母が異世界転生してケモ耳ハーレムを作ったらしい⁉︎

人生は山と谷ばっかり

1

　貫頭衣以外の服を身に着けて……その窮屈さに思わず体をゆする。
　解放感満載だった服に比べて重いと思うシャツとズボンと、靴と言うか紐のついたサンダル。

「ルー？　これは？」

　そう言ってシャツの裾を摘まみながら自分を見下ろす。
　現代日本で売られているような着心地のいいものではなかったが、それでもきちんとした服だった。
　
「ふふ」

　ルーは答えないままにオレが脱いだ貫頭衣を破って袋のようなものを作って手渡してくれる。

「なんで普通の服が？」
「うん、外……いつか出れるかなぁって用意してあったんだけど」
「えっでもこれは……」

　ぽんぽんと胸を叩かれて言葉が途切れてしまう。

　そのまま二人でぽつんと立って……

　正直、ここの外に出ることに不安がないわけじゃない。
　むしろ不安だらけで、柔軟な思考もそろそろ固くなり始めた年で飛び込むには経験したことのない世界は恐ろしかった。

　それでも、あいまいな感じに苦く笑うルーを満面の笑みにしてやりたいって思うから。

「……商人の馬車がきたら、私が注意を引くから幌の荷物に紛れ込んでね」
「わ、わかった」

　奴隷紋がある限りここから出ようなんて人間はいないから、出ていく際の積み荷のチェックもないらしい。
　荷物に紛れ込んでここを出て、タイミングを見計らって馬車から降りるようにアドバイスをもらったけれど、出てからどこへ向かえばいいのかはさっぱりだった。

　ルーは少し行ったところに街があるはずだと言ってはいたけれど、ルー自身その言葉に確証を持てないでいるようだ。

「ごめんね、たぶん……この村はこの辺りなんだろうけど」

　大雑把な地図を描いて教えてはくれたが、村がある辺りと示した部分は思いのほか大きい。
　内部からも外部からも秘匿されている場所なのだと言うことはわかったが……

「大きい街ってどこかな？」
「マーキス……かな」

　とんとんと木の枝が指す。

　川の傍にある大きな街なのだと言うそこで、まずは何がなくともそこでの情報収集が一番だろう。
　何事も、情報大事。
　
　鉄則のギルドはあるのだろうか？
　いや、ここまで整備されているのなら職業安定所とかって呼ばれてたりするんだろうか？

　え？　もしそうだったら旅の情報とか無理だよな？　安定とは遠い位置にあるもんな？

「？？？？」

　警察？　警察はあるのか？
　あ、でもオレ明らかな不審者だ。

　身分証明をできない段階で詰んだと思うのは日本人だからだろうか？　でも何かを尋ねに来たいい年して常識も何もわからない不審者が身分証明もできないってなったら……無理だろ。