極彩牢獄 ーThe prison of a kaleidoscopeー

Kokonuca.

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「…昔の腹いせにしたって……コレは質が悪すぎやしないか?」

 そう言うと、汰紀の細い眉が上がった。

「そう言うって事は、悪気はあったんだ?」
「っ………」

 聞き返されて言葉に詰まり、バツが悪くなって下を向く。

「あ、謝れば…いいのか?」
「素直だね?」
「こんなへんちくりんな所からさっさと出たいんでな………って、お前!レナはどうしたっ!?」

 もつれる足で格子に駆け寄ると、汰紀は手の届かない位置まで身を引いた。

「レナ?」
「オレの連れだ!!一緒にいただろ!?」
「…あぁ、知りたい?」

 何を考えているのか分からない表情で問い掛けられ、侑紀は苛ついて縛られた手で格子を叩く。

「お前!レナになんかしたら承知しないからなっ!!」

 侑紀がそう言うと、汰紀はやっと人間らしく顔をしかめて見せた。

「承知しないって…どうするの?」
「ど、どうするって……そりゃ…」

 殴るとか…ともごもごと言うが、格子の隔たりがある以上それは不可能だ。

「殴る?殴ってもいいけど…彼女どうなってもいいの?」
「は?っちょ…お前分かってるのか!?言ってる事、犯罪紛いだぞっ!」
「うん?そう?」

 薄い唇に笑みを乗せて笑う弟に寒気を感じて、よろりと後ずさる。

「とにかく出せよ!話はそれからだ!」
「話?話なんか無いよ?」
「は?」
「立場分かってる?あの女を守りたいなら、言う事聞くしか無いんだって」

 そう汰紀は深く微笑んだ。



 投げて寄越された小さな瓶の中からとろりとした液体を掌に出す。

 それを両手に伸ばしながら、ちらりと格子の向こうの弟を見る。

「…こんなの見て、何が楽しいんだ?」
「それは兄貴の基準だろ?」

 また尋ね返されて、苛々が募って行く。
 けれど侑紀は縛られたままの手を動かし続けた。




『オナって見せて』




 それはまるで質の悪いイジメのような要求。
 は?と聞き返す侑紀に、汰紀は瓶を投げて寄越した。

「………」

 ローションをまぶした手を、縮こまって股間にぶら下がるモノに添える。

「………」

 無言で、手を動かす。

「声、出さないの?」
「っ!!男が出すかよ!?」
「ふぅん」

 さして気にしないのか、汰紀はそう返しただけだった。

 グチュ

 ローションの滑りを借りた動きに、こんな状況でも股間のモノは反応を示す。

「は…」

 グチュ…グチュ…

 規則正しい濡れた音。

 一度立ち上がりかけてしまえば、そこはあっと言う間に力をたぎらせ、堅く上を向いた。

「黒いね、遊んでるの?」
「…ぅ…っせぇ」

 ふ、ふ、と短く息が漏れる。
 こんな醜態を晒す真似をさっさと終わらせたくて、侑紀は一心不乱に手を動かした。

「彼女とは?週何回ヤるの?」
「おま…え、にっ関係ねぇっ」

 タラリと垂れ始めた先走りに、先端に触れる。
 腰に集まった血から、ざわざわとした物が駆け上がって背筋をしならせる。

「一回って事は無いんでしょ?」
「うるっせぇ!逢えばヤるよ!っ…」
「へぇ、じゃあほとんど毎日?彼女タフだね」

 ふふ…と笑われ、その事に気を取られると高まりつつあった熱が僅かに逃げる。

「は?」
「じゃあ昨日もヤってたんだ?」
「ちょ、待て、なんで…」

 手は止まり、呆気に取られて汰紀を見る。

「高木レナ、だっけ?」
「なんで知ってんだ!?」
「え?調べたから」

 しれっと言い、汰紀は二重の扉の内、最初の格子の扉に手を翳した。

 ぴっ

 小さな電子音と共に鍵の外れる音がし、ゆっくりとした動作で侑紀の居る座敷牢へと続く扉を、今度は鍵を使って開ける。

「なかなかハイテクだろ?」

 からかう声を聞かないまま侑紀は一気に駆け寄り、弟の襟首を掴み上げる。

「っ…」
「調べたって…な、なんだ!?」
「何でも屋って言うの?凄いよね、誘拐までしてくれるんだから」

 締め上げられ、苦しい息の下から可笑しそうな声がする。

「誘拐より、強姦とかの方が喜んでやってくれそうだよね?」
「何考えてんだっ!!」

 更に襟を掴んだ手に力を込める。
 汰紀は苦しそうに喘いだが、振り払おうとはしなかった。

「あれ?兄貴より俺の方が身長高いんだ?」

 飄々と、まったく関係の無いことを言う汰紀を突き飛ばす。

「茶番は終いだ!!帰るっ」

 座敷に転がる弟に一瞥をくれて扉を潜るも、外側の扉は押しても開かない。

「っ!?くそっ」



「…俺の静脈じゃないと開かないよ」

 その言葉に、悠然と座り込む汰紀を振り返った。

「じゃあ開けろ!」
「やだね」
「汰紀っ!!」

 怒鳴り付けるが、汰紀の涼しげな表情は変わらない。

「兄貴は俺の言う事を聞くしかないんだって」
「嫌だって言ったら?」
「あの女が肉便器になるだけだよ」

 さらりと返され、言葉もなく立ち尽くす。

「さ、続けてよ」

 そう汰紀は促した。


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