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第四話「スイとエンと召使い」
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二人をそれぞれの部屋に寝かしたあと――四つの部屋が並ぶ廊下の前で、俺はライと手を繋いでいた。
「ライ、アリシアはどこだ?」
「ん? お姉ちゃんならライの部屋で寝てると思うよ?」
「そうか……」
俺はやっぱり外で寝るしかないかな。
「あ、そういえば晩飯は?」
「フウが作ってくれてると思うよ!」
……あの恰好のまま、料理しているんだろうか。
「――ぜくすー、ぜくすー」
後ろから聞こえてきたのは、聞き慣れたやる気のない少女の声。
振り返って――――ぽふっと胸の中に自然と埋まる成長したフウ。
「おい、フウ……」
「ん?」
「エプロンなのは分かるが、シャツはどうした……」
フウの背中が丸見えだった。一応パンツは身に着けているみたいだが、これはもはや裸エプロンと変わらない……。
上目遣いのフウと目が合った。
「シャツ、きつくてぬいだ」
「だからってその恰好は――」
「パンツも、きつい……」
パンツに手をかけようとするフウの手を止める。
「ん?」
「いや、ん、じゃない……。本当に裸エプロンになってしまう……」
「はだか、えぷろん?」
「いや、気にするな……。フウの服を早く買わないと……」
俺の理性が飛んでしまうかもしれない。
「ねーねー、ぜくすー」
「ど、どうした?」
「ごはんできたよ?」
「お、おお、ナイスタイミングだな」
「フウ、えらい?」
「よしよし、偉いぞ」
撫でてほしそうに見つめてくるので、とりあえず撫でる。
「ふぅ~♪」
「フウ、ずるーい!」
フウのエプロンを引っ張るライ。フウは俺にくっついたまま動く気配がない。
「いまは、フウのばん」
「と、とりあえず、みんなを起こしに行かないか?」
「もすこしだけー」
「ならライも! ライも撫でてほーしーいぃ!」
「分かった……分かったから……」
適度に二人を撫でて――
「満足か?」
「いちおー」
「ライは満足!」
「んじゃ、みんなを起こして食卓に行くぞ」
「はーい」
「はーい!」
***
アリシアに魔王、フウにライ、スイとエン、全員でごはんを食べ終え……。アリシアを含めた女の子たちがお風呂に向かって行った。
男同士ということでエンの部屋に移動。ベッドの上に座るエンを、椅子に座わり少し離れた位置で向かい合う。
「なぁ、エン」
「な、なんだよ」
「お前、あんな子たちに囲まれてムラムラしないのか?」
「は、はぁ!?」
おお、エンの顔が真っ赤になった。
「きゅ、急になにを言い出すんだよ!」
「まぁまぁ、他のみんなはお風呂だ。気にするな」
「だから、なにをだよ!」
椅子を少し近付ける。
「で、誰が好きなんだ?」
「ばっ……好きとか! そんなの居ないし! 気になるとか好きとか、別にそういうんじゃ、ないし……」
「お前、分かりやすいな……」
「な、なにも言ってないぞ!」
「魔王か?」
「違う!」
「フウか?」
「違う!」
「ライか?」
「違う!」
「んじゃ、やっぱりスイか?」
「なっ……!」
耳まで赤くして……、分かりやすいにもほどがあるだろう……。
「今の誘導尋問はズルいぞ!」
エンの抗議を無視して――
「ずっと気になってたんだが、実際、お前たちは何才になるんだ?」
「魔王様が千才超えてて……あとはフウが二百――」
「いや、すまん。やっぱり言わなくていい」
「なんでだよ!」
「なんか、夢が壊れるような気がして……」
「はぁ? よく分からないぞ!」
「……」
聞かなければよかった……。魔王もフウもロリババアだったなんて……、ショックで今日は眠れないかもしれない……。
「おい、大丈夫かよ?」
「いや、大丈夫じゃないかもしれない……」
子どもだと思ってたのに、俺よりも年上……。
「おーい、顔が死んでるぞ?」
「……」
椅子から立ち上がってエンを見下ろす。
「お前もジジイなのか……」
「ん? 急になんだよ」
「お前も二百何才のジジイなのか?」
「ん? 二百才なんて龍で言ったらまだ子どもだぞ?」
……。
「……二百才で子ども?」
「ああ、魔王と同い年でようやく大人って感じだな」
「それは、本当なのか?」
「嘘ついても仕方ないだろ」
フウはまだ子どもか。
「あぁ……よかった……」
年上ということに代わりはないが、龍としてはまだ子どもなら問題ないな。
「どうしたんだよ」
「なんでもないよ」
「ちょ、急に撫でるな……うぅ……」
「すまんが、撫でるのがクセになっているんだ」
「ふんっ……クセなら仕方ねえな……♪」
嬉しそうにするエン。こうして頭を撫でていると、なんだか心が優しくなっていく気がする。
「あ、そういえば」
「ん?」
「なんで召使いの、女の子の恰好なんだ?」
「そ、それは……」
「スイとお揃いか?」
「ち、ちが! そんなんじゃ!」
「ああ、分かった分かった」
「なな、なにを――――にゃふぁぁ……♪」
男の子も可愛いもんだな。
ガチャッ。
「ん?」
「――ゼクスあがったよ!」
「アリシ、ア!?」
中に入ってきたのはバスタオル一枚だけのアリシア……。
「あー、もしかしてその子がエンちゃん?」
「エンちゃんって……、僕は――」
「いや、そんなことよりも、アリシア、服はどうしたんた?」
「スイちゃんが洗ってくれて、フウちゃんが風で乾かしてくれてるんだー♪」
ニコニコと近付いてくるアリシア。自然とその大きな胸に目が行ってしまう。
「ライ、アリシアはどこだ?」
「ん? お姉ちゃんならライの部屋で寝てると思うよ?」
「そうか……」
俺はやっぱり外で寝るしかないかな。
「あ、そういえば晩飯は?」
「フウが作ってくれてると思うよ!」
……あの恰好のまま、料理しているんだろうか。
「――ぜくすー、ぜくすー」
後ろから聞こえてきたのは、聞き慣れたやる気のない少女の声。
振り返って――――ぽふっと胸の中に自然と埋まる成長したフウ。
「おい、フウ……」
「ん?」
「エプロンなのは分かるが、シャツはどうした……」
フウの背中が丸見えだった。一応パンツは身に着けているみたいだが、これはもはや裸エプロンと変わらない……。
上目遣いのフウと目が合った。
「シャツ、きつくてぬいだ」
「だからってその恰好は――」
「パンツも、きつい……」
パンツに手をかけようとするフウの手を止める。
「ん?」
「いや、ん、じゃない……。本当に裸エプロンになってしまう……」
「はだか、えぷろん?」
「いや、気にするな……。フウの服を早く買わないと……」
俺の理性が飛んでしまうかもしれない。
「ねーねー、ぜくすー」
「ど、どうした?」
「ごはんできたよ?」
「お、おお、ナイスタイミングだな」
「フウ、えらい?」
「よしよし、偉いぞ」
撫でてほしそうに見つめてくるので、とりあえず撫でる。
「ふぅ~♪」
「フウ、ずるーい!」
フウのエプロンを引っ張るライ。フウは俺にくっついたまま動く気配がない。
「いまは、フウのばん」
「と、とりあえず、みんなを起こしに行かないか?」
「もすこしだけー」
「ならライも! ライも撫でてほーしーいぃ!」
「分かった……分かったから……」
適度に二人を撫でて――
「満足か?」
「いちおー」
「ライは満足!」
「んじゃ、みんなを起こして食卓に行くぞ」
「はーい」
「はーい!」
***
アリシアに魔王、フウにライ、スイとエン、全員でごはんを食べ終え……。アリシアを含めた女の子たちがお風呂に向かって行った。
男同士ということでエンの部屋に移動。ベッドの上に座るエンを、椅子に座わり少し離れた位置で向かい合う。
「なぁ、エン」
「な、なんだよ」
「お前、あんな子たちに囲まれてムラムラしないのか?」
「は、はぁ!?」
おお、エンの顔が真っ赤になった。
「きゅ、急になにを言い出すんだよ!」
「まぁまぁ、他のみんなはお風呂だ。気にするな」
「だから、なにをだよ!」
椅子を少し近付ける。
「で、誰が好きなんだ?」
「ばっ……好きとか! そんなの居ないし! 気になるとか好きとか、別にそういうんじゃ、ないし……」
「お前、分かりやすいな……」
「な、なにも言ってないぞ!」
「魔王か?」
「違う!」
「フウか?」
「違う!」
「ライか?」
「違う!」
「んじゃ、やっぱりスイか?」
「なっ……!」
耳まで赤くして……、分かりやすいにもほどがあるだろう……。
「今の誘導尋問はズルいぞ!」
エンの抗議を無視して――
「ずっと気になってたんだが、実際、お前たちは何才になるんだ?」
「魔王様が千才超えてて……あとはフウが二百――」
「いや、すまん。やっぱり言わなくていい」
「なんでだよ!」
「なんか、夢が壊れるような気がして……」
「はぁ? よく分からないぞ!」
「……」
聞かなければよかった……。魔王もフウもロリババアだったなんて……、ショックで今日は眠れないかもしれない……。
「おい、大丈夫かよ?」
「いや、大丈夫じゃないかもしれない……」
子どもだと思ってたのに、俺よりも年上……。
「おーい、顔が死んでるぞ?」
「……」
椅子から立ち上がってエンを見下ろす。
「お前もジジイなのか……」
「ん? 急になんだよ」
「お前も二百何才のジジイなのか?」
「ん? 二百才なんて龍で言ったらまだ子どもだぞ?」
……。
「……二百才で子ども?」
「ああ、魔王と同い年でようやく大人って感じだな」
「それは、本当なのか?」
「嘘ついても仕方ないだろ」
フウはまだ子どもか。
「あぁ……よかった……」
年上ということに代わりはないが、龍としてはまだ子どもなら問題ないな。
「どうしたんだよ」
「なんでもないよ」
「ちょ、急に撫でるな……うぅ……」
「すまんが、撫でるのがクセになっているんだ」
「ふんっ……クセなら仕方ねえな……♪」
嬉しそうにするエン。こうして頭を撫でていると、なんだか心が優しくなっていく気がする。
「あ、そういえば」
「ん?」
「なんで召使いの、女の子の恰好なんだ?」
「そ、それは……」
「スイとお揃いか?」
「ち、ちが! そんなんじゃ!」
「ああ、分かった分かった」
「なな、なにを――――にゃふぁぁ……♪」
男の子も可愛いもんだな。
ガチャッ。
「ん?」
「――ゼクスあがったよ!」
「アリシ、ア!?」
中に入ってきたのはバスタオル一枚だけのアリシア……。
「あー、もしかしてその子がエンちゃん?」
「エンちゃんって……、僕は――」
「いや、そんなことよりも、アリシア、服はどうしたんた?」
「スイちゃんが洗ってくれて、フウちゃんが風で乾かしてくれてるんだー♪」
ニコニコと近付いてくるアリシア。自然とその大きな胸に目が行ってしまう。
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