46 / 76
45
しおりを挟む「邪魔を したんですね、申し訳ありません 」
「 世話係のことでも考えていたのか?」
半分だけだけれど、言い当てられて頬に赤みが差すのがわかる。
咄嗟に頬を隠そうと手を上げたが、それは掴まれて叶わなかった。
力で勝てるとは思わなかったが、それでも手を振り払おうと力を込める。
「 っ!先輩は関係ないです!」
「こちらを向いて言え」
強い指先に顎を捕られると、皮膚が薄いせいか骨に響くような痛みがする。
「 かん け、ないです」
ぎゅうっと力を籠められると、このまま顎が割れてしまうんじゃないかと震えてしまって……
突き放すようにベッドに押し倒されて仰向けに転がると、冷たい目がこちらを見下ろしてくる。
光の反射の具合でハシバミ色に見える瞳をぼんやりと眺めていると、男らしい手がこめかみを撫でた。
「いつも泣くんだな」
涙を拭われたのだと気づいた。
親指を濡らすそれに舌を這わせる姿に、自然と顔が歪む。
「 部長」
呼んではみたが、返事はない。
代わりに濡れた指が僕の胸の頂を掠めた。
「 っ、部長」
上がりそうになった言葉を飲み込んで、もう一度呼びかける。
「なんだ」
指先で捏ねられて赤い粒が固くなる。直結しているかのように下腹部の熱に、息が跳ねた。
目を遣らなくても、体が感じ始めたのが分かった。
「 僕達の関係って 何なんでしょうか ?」
この状況で、酷く滑稽な質問だった。
あられもない恰好で男の愛撫を受けている人間が、ずいぶんと間の抜けた聞き方だ。
ざらりとした掌に、胸から脇にかけて撫でられてぞわぞわと鳥肌が立つ。
手が脇から尻へ、腿を伝って滑り降りる。
その感触に震えて、立ち上がった先端から透明な雫が滴る。
自分では何の反応もなかったソコの淫らな猛りに、顔が赤く染まるのが分かった。
「こんなにされておいて、今更聞くのか」
歪む唇からはそれ以上の言葉は出ない。
もう少し、明確な言葉が欲しくて開こうとした口は、起立してしまった芯を握られて閉じる他なかった。
この関係が妻子ある佐伯との不倫だと言うことも、
世間で言うところの愛人だのだと言うことも分かる。
それ以外の何かが、あればと……思ったのだけれど……
会社の資料室が清潔に、かつ見やすくなったと噂に聞いた。
「ちょっと休憩してきます」
以前に奮闘していた小林の姿を思い出し、休憩時間にコーヒーを買って資料室に向かってみた。
スチール棚と冊子の並ぶそこはやっぱり電気が灯っていても薄暗い感が拭えない。
奥までは棚がいっぱいで見渡せないので、入り口の辺りから声をかけた。
「お疲れ様です! 先輩? まだいたりします?」
「 おー、いるぞ」
総務の方に先に顔を出すか、こちらを覗くか迷ったけれど、人気のないこちらを選んで正解だったようだ。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
指導係は捕食者でした
でみず
BL
新入社員の氷鷹(ひだか)は、強面で寡黙な先輩・獅堂(しどう)のもとで研修を受けることになり、毎日緊張しながら業務をこなしていた。厳しい指導に怯えながらも、彼の的確なアドバイスに助けられ、少しずつ成長を実感していく。しかしある日、退社後に突然食事に誘われ、予想もしなかった告白を受ける。動揺しながらも彼との時間を重ねるうちに、氷鷹は獅堂の不器用な優しさに触れ、次第に恐怖とは異なる感情を抱くようになる。やがて二人の関係は、秘密のキスと触れ合いを交わすものへと変化していく。冷徹な猛獣のような男に捕らえられ、臆病な草食動物のように縮こまっていた氷鷹は、やがてその腕の中で溶かされるのだった――。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
若旦那からの甘い誘惑
すいかちゃん
BL
使用人として、大きな屋敷で長年奉公してきた忠志。ある日、若旦那が1人で淫らな事をしているのを見てしまう。おまけに、その口からは自身の名が・・・。やがて、若旦那の縁談がまとまる。婚礼前夜。雨宿りをした納屋で、忠志は若旦那から1度だけでいいと甘く誘惑される。いけないとわかっていながら、忠志はその柔肌に指を・・・。
身分差で、誘い受けの話です。
第二話「雨宿りの秘密」
新婚の誠一郎は、妻に隠れて使用人の忠志と関係を続ける。
雨の夜だけの関係。だが、忠志は次第に独占欲に駆られ・・・。
冒頭は、誠一郎の妻の視点から始まります。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる