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威
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しおりを挟むその冷たい声が葉人の物だと理解する為に、威は何度か頭を振った。
「…は…な?」
「威が、フェネクスの事を黙っていたのは、オレに正体がばれたくなかったから?」
その言葉が何を意味するか一瞬で悟った威は、ぷつりと糸の切れた人形の様にその場にへたり込んだ。
玄関に立ち尽くしたままの葉人の足元を見ていた視線が震え、ガタガタと体が戦慄き始める。
「…ちが……」
そうじゃない…と譫言の様に繰り返す威の傍らに、葉人がしゃがみ込み、逸らそうとした威の顔を両手で掴んで覗き込む。
「あの日、教室で、オレを襲ったのは、……威…だよね」
ぶるりと葉人の腕の中で威の体が大きく震え、深い絶望に満ちた目が瞑る事も許されないままに葉人を捉える。
「…あ、ぃつが…喋ったのか………」
すっかり血の気の引いた手が葉人の手をはがそうと伸ばされたが、顔を掴んだその手はピクリとも動かず、威は自分の指に力が籠らない程震えている事に気付いて観念したように腕を下ろした。
「違うよ」
「ちが…?」
青ざめた唇に、冷たい指先が触れる。
「オレ…知ってたんだ……威だって。分かってたんだ…」
例え目を塞がれても、ありえない状況に追い込まれていたとしても…
幼い頃から慣れ親しんだ、威の存在そのものを…
「気付いてたんだ…」
ぽつ…と雫が頬の上に落ち、威の項垂れに沿うように下へと落ちる。
「でも…あんな事を威がするなんて信じたくなかったから…」
オレは目を閉じた…
そう囁きながら崩れ落ちた葉人から、小さなすすり泣きが始まる。
手を伸ばす事も、声を掛ける事も躊躇われて…
威は青ざめたままに、贖罪でもするかのようにその啜り泣きを聞き続ける。
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