を覗き込み、深く寝入っているのを確認してから体を起こした。
絡まるように伸ばされていた手足をそっと避けて這い出る。
どぉ…ん…
微かだが雷鳴が鳴り響く音がまだ聞こえていた。
耳を済ませてそれを確認した後、ぎゅっと唇を噛み締め、開いたままの内側の扉とその向こうにある閉ざされた扉に目をやった。
そして、ひっそりとその口許を綻ばせる。
「後はただ…運を天に任せるのみだ」
そう呟き、扉の傍に座った。
きつく指を組み、何ともしれない物に祈りを捧げる。
消えろ…
消えろ…
そう声を漏らさないままに唇が形を取った。
どぉ…ん
ごろ…
巨人の腹の音に聞こえる雷の音が一際大きく聞こえた瞬間、
「っ!!」
世界が暗転した……
ぶるりと駆け上がる悪寒に震える侑紀の耳に、カチン…と小さな機械音が届く。
「…や……た…」
足が震えて立ち上がる事は叶わないが、這うようにして扉にたどり着く。
こちらの扉は、汰紀が格子内にいる間は鍵が掛けられる事はなかった。
そこを潜り、静脈の認証によって開く扉を押す。
一か八か。
家庭用に於いて、停電時に開錠される事があると朧気に聞いた記憶があった侑紀は、それをどこで聞いたか思い出そうとしながら手に力を込めた。
ここに使われている物がそうだとは限らない。
けれど…
キィ…
扉はあっさりと侑紀の力に負けて開いた。
微かな音にびくつき、暗くて見えないが、汰紀の寝ている辺りを振り返る。
「………」
音は、しない…
ひたりと、畳以外の部分に掌が触れた時、侑紀はぶるりと震えて身を縮めた。
汰紀を出し抜いたと言う思いと、外に出られる喜び、そしてここから出ると言う行為にのし掛かる罪悪感がない交ぜになる。
けれど…
這いずるように脱け出し、今まで見ることしか出来なかった階段を手探りで探す。
キシリ…
体重を預けると鳴る階段に顔をしかめながら腕を伸ばした。
見上げた先にある闇の先に、外に出る扉があるのだと侑紀は薄く笑った。
格子を振り返り、小さく吐き捨てる。
「オレが逃げるまで、寝こけてろ」
「ふぅん」
間近で返された言葉に、侑紀の全身の毛が総毛立つ。
反射のように体がすくみ、右足が板から滑り落ちる。
「ぁっ……っ」
「何してるの?」
直ぐ傍にいる気配に体が震え始めた。
「見えないでしょ?暗くなる前には、目を閉じて慣らしておかないとダメだよ?」
「おまっ…じゃ、寝てたんじゃなくて……ぅっ!!」
右足首が掴まれ、ゆっくりと力が籠る。
じわじわと締め付けられて行く足首を振り払おうとするも、監禁生活ですっかり衰えた筋力ではそれも叶わず、抗う事も出来ないままに階下へと引きずり下ろされてしまう。
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よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
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リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
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