棘の鳥籠

Kokonuca.

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 社長と秘書の関係について聞いたことがある。ただの噂だと思っていたが、義理の息子にあたる佐伯が言うのだから事実なのだろう。
 そう言った意味で社長が秘書を連れまわしているのだとはっきりと言われ、赤い顔がますます赤らんだ。

「こい」

 グイっと腕を取られ、スツールから転げ落ちそうになってカウンターに縋りつく。
 けれどそれは助けてはくれず……

 またハシバミ色に光を見せる佐伯を恐々と見上げた。

「秘書の仕事の時間だ」

 息を飲む僕の気持ちなんかお構いなしに、引きずられていくしかなかった。





 ベッドに投げ出されて条件反射的に逃げを打ったが、足首を掴まれてどうしようもなくなってしまった。

 悪足掻きとして、小さく静止の声を出す。

「や、やめて  くだ……っ」

 布越しにその箇所を押し上げられ、上がりそうになった声を飲み込んで胸を押し返す。

「それに、  この、こう言うの は   止めたいんです!この関係を  っ」

 「終わらせたい」の言葉が、入り込んだ佐伯の指先に遮られて消える。

「お前が言っていた話したいことは、それか」

 頷いて見せるも奥まったソコを指先で叩かれ、駆けあがってくる震えに小さく歯が鳴った。

「  準備してきておいてか?」
「 これで、終わりにしてください  」
「これで か。もうしない じゃないんだな」

 言葉遊びの揚げ足取りに反論しようとしたが、歪んだような笑みがそれを押しとどめ、

「 っ  これで最後  に」

 ワイシャツが剥ぎ取られ、空気に触れた肌が粟立つ。
 強引に引きずり下ろされたスラックスが、ベッドの端から落ちるのを見ながら佐伯のネクタイに手を伸ばした。
 滑らかな感触の深い黄色のネクタイ。

 どこかのブランドの物だったはず……と、ロゴを見てぼんやり思った。

 きっとこれも、奥さんが選んだ物なんだろう。

 それから微かに香ったクチナシの臭いに、ツンと鼻が痛んで、視界がぼやける。

 幸せそうな家族像を思い出して、ぽとりと雫が落ちる。
 泣き出しても意に介さない佐伯は、きっと僕がなぜ泣いているのかも気にしないんだろう。

 薄い皮膚の辺りを撫ぜられると、骨が近いせいか落ち着かない気分になってくる。

「 ひ、ン    んっ 」

 触れられた箇所から響く疼きが体を震わせて……

「終わりにしたいと言う割には反応がいいな」
「んっ   それ、は  」

 晒すように足を抱え上げられれば、佐伯に触れられて反応したソコが目に飛び込んできた。
 確かな証拠を見せられてしまえば否定の言葉もできず、唇をぐっと噛んで顔を背ける。

「噛むな。また傷になる」
「    」

 唇に割り込ませてくる親指は骨っぽくて力強く、堪え切れずに口を開けると容赦なく咥内へと侵入してくる。
 反射的にそれに舌を這わせ、ちゅっと吸い付く。


 
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