棘の鳥籠

Kokonuca.

文字の大きさ
上 下
52 / 76

51

しおりを挟む




「二枚まとめて置くとダメだな」

 次回の際はこう言ったことがないように違う場所に置くべきなんだと思いながら、佐伯がシャワーから出てこないうちにと部屋に滑り込んだ。
 目的の物は案の定、同じサイドテーブルで見つけた。

 手の中の物と入れ替えて振り返ると同時に、シャワーの止まる音がして……

 なぜか、きゅっと首を締められた感覚がして、緩いはずのシャツ襟を掴んだ。


「  何をしている」


 急いで部屋を出る前に、風呂場から出た佐伯がこちらに気づいて動きを止めた。
 先程まで体を繋げていたなんて痕跡のない姿に眩暈がしそうだった。

「すみませ   鍵を間違えて、しまって  だから……」

 両手で持ったカードキーに縋り、佐伯の向こうにあるドアへと駆け出す。

 狭いビジネスホテルの通路とも言えないそこは狭く、擦れ違おうとした僕の喉が佐伯の体の熱にひくりと引き攣る。
 先程までの興奮はまだ完全には冷めておらず、佐伯の体の熱に引きずられそうになって首を振った。

「失礼し ま    ────っ」

 壁に胸をしたたかに打ち付けた。
 吸い込む息が邪魔をされ、吸いきれなかった空気を求めて唇が小さく動く。

「 ぶ、ちょ   あの、申し訳ござ  っ」

 鷲掴まれた髪や、壁に勢いよくぶつけた部分が痛みを訴える。

「戻っていろと言った」
「で、 です から   戻るために、カードを……っ」

 体を押さえていた手がスウェットを乱暴に引きずり下ろし、柔らかさのない臀部を引っ張った。
 先程まで佐伯のモノで苛まれていたソコは、充血しているのか攣れるような感覚を伝えてくる。

 指が、とん とん と引くつくその場所をノックした。

「 あ、の」
「まだ十分濡れているな」

 二本の指で広げるようにされると、行為の前に使ったローションの残滓が伝う感触がした。
 ソレを絡めながら、気まぐれな動きで指先が入り口を行き来する。

「   な にを 」

 埋火としてくすぶっていた感覚が、ざわざわとそこから這い上がってくる気がした。

「や  あの  」

 あの  に続く言葉が、擦りつけられる熱に遮られて消えた。
 強引に押し入ってくるソレは、僕の抵抗なんて無視して……

 ぬめりの足りないソコは無茶なことをされているはずなのに従順過ぎる素直さで、灼けるような杭を飲み込んでいく。
 主張する熱さがゆっくりと、しかし強引に支配しようと突き上げてくる。

「  ぃっ!! 部長っ  ゴムを、ぁの、せめて  つけ     っ」

 ぐじゅりと粘液の擦れる音とと、肌と肌がぶつかってぱしんと小さくなる音が耳に響いてくる。

「あ   ぁ、そんなっ 」

 隔てるもののない初めての感触に、全身にやけどをした時のような鳥肌が立つ。
 熱くてたまらないのに冷えて体中が粟立った。

 温かさの感じ方が違う、
 ぬめり方が違う、


 体温が、近い。


 尻の肉を左右に広げられて押し進められれば、佐伯より小さな僕の体はつま先立ちになってしまい、最奥までの侵入をあっさりと許してしまった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

Candle

音和うみ
BL
虐待を受け人に頼って来れなかった子と、それに寄り添おうとする子のお話

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

彼者誰時に溺れる

あこ
BL
外れない指輪。消えない所有印。買われた一生。 けれどもそのかわり、彼は男の唯一無二の愛を手に入れた。 ✔︎ 四十路手前×ちょっと我儘未成年愛人 ✔︎ 振り回され気味攻と実は健気な受 ✔︎ 職業反社会的な攻めですが、BL作品で見かける?ようなヤクザです。(私はそう思って書いています) ✔︎ 攻めは個人サイトの読者様に『ツンギレ』と言われました。 ✔︎ タグの『溺愛』や『甘々』はこの攻めを思えば『受けをとっても溺愛して甘々』という意味で、人によっては「え?溺愛?これ甘々?」かもしれません。 🔺ATTENTION🔺 攻めは女性に対する扱いが酷いキャラクターです。そうしたキャラクターに対して、不快になる可能性がある場合はご遠慮ください。 暴力的表現(いじめ描写も)が作中に登場しますが、それを推奨しているわけでは決してありません。しかし設定上所々にそうした描写がありますので、苦手な方はご留意ください。 性描写は匂わせる程度や触れ合っている程度です。いたしちゃったシーン(苦笑)はありません。 タイトル前に『!』がある場合、アルファポリスさんの『投稿ガイドライン』に当てはまるR指定(暴力/性表現)描写や、程度に関わらずイジメ描写が入ります。ご注意ください。 ➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。 ➡︎ 作品は『時系列順』ではなく『更新した順番』で並んでいます。

処理中です...