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第一話「面倒なパーティ」
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「え、えっと……確か二万と六千バルスだったと思うけど……。でもなんで――――」
「分かった。お前の依頼、引き受けた」
「え、それってどういう……」
ビオリスは机の下に隠れるマリアに背を向ける。
後ろで固まっていたマリア。だが、「依頼」というビオリスの言葉に焦りを感じ何かを訴えているがビオリスは無視の姿勢を貫いた。。
――――今日の飲み食いをタダにされてしまう……。
一杯あたり千バルスはするワインを今日だけで二十杯以上……。それをタダにされてしまえば、店主にあとで何を言われるか――――
「あ、そうだ」
マリアの憂鬱な気分も知らずに、ビオリスは後ろを振り返る。
「ん? どうしたの?」
「お前、胸透けてるから気を付けた方がいいぞ」
「え? 胸透け、てって――――きゃっ……!」
ようやく自分の服がどうなっているかを理解したマリアは胸元を両手で覆い隠した。
周囲からは男たちの「あぁああ……」という悲痛な声が漏れている。
「貴様、自分だけマリアちゃんとイチャイチャしやがって! いい加減にしろ!」
「イチャイチャって、こんなおっさんを相手にしてくれる子なんて中々いないんだぞ」
「だまれ!」
ビオリスの正面から勢いよく拳が向かってくる。その腕の大きさは、足と見間違うほどに太く、立派に鍛え抜かれていた。
それがビオリスの右側の頬に触れようとするが――――――
「なっ、なにっ……!」
「静かに酒も飲めないなら帰れよ……ここは酒場だぞ……」
ビオリスの頬に当たる直前、男の拳はビオリスによって握られていた。
思い切り殴りつけるはずの拳からは完全に勢いが消えさり、殴った男も何が起きたのかが分からず……。
男は目の前で微動だにしないビオリスを、目を丸めて見つめるしかできなかった。
「な……俺は八階層に到達した冒険者だぞ……その俺の拳を素手で受け止めるなんてありえない!」
「はいはい、おめっとさん……」
ビオリスはあくびをしながら男へと返事をした。
「貴様ぁ! なめた真似をしてくれるな!」
「ん……?」
男は右拳を引いてもう一度殴りかかろうとする。だが――――
「振りかぶりすぎだ。それじゃ遅いんだよ……」
再び素手で男の拳を受け止めるビオリス。
「な、なんだと……」
「あぁ、面倒くせぇ……せっかく酔っていい気分だったのに最悪だ」
ビオリスは掴んだ男の手を開放し、服でその手を拭う。
「男の手なんざ触りたくねぇってのによ……」
たじろぐ男を無視し、ビオリスは足元で顔を赤く染めて胸を隠すマリアと目線を合わせる。
「酒場の代金、これでチャラな」
ビオリスの言葉にマリアは体をビクつかせた。
――――やはり、それが目的だったのかと。
「そ、それとこれとは話がちがうというか……私が怒られ――――」
「依頼は引き受けたぞ」
ビオリスはそう呟くと優しくマリアの頭を撫でた。
「そ、そんなぁ……」
とほほ……と、自身の給料が減らされるであろう出来事に泣き崩れるマリア。
「ほら、よしよし」
「うぅ……」
彼女は撫でられるのは嫌ではないらしく、されるがままになっている。
髪の間から覗かせる耳。その裏を触るとマリアの艶やかな声が漏れ、ビオリスがそのまま耳の先端を指先で摘まむ。
「はにゃぅ……あん……んっ……」
獣人はどうしてこうもエロい声が漏れるんだろうか。
マリアの嬌声を少しだけ堪能したあと、
「さてと……おっさんも、たまには可愛い看板娘の頼みを聞いてやらねぇとな……」
向かい合う男はビオリスよりも頭が一つ分は大きい。だが、冒険者として二十年以上も過ごしているビオリスとしては、よく見た冒険者の一人に過ぎない。
「分かった。お前の依頼、引き受けた」
「え、それってどういう……」
ビオリスは机の下に隠れるマリアに背を向ける。
後ろで固まっていたマリア。だが、「依頼」というビオリスの言葉に焦りを感じ何かを訴えているがビオリスは無視の姿勢を貫いた。。
――――今日の飲み食いをタダにされてしまう……。
一杯あたり千バルスはするワインを今日だけで二十杯以上……。それをタダにされてしまえば、店主にあとで何を言われるか――――
「あ、そうだ」
マリアの憂鬱な気分も知らずに、ビオリスは後ろを振り返る。
「ん? どうしたの?」
「お前、胸透けてるから気を付けた方がいいぞ」
「え? 胸透け、てって――――きゃっ……!」
ようやく自分の服がどうなっているかを理解したマリアは胸元を両手で覆い隠した。
周囲からは男たちの「あぁああ……」という悲痛な声が漏れている。
「貴様、自分だけマリアちゃんとイチャイチャしやがって! いい加減にしろ!」
「イチャイチャって、こんなおっさんを相手にしてくれる子なんて中々いないんだぞ」
「だまれ!」
ビオリスの正面から勢いよく拳が向かってくる。その腕の大きさは、足と見間違うほどに太く、立派に鍛え抜かれていた。
それがビオリスの右側の頬に触れようとするが――――――
「なっ、なにっ……!」
「静かに酒も飲めないなら帰れよ……ここは酒場だぞ……」
ビオリスの頬に当たる直前、男の拳はビオリスによって握られていた。
思い切り殴りつけるはずの拳からは完全に勢いが消えさり、殴った男も何が起きたのかが分からず……。
男は目の前で微動だにしないビオリスを、目を丸めて見つめるしかできなかった。
「な……俺は八階層に到達した冒険者だぞ……その俺の拳を素手で受け止めるなんてありえない!」
「はいはい、おめっとさん……」
ビオリスはあくびをしながら男へと返事をした。
「貴様ぁ! なめた真似をしてくれるな!」
「ん……?」
男は右拳を引いてもう一度殴りかかろうとする。だが――――
「振りかぶりすぎだ。それじゃ遅いんだよ……」
再び素手で男の拳を受け止めるビオリス。
「な、なんだと……」
「あぁ、面倒くせぇ……せっかく酔っていい気分だったのに最悪だ」
ビオリスは掴んだ男の手を開放し、服でその手を拭う。
「男の手なんざ触りたくねぇってのによ……」
たじろぐ男を無視し、ビオリスは足元で顔を赤く染めて胸を隠すマリアと目線を合わせる。
「酒場の代金、これでチャラな」
ビオリスの言葉にマリアは体をビクつかせた。
――――やはり、それが目的だったのかと。
「そ、それとこれとは話がちがうというか……私が怒られ――――」
「依頼は引き受けたぞ」
ビオリスはそう呟くと優しくマリアの頭を撫でた。
「そ、そんなぁ……」
とほほ……と、自身の給料が減らされるであろう出来事に泣き崩れるマリア。
「ほら、よしよし」
「うぅ……」
彼女は撫でられるのは嫌ではないらしく、されるがままになっている。
髪の間から覗かせる耳。その裏を触るとマリアの艶やかな声が漏れ、ビオリスがそのまま耳の先端を指先で摘まむ。
「はにゃぅ……あん……んっ……」
獣人はどうしてこうもエロい声が漏れるんだろうか。
マリアの嬌声を少しだけ堪能したあと、
「さてと……おっさんも、たまには可愛い看板娘の頼みを聞いてやらねぇとな……」
向かい合う男はビオリスよりも頭が一つ分は大きい。だが、冒険者として二十年以上も過ごしているビオリスとしては、よく見た冒険者の一人に過ぎない。
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