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第二話「逆行モンスター」
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大剣が砂の上へと落ちてドサリと鈍重な音を響かせる。
「くっ……呪文を使うなんて聞いてないぞ……!」
体が熱い……縮む……骨が軋んでいく…………。
「ぐぁああああああっ……」
あぁ……せっかくここまでやってきたのに、ミスっちまったのか……。
あーあ、人にはパーティを組んで行動しろとか言ってたのに、気晴らしに動いてみたらこれだ。
判断力も決断力も、やっぱりおっさんになると鈍っちまうのかねぇ……。
「くっ……」
目を閉じていても眩しい……。体の感覚もなくなっていく……。
くそっ……こんなことになるなら酒場のマリアか美女エルフでも捕まえて楽しい一夜でも過ごしておくんだったな……。
油断して死んでいった奴を大勢見てきたはずなのに、ここに来て俺もかよ……。
『サカサマ! サカサマシター!』
何を言って――――――
「………………ん?」
瞼の裏に張り付いた光が消えていく。
「……俺は死んでいない、のか?」
ゆっくりと目を開く。
『サカマッキー!』
先程よりもモンスターとの目線が近くなっている。
「なっ、なんだこれは!」
俺の手が小さい。手のシワがない!
服がでかいし大剣がでかい!
「一体どうなってるんだ……」
『サカサマ! サッカサマー!』
先程のモンスターが言いながら永遠と殴り続けてくる。
だが、その威力は無いに等しい。
駄々をこねる子どものような威力にビオリスは呆然と立ち尽くす。
『サカ……サマ……?』
ビオリスの顔を見上げ、モンスターは首をカコンと傾けた。
「なんなんだお前は……」
『ピギャー! サカサマ、キカナイヤツ! ホナサイナラー!』
「あ、おい! 待て――――――」
………………。
モンスターはそう言い残してその場から消え去った。
言葉が話せる上に瞬間移動、光属性の種類……?
そんなモンスター聞いたことねぇぞ……。
「新種……それも正体不明のモンスターなら、ギルドに報告しておいた方がいいかもしれないな……」
落としていた大剣に手を伸ばす。
「お、重い…………」
服もサイズが大きすぎて合わねぇ……。
待てよ……。今の状況を整理しよう……。
近くなったモンスターとの視線。
服の大きさが合わない。
大剣が重い。
小さくなった手、肌から消えたシワ……。
「もしかして……もしかすると……」
あんまり使いたくはないんだが……、緊急事態だ。
「水よ、我の前に浮かび姿を映せ……アクアージ!」
かざした手から出現した水が薄く縦長に伸びていく。
等身大の姿を映し出していく。
「そんな……」
揺らめく水が静まり、そこに映っていたのは――――――
「若い時の俺……だと……?」
開いた口がふさがらない。
頬に手を当て確認すると、スベスベの若かりし頃の肌がここにある。
まだ冒険者になる前のヒョロヒョロの青年の姿……。
「こ、こっちも……まさか……!」
息子のサイズも縮んでいることを確認。
「二十歳、いや、十六かそこらの時じゃねぇか……」
呪文めいたモンスターの言葉に閃光のようなまばゆさ。
「さかまき……さかさま……?」
さかさまって逆さまのことなのか?
逆さま……体の大きさを逆さま?
それでは何かが違う。
さかまき……さかさま……。つまり逆。
年老いていくその逆……。
若返る?
つまり、その、あれだ。これは結果から見るに……。俺はあのモンスターに―――――
「時間を戻された⁉」
「くっ……呪文を使うなんて聞いてないぞ……!」
体が熱い……縮む……骨が軋んでいく…………。
「ぐぁああああああっ……」
あぁ……せっかくここまでやってきたのに、ミスっちまったのか……。
あーあ、人にはパーティを組んで行動しろとか言ってたのに、気晴らしに動いてみたらこれだ。
判断力も決断力も、やっぱりおっさんになると鈍っちまうのかねぇ……。
「くっ……」
目を閉じていても眩しい……。体の感覚もなくなっていく……。
くそっ……こんなことになるなら酒場のマリアか美女エルフでも捕まえて楽しい一夜でも過ごしておくんだったな……。
油断して死んでいった奴を大勢見てきたはずなのに、ここに来て俺もかよ……。
『サカサマ! サカサマシター!』
何を言って――――――
「………………ん?」
瞼の裏に張り付いた光が消えていく。
「……俺は死んでいない、のか?」
ゆっくりと目を開く。
『サカマッキー!』
先程よりもモンスターとの目線が近くなっている。
「なっ、なんだこれは!」
俺の手が小さい。手のシワがない!
服がでかいし大剣がでかい!
「一体どうなってるんだ……」
『サカサマ! サッカサマー!』
先程のモンスターが言いながら永遠と殴り続けてくる。
だが、その威力は無いに等しい。
駄々をこねる子どものような威力にビオリスは呆然と立ち尽くす。
『サカ……サマ……?』
ビオリスの顔を見上げ、モンスターは首をカコンと傾けた。
「なんなんだお前は……」
『ピギャー! サカサマ、キカナイヤツ! ホナサイナラー!』
「あ、おい! 待て――――――」
………………。
モンスターはそう言い残してその場から消え去った。
言葉が話せる上に瞬間移動、光属性の種類……?
そんなモンスター聞いたことねぇぞ……。
「新種……それも正体不明のモンスターなら、ギルドに報告しておいた方がいいかもしれないな……」
落としていた大剣に手を伸ばす。
「お、重い…………」
服もサイズが大きすぎて合わねぇ……。
待てよ……。今の状況を整理しよう……。
近くなったモンスターとの視線。
服の大きさが合わない。
大剣が重い。
小さくなった手、肌から消えたシワ……。
「もしかして……もしかすると……」
あんまり使いたくはないんだが……、緊急事態だ。
「水よ、我の前に浮かび姿を映せ……アクアージ!」
かざした手から出現した水が薄く縦長に伸びていく。
等身大の姿を映し出していく。
「そんな……」
揺らめく水が静まり、そこに映っていたのは――――――
「若い時の俺……だと……?」
開いた口がふさがらない。
頬に手を当て確認すると、スベスベの若かりし頃の肌がここにある。
まだ冒険者になる前のヒョロヒョロの青年の姿……。
「こ、こっちも……まさか……!」
息子のサイズも縮んでいることを確認。
「二十歳、いや、十六かそこらの時じゃねぇか……」
呪文めいたモンスターの言葉に閃光のようなまばゆさ。
「さかまき……さかさま……?」
さかさまって逆さまのことなのか?
逆さま……体の大きさを逆さま?
それでは何かが違う。
さかまき……さかさま……。つまり逆。
年老いていくその逆……。
若返る?
つまり、その、あれだ。これは結果から見るに……。俺はあのモンスターに―――――
「時間を戻された⁉」
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