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第二章 人生やっぱり甘くない
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しおりを挟む「どうなんでしょう……わかんないです。記憶があいまいで……」
都合の悪い時の記憶喪失だ!と、そう言って頬をかいてみせるとルーは小さく笑ってくれる。
「そうなんですね」
現代日本で擦れ切ったオレから言わせてもらえれば、こんな嘘を信じてしまえるルーの純粋さがちょっと心配だったりもしてしまう。
会話が途切れたのを幸いに、オレはそろりとルーを盗み見た。
年はオレよりも幼く見えるけど、こちらの世界の人間がどんな年の取り方をするかわからないから何歳と決めつけるのはよくないだろう。
髪はショートボブくらい。おいしそうと思ってしまうくらい鮮やかなオレンジ色で、みずみずしいそれは見るものを元気づけるかのようだ。
瞳は日本人にはおなじみの黒色で、この世界でも黒い瞳の人間は普通にいるんだってわかって安心した。
これで、黒い色を持つ人間は悪魔の手先だから……とかって追い立てられないで済みそうだ。
顔立ちはこじんまりとしていて、日本人とは言えないけれど親しみやすい感じがするから、オレが溶け込むのに問題はないのかもしれない。
ちょっと気にかかった服だけれど……横乳が見えそうで見え……じゃなくて、粗い生地で作られた長い布の真ん中に穴を開けてかぶっただけのようだ。おまけのように胸のすぐ下と腹の辺りを藁紐でくくってあるのが唯一の救いだ。
それがないと今頃、ルーの横乳はもっと……
「じゃあ、行くところがないんですね?」
「…………」
ここで格好よく「魔王を倒しに」とか「姫を救いに」とか言えたら格好もついたのだろうけれど、正直オレはオレ自身がどうしてここにいるのかすらわかっていない。
召喚? らしきものをされたんだって、ライトノベルの知識をフル活用すれば答えを出せたけれど、でも結局はそれも推測でしかない。
あの宙に浮いていた手は何かを探していたかのようだったが、それはオレのナニってわけじゃないだろう。
部屋にある何かを探していたか、ただたまたまあそこに異界への門? ゲート? 召喚陣? みたいなのが開いてしまったってだけなのかもしれない。
どちらにせよ、今のオレは住所不定無職の裸の男ってことだ。
しかも知識も目的も何もない。
宣言通り母さんが異世界に転生していたりしないかなぁ……なんて馬鹿っぽい期待を思い浮かべてみるも、すぐに頭の中から追い出した。
「あー……記憶がなくって」
そう言って苦笑いしながら頬をぽりぽりと掻いてみせた。
「そうですか! では……」
ルーはそう言うとオレの頭から視線を滑らせていき、股間の葉っぱは見ないことにしてつま先までを確認するかのように見つめる。
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