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人生の先は谷底

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 『奴隷村』を出て近くの比較的大きな街であるマーキスに寄って、そこで情報を集めてから北へ行く準備を整えて出発する……予定だったのになぁ。
 なぜかオレは、体が硬いって言うのにせっまい丸い鳥かごみたいなちっさい金属の籠にぎちぎちに詰め込まれて、ごろんと転がすように投げ出されている。

 素っ裸で!

「なんっなんで⁉︎ なんでぇ⁉︎」

 お化けに会った女子並みに尋ねてみるけど周りの屈強そうな方々が応えてくれるはずもなく……籠についた鎖でオレをごろごろと引きずって行くだけだ。

 なんでいきなりこんなことになったのか訳が分からなくて、暴れて無駄な体力を使うよりはと思い出せることを思い出そうと唸り声を出す。
 かろうじて覚えているのは雨が降ってきたことと、商人にさんざん殴られたせいで熱を出したことと……

「なんか飲まされたな」

 はっとしてみても後の祭り。
 雨が降って吹き込んでくるから寒いし、怪我のせいで熱が出てガタガタ震えてたところに熱さましだと言われて口に突っ込まれたナニか。

 どろーっとしてにがーい味のアレが薬だったとは思いたいが、その時から今まですっぱりと記憶が飛んでいることを思うと素直に薬だったと思うわけにはいかないんだろう。
 あんにゃろ と悪態を吐くも、あの商人に仕返しの一つもできないんだろうなってことは、身動き取れないこの状況からはっきりとしている。
 
 っと言うかこの後オレの命があるのかどうなのかっ!

 ごりごりと石造りの廊下を引きずられて行きながら、泣き出したい気分で籠に掴みかかる。
 もちろんそんなことではこの頑丈そうな籠はどうにもならなくて、ただごろごろと左右に振れただけだった。

 その度に視界がぐらぐらして……

「……気持ちわるぅ……」

 うへぇとなって動きを止めて、そろりと辺りを見回す。
 薄暗くて、天井は高いが埃っぽくてどこかひんやりとしている。

 この雰囲気に近いものをオレは知っていて、それは体育館のステージ脇だ。

 向こうからライトの明かりは入ってくるのにこっちは光が抑えられているせいか余計に暗くて、外の華やかさに比べて雑多でごちゃついていて、そしてがらんとした雰囲気。
 一体何事かと辺りを見回すも、オレと同じように窮屈な感じに丸い籠に入れられた人達が何人かと、それからそれらから繋がる鎖を持っているむくつけき筋肉共。

 籠の中の人達は一様に沈痛な表情で、この終わりのような表情をしている……から、たぶんここはヤヴァイとこだ。

 カンカンと甲高い鐘の音が聞こえたと思うと、明るい方からわっとした熱気が上がるのが分かった。
 そうすると先にいた男の籠が引きずられて行って……



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