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人生は山と谷ばっかり

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 出発前から自分の思考に負けた気がしてルーに「まずそこに行けばいいかな?」とそろりと尋ねてみる。
 自分よりも小さな女の子に伺いを立てる情けなさを感じたが、ここではオレは3歳の子供よりも頼りない。

 ここを出てどうするか、いくら考えてもベストだって思える案は出てこなかった。
 
 マリーン殿下は北に行ったらしいから、それなら単純に北を目指したい気もするが……
 
「……はぁー……行ってみるしかないか。職安……じゃなかった、ギルドって言うか……あ! 組合! 組合とかあるのかな?」
「魔法ギルドとか傭兵ギルドのこと? 全部は知らないけど幾つかはあるのは知ってる」
「あ、よかった、あるんだ」
 
 とは言え魔法も腕っぷしもからっきしなオレが魔法ギルドや傭兵ギルドに行ってもなぁ、やっぱりちょっと敷居が高い。
 他にも幾つかあると言っていたからそちらを探してみるか、だ。

 不安は拭えないけど、そんなことを言っていたらいつまで経っても出発できないのはわかっている。
 
「…………本当に行くの?」

 くいっと裾を引かれながら上目遣いに尋ねられると、お兄ちゃん弱いんだよー……

 オレが傍にいるからってだけじゃなく、この『奴隷村』にルーと親しくする人がいないのはなんとなく感じていた。
 どこかよそよそしくも感じる気配を見せながら一定距離を取ろうとしているかのようで……

 オレがいなくなるとルーは独りになってしまうのかもしれない。

「…………」
「ごめん」
「うぅん……」

 首を振るけれどルーの指は裾を掴んだままだった。





 商人が幌付きの馬車を止めてせわしなく荷物を下ろしているのが見える。
 オレはその馬車の近くの茂みでルーが商人の気を引くのをただただ待っていると言うわけだ。

 この服にしても馬車に乗る段取りにしても、一から十までルーに頼り切っていると言うのは情けないとしか言いようがないが、マリーン殿下を連れて帰ってくれば何かしら返せる恩もあるだろう。

 背丈の低い木から頭を出さないように、ぎゅっと身を縮めて膝を抱える。


「  ────」
「  ────」


 聞き耳を立ててはいるが、ルーの声は聞こえない。
 できるだけ邪魔が入らないようにってことで、最後に話しかけると言ってはいたが……

 
「あの、これを   」


 ぴく と耳が動く。
 今にもひっくり返ってしまいそうなルーの声は、聞いているこちらが緊張してくるような不安感がある。

 物々交換のために声をかけることはあっても、人を忍び込ませるために声をかけるなんてしたことなんだろうから、その緊張はよくわかった。


 
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