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しおりを挟むなんでここにいるんだろう?
スウェットの下は何も身に着けてなくて、頼りなさで心細くて焦れる気分なのに後回しにされている。
「 ────じゃあ、いい子にな」
この人はこの会話の後に僕を抱くんだろうか?
よき父として会話した後に?
よき夫としての会話もあったはずなのに、しれっと何事もないように喋り、そしておくびにも出さない。
そう言うことができてしまう人なんだ。
通話を終了させてこちらを振り返る目に、すでに穏やかさはなく。
獣みたいな双眸がこちらを睨んでいる。
「 資料に目を通せてない。勝手にやっていてくれ」
「か、ってに ?」
「できるだろう」
顎をしゃくって見せた佐伯は何事もないようにベッドに腰を掛け、重ねられていたファイルから紙を取り出す。
そちらに目を遣る佐伯は、僕のことなんかもう忘れてしまったんじゃないだろうかと思う横顔で、先程出された指示が嘘のようだった。
小さな体の震えが虚しさからだと気づいた時にはシャツを頭から抜くところで、スウェットのハーフパンツを脱いだ頃には、指先がうまく動かないほどの震えになっていた。
ぽつんと立ち竦むと、改めて何をしているんだろうと疑問が湧く。
横顔は硬質でこちらを見もしない。
自分で考えて動かなければと思うのに、いい加減にしてくれと言って佐伯の邪魔をすることができなかった。
疑問に思うのに、指示された言葉が動きを縛る。
ベッドに這い上がり、佐伯に背を向けてへたり込むように座り、そろりと下腹部の茂みへと指を滑らせた。
指先の感触に反応してピクリと動くがそこまでで……
両手で包み込んで上下に扱いてみても、反応らしい反応が返らない。
「 ぇ 」
感触はするし、気持ちよさもある。
けれど、
ぐぅっと拳を握り込んで奥歯を噛み締めてから片腕を背後に回す。
腰の固い骨の感触を伝いながら、双丘の間へ指先を下ろしていく。
息が詰まるような圧迫感。
準備の為に触れることはあっても、自慰の為に触れたことはなくて……
こぷりと溢れて伝い出たローションを絡めて、指を中で動かして……余りの気持ちよさのなさに、動かす手を止めて項垂れた。
二進も三進も行かずに救いを求める気分で振り返るが、微かな紙の触れ合う音がして何も動きはない。
途方に暮れて、気まずいままにベッドを降りた。
何か妙案があったと言う訳ではないけれど、佐伯の視界の端にでも入ればこちらを見てもらえるかもと淡い期待を抱いてその前に立つ。
「部長」と問いかけるのも憚られる雰囲気で……
淡い期待が無駄だったとわかり涙を堪えるためにぐっと奥歯を噛み締めるが、僕の涙腺は限界だったらしくぽとんと音を立てて足の傍の絨毯に雫が盛った。
それでも、やっぱり佐伯は書類に目を遣ったままだ。
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