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第七話「後始末」
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「お、おいおい、元上級冒険者の二人が新人の冒険者を個室でいじめるなんてマネはしないでくれよ」
「中身はビオリス・シュヴァルツだろ。ゴーレム討伐隊の一人で、人間として唯一の大編成に組み込まれた男」
「い、いや……、俺はシュヴァルツ・ビオリス…………」
という言い訳が通じる相手なわけがなく……。
多分、これ以上の言い訳をすれば確実に締め上げられる……。
「わ、悪かったって……、確かに忘れてた。忘れてましたよ……」
「はぁ……、そういう下手な言い訳をする所が、女性に逃げられるんだぞ」
なぜか任務の指摘から女性への指摘に切り替わっているクレスの注意。
それに対してキングはなぜか深く頷いている。
「なんか、俺の扱いってひどくないか?」
「今更だろ?」
クレスの問い返しにキングは頷くだけ。
「俺って、お前たちとパーティ組んでたよな?」
「一応な」
「まぁ、一応……?」
「なんで二人ともそんなに俺を毛嫌いしてるんだよ……キングに至ってはなぜ疑問形なんだ……」
昔はもう少し信頼関係があったような気がするんだが……。
あれか、やっぱり人間は下に見られるのか? いや、こいつらに限ってそんなことはないか。
「お前は……」
「ん?」
「お前は、ギルドからの要請は断るし、ギルドで働いてくれと言っても断るし」
「うっ……」
「上級冒険者なのにも関わらず、お主は警備隊の指導を手伝ってくれなかった。それに、息子の護衛任務を怠った。その上――――」
「す、すまん。俺が悪かった……悪かったって……」
言い訳させてくれるなら言い訳するんだが、俺がなにを言ったところで責められるだけだしな……。
今は大人しく二人に従おう……。
「よし……」
俺は話を切り替えるべく、パンッと手を鳴らした。
「それで、ジャックがどうしたんだ? あいつのパーティは低階層しか行かないし問題ないはずだろ?」
二人の顔を交互に見つめて尋ねてみる。
「先日、ジャックが連れ去られた」
「連れ…………え?」
クレスの返事に目を見開いて驚く。
ジャックが連れ去られただと……?
「二日前の夜、ジャックの居るパーティの家が襲われた。ジャックと小さい獣人の娘が攫われたらしい」
小さい獣人……あぁ、確かバレッタだっけな。
「お前がきちんと護衛していれば、こんなことにはなっていなかったんだぞ。そもそも、なぜお前はパーティから離脱したんだ」
冷静に、子どもを叱るようなクレスの言い方。
確かに、抜け出したのは俺が悪い。だが――――――
「あのなぁ……毎日毎日、あいつら喧嘩しかしないんだぞ。人間のおっさんの言葉なんて聞く耳なし。底辺パーティに潜り込んで、ジャックの護衛をしながら適当に過ごそうと思っていたのに、あれじゃゆっくりも出来やしねぇ。あのパーティは俺からすれば冒険者として失格だ。そんな奴らの元で過ごすなんて俺には耐えられん」
「お前に休養を与えたつもりはないんだが……」
クレスは腕組みをしながら呆れたように呟いた。
「そ、それはまぁそうだな……」
「お前の冒険者としてのその意思は私も気に入っているんだ。だが――――」
「だが、お主にはきちんと責任を取ってもらおうか」
キングが口角を上げてこちらを見つめていた。
「い、いや、そもそもだ。パーティを組んでて連れ去られるって、それはそれでどうなんだよ」
「警備隊長であるキングの息子、ジャックは犯罪者にとっては格好の的だ。だからジャックがBランクかAランク……つまり、中級冒険者になるまでは面倒をみてくれと頼んだはずだが?」
「っ…………」
ジロリと睨んでくるクレスの目を見ないようにしつつ、
「ごほん」
と、クレスの真似をして場を仕切り直す。
「そ、それで……ジャックはどこに居るのか分かってるのか?」
「これが家に残されていたのだ」
キングから渡されたのは一枚のメモ。
『――――警備隊長キングへ、息子は預かった。パーティに居た可愛い娘と共にな。返して欲しければ百万バルスを用意し、三日後の夜、第六階層にて取引されたし。』
人質を連れて第六階層まで行ける相手か……。ちと面倒だな……。
「ということだ。頼んだぞビオリス」
「俺の息子を頼んだぞ」
頼んだ、頼んだって言われても……。
「いやいや、お前ら」
「「?」」
俺の反応に対し、二人が頭に疑問符を浮かべて首をかしげた。
「今の俺は独りでダンジョンに入れないぞ?」
「「あ……」」
口を開けて固まる二人。
いや、まぁ、そりゃそういう反応になるわな……。
俺だってアイシャに言われた時は、一瞬だけ時間が止まってたし……。
「それにだな……クレスとキング、お前たちが行って奪い返した方が早いだろ。俺が一人で行くよりも確実に早く片付くぞ」
「中身はビオリス・シュヴァルツだろ。ゴーレム討伐隊の一人で、人間として唯一の大編成に組み込まれた男」
「い、いや……、俺はシュヴァルツ・ビオリス…………」
という言い訳が通じる相手なわけがなく……。
多分、これ以上の言い訳をすれば確実に締め上げられる……。
「わ、悪かったって……、確かに忘れてた。忘れてましたよ……」
「はぁ……、そういう下手な言い訳をする所が、女性に逃げられるんだぞ」
なぜか任務の指摘から女性への指摘に切り替わっているクレスの注意。
それに対してキングはなぜか深く頷いている。
「なんか、俺の扱いってひどくないか?」
「今更だろ?」
クレスの問い返しにキングは頷くだけ。
「俺って、お前たちとパーティ組んでたよな?」
「一応な」
「まぁ、一応……?」
「なんで二人ともそんなに俺を毛嫌いしてるんだよ……キングに至ってはなぜ疑問形なんだ……」
昔はもう少し信頼関係があったような気がするんだが……。
あれか、やっぱり人間は下に見られるのか? いや、こいつらに限ってそんなことはないか。
「お前は……」
「ん?」
「お前は、ギルドからの要請は断るし、ギルドで働いてくれと言っても断るし」
「うっ……」
「上級冒険者なのにも関わらず、お主は警備隊の指導を手伝ってくれなかった。それに、息子の護衛任務を怠った。その上――――」
「す、すまん。俺が悪かった……悪かったって……」
言い訳させてくれるなら言い訳するんだが、俺がなにを言ったところで責められるだけだしな……。
今は大人しく二人に従おう……。
「よし……」
俺は話を切り替えるべく、パンッと手を鳴らした。
「それで、ジャックがどうしたんだ? あいつのパーティは低階層しか行かないし問題ないはずだろ?」
二人の顔を交互に見つめて尋ねてみる。
「先日、ジャックが連れ去られた」
「連れ…………え?」
クレスの返事に目を見開いて驚く。
ジャックが連れ去られただと……?
「二日前の夜、ジャックの居るパーティの家が襲われた。ジャックと小さい獣人の娘が攫われたらしい」
小さい獣人……あぁ、確かバレッタだっけな。
「お前がきちんと護衛していれば、こんなことにはなっていなかったんだぞ。そもそも、なぜお前はパーティから離脱したんだ」
冷静に、子どもを叱るようなクレスの言い方。
確かに、抜け出したのは俺が悪い。だが――――――
「あのなぁ……毎日毎日、あいつら喧嘩しかしないんだぞ。人間のおっさんの言葉なんて聞く耳なし。底辺パーティに潜り込んで、ジャックの護衛をしながら適当に過ごそうと思っていたのに、あれじゃゆっくりも出来やしねぇ。あのパーティは俺からすれば冒険者として失格だ。そんな奴らの元で過ごすなんて俺には耐えられん」
「お前に休養を与えたつもりはないんだが……」
クレスは腕組みをしながら呆れたように呟いた。
「そ、それはまぁそうだな……」
「お前の冒険者としてのその意思は私も気に入っているんだ。だが――――」
「だが、お主にはきちんと責任を取ってもらおうか」
キングが口角を上げてこちらを見つめていた。
「い、いや、そもそもだ。パーティを組んでて連れ去られるって、それはそれでどうなんだよ」
「警備隊長であるキングの息子、ジャックは犯罪者にとっては格好の的だ。だからジャックがBランクかAランク……つまり、中級冒険者になるまでは面倒をみてくれと頼んだはずだが?」
「っ…………」
ジロリと睨んでくるクレスの目を見ないようにしつつ、
「ごほん」
と、クレスの真似をして場を仕切り直す。
「そ、それで……ジャックはどこに居るのか分かってるのか?」
「これが家に残されていたのだ」
キングから渡されたのは一枚のメモ。
『――――警備隊長キングへ、息子は預かった。パーティに居た可愛い娘と共にな。返して欲しければ百万バルスを用意し、三日後の夜、第六階層にて取引されたし。』
人質を連れて第六階層まで行ける相手か……。ちと面倒だな……。
「ということだ。頼んだぞビオリス」
「俺の息子を頼んだぞ」
頼んだ、頼んだって言われても……。
「いやいや、お前ら」
「「?」」
俺の反応に対し、二人が頭に疑問符を浮かべて首をかしげた。
「今の俺は独りでダンジョンに入れないぞ?」
「「あ……」」
口を開けて固まる二人。
いや、まぁ、そりゃそういう反応になるわな……。
俺だってアイシャに言われた時は、一瞬だけ時間が止まってたし……。
「それにだな……クレスとキング、お前たちが行って奪い返した方が早いだろ。俺が一人で行くよりも確実に早く片付くぞ」
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