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しおりを挟む「え 」
「下世話な話じゃなくてさ、食い物と飲み物買い込んで、映画見たり、ゲームしたりして騒いで。一人でいるより、慰めにならないか?」
背中を撫でていた手が、頭をぽんぽんと叩く。
瞬間、思い出したのは佐伯の手で……
でも、心配して言ってくれた言葉に「ならない」とは返せなかった。
思いの外片付けられている部屋が意外だった。
「小林先輩の部屋、なんて言うか……勝手に散らかっているものだとばかり思ってました」
「まじか。なんだその先入観」
けれど資料室の整頓ぶりを思い返してみれば、片付けが苦手と言う訳でもないのはわかる。
明るいフローリングの床に、無垢の木の家具が揃えて配置されている。照明も白くて丸いおしゃれなもので……
それも、小林のイメージじゃなかった。
「昔、付き合ってた人の趣味ですか?」
「はああああ!?」
久しぶりに鬼の形相で睨みつけられ、慌てて目の前で手を振った。
「全部俺の趣味!」
こつんと額を叩かれて「すみません」と謝る。
「あんまりにもイメージ違ったんで」
「失礼な奴」
頬を膨らませて怒っている小林に重ねて謝り、持ったままになっていた袋に入った酒をテーブルに並べた。
ラベルを見えるように回して「どれから飲みますか?」と勧める。
小林が片っ端から籠に入れるせいか、二人で飲むには多い数がずらりと並ぶ。
「甘いものの方が良かったんですよね」
「そうだな、でもまずは風呂入ってからな」
う と、呼吸が止まったのを気づかれた。
気まずそうに視線を逸らすと、呻き声が零れる。
「 下心は ないって」
歯ぎしりが聞こえてきそうなのは無視した。
「じゃあ どうぞ」
「や あの、飲まないのを片付けておくから、先に行ってこいよ」
ここで家主と言い合いをしても始まらないだろうと、一礼して教えてもらった風呂場へと向かった。
詮索する気はなかったのだけれど、初めての場所のせいか視線はいろいろなところに行きがちだった。
「いいとこですね」
素直な感想だった。
物件探しで良い伝手でもあったのかと、自分のアパートを思い描きながらワイシャツのボタンを外す。
洗面所も綺麗に整えられており、一人暮らしの男の家とは思えない清潔ぶりだ。
「部屋余ってるぞ、引っ越してくるか?」
「あはは 」
「意外と本気なんだけど。って、ちょっと入るぞ、タオルが必要だろ?」
ノックもせず、返事も待たずに開けられた引き戸は軽い音で。
隠す間もなく服を脱ぐ姿を晒された僕は、悲鳴を上げるのも違うだろうし、恥じらうのも違うだろうし と、無駄なことを考えてい
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