母が異世界転生してケモ耳ハーレムを作ったらしい⁉︎

人生は振り回されてなんぼ

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　固い床の上でうつらうつらとするなんて、子供の頃に遊び疲れて眠ってしまった時以来かもしれない。
　ごろんと仰向けになって寝直して、ふうと息を吐いたオレの上にふさりとしたしっぽが覆いかぶさってくる。

　カティノの自慢らしいその尾っぽを掴んでやると、ばしんと音がしそうなほどの勢いで振り払われてしまった。

　長毛の猫の尾を大きくしたようなそれは、オレの世界では存在しないものだ。
　どこかに仕掛けでもあるんじゃないかと思わせる大きな三角の耳は自然に動いているし、長い尾の動きはよどみはないし、それがどこから生えているかもわかっている。
　わかってはいても、それのない世界で生まれたオレにとってそれは興味の対象で……

　ラノベで読んで、アニメで見て憧れた生き物がそこにいると言うのは、ここが現実なんだと受け入れた今も不思議だった。

「こんな世界に生まれ変わって、母さんはとまどったんだろうか？」

　少なくとも、前世で異世界転生する！　と意気込んでいたんだから、パニックになって泣き叫ぶことはなかっただろうし、無双することもなかっただろう。
　別に前世が辛酸を舐めるような　って生活じゃなかったけれど、なんとなく母の性格を考えるとこちらの世界の方が水が合うんじゃないかって思う。

　大きな口を開けて笑う母には、向こうの世界は狭すぎると言う感覚があったからだ。

　多少のびのびしすぎて兄に目をつけられてしまったのはいただけないが、母らしさを見た気がして気分は悪くない。

「とは言え……」

　皇帝に邪険にされたからって黙っている人じゃないと思うし、性格的に……マリーン殿下の性格が母のままだとして性格的に何かされて四年も大人しくしているとは思えなかった。
　ましてや、これだけ自分を慕っている人達がいるんだから、それを無視しているとも考えにくい。

「一体、どこにい　　うぷっ！」

　ぱしん　と顔をはたかれて思考が途切れた。

　手足同様にカティノのしっぽは好き勝手に動いてくれて、オレに考えごとすらさせてはくれないらしい。
　横になるのを諦めて体を起こすと、掛け布団を抱き込んで気持ちよさそうに寝ている姿が目に入った。

　長いしっぽだけが、まるで起きてるんじゃないかってくらい自由にぱたんぱたんと動いている。

「っとに、一人呑気だな！」

　ここに足止めを食らっているのも、カティノの先を考えない行動のせいだというのに、その本人が一番呑気に寝ているのだから腹の一つも立ってくると言うものだ。

　つい、いたずら心を起こして手を伸ばした。