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第二話「生きていた魔王たち」
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「おゆ、のなか?」
「可愛く言ってもダメだ、ほら、ちゃんと探してって――」
「ゼクスー!」
今度はなんだ……。
「どうした……――――ッ!?」
四天王のライと魔王がアリシアによって撫でられまくっていた。
「この子たち可愛いんだけど、持って帰っていいのかな!」
「いや、なんでそうなった……」
見ていない間に何があったんだ……。
「ゼクスが撫でてくれるみたいにしてみたらできた!」
どういうことだよ……。
「お姉ちゃん、なでなでじょうずー!」
「はーい、よしよし~♪」
「ま、まあ、悪くないわね!」
「ふふっ、ツンなところが可愛いなぁ~」
「ツンじゃないわよ! 褒めてあげてるの! 喜びなさい!」
「はいはい♪」
「うぐぅ……!」
アリシアは魔王と四天王のライを完全に――丸裸の状態で丸め込んでいた。背中に張り付いたフウに、気持ちよさそうに撫でられている二人。
「あれ、待てよ……」
四天王はたしか、風の龍と雷の龍-―ほかに水の龍と炎の龍もいたはずだ。
「なぁ、フウ」
「なに?」
背中に張り付いているフウに問いかける。状況がおかしいがとりあえず聞くしかない。
「四天王のあと二人はどこに?」
「スイちゃんがみずだして、エンくんがあたためてくれてるよ?」
水龍と炎龍の扱いが下っ端だった……。
「一番かわいそうじゃないか……」
「ん?」
「『ん?』じゃないよ、まったく……」
……。
「とりあえず上がるか?」
「うん」
アリシアの方へと近付いていくゼクス。その背中には全裸でくっつくフウの姿。
「アリシア、とりあえず話をするためにもここを出ないか?」
「え、ああ……うん!」
「なんか問題でもあったか?」
「ううん! 私は大丈夫!」
あはは、と照れるアリシア。「私は?」ってどういう意味なんだろうか。
「んじゃ、行こうか」
撫でられすぎてほわほわしている魔王たちの横を通り過ぎていく。
「ねえぜくす、ぜくすー」
「フウ、どうした?」
「ぜくすもタオルないよ?」
「……」
急いで視線を落として確認する――巻いていたはずのタオルがない!
「え、いつから……」
「おゆから、でたとき、から?」
「はぁ……、最初に言ってくれ……」
「つぎはそうするー」
「はぁ……」
魔王と戦っていた時とは違う疲れが肩にのしかかってくる……。いや、フウが乗っているのか……。
アリシアとの二人暮らしになる予定が初日で崩れ去っていく……。
とりあえず、着替えて――
「あれ、そういえば服が汚れたままじゃないか……」
「それならだいじょぶ」
「ん、どういうことだ?」
「ちょっとまってて」
ぺたぺたと大浴場から脱衣所に歩いていくフウ。そのあとを追いかける。
「みてみてー」
バサッと広げられた和服に絡まるフウ。見て欲しいのか遊びたいのか判断しにくいが――
「あれ、汚れが消えてる」
「スイちゃんがあらって、エンくんがあたためて、きれいきれい」
まだ出会ってもいない四天王たちが一番仕事をしている気がするんだが……。
「そのスイとエンってやつはどこに?」
「しごと?」
俺の和服にくるまったフウがあざとく頭を傾ける。
「……」
いやいや、仕事の配分がおかしい気がする……。
「どうしたの?」
「お前たちの役割分担ってどうなってるんだ?」
「スイちゃんとエンくんがせんたくものとかー……おふろ?」
問いかけたのになぜ疑問形なんだ……。
「それでね、魔王様とライがおしろのぼうえいなの」
「そうか……、それでフウは?」
「フウはごはんがかりー」
がおーっと両手を上げるフウ。当然の如く、巻き付けていた服が地べたに落ちていった。
ってか、こんなふわふわしたフウがごはんを作れるのか。
「まぁ、一旦、着替えてから話し合いするか……」
地べたに落ちた服を拾い上げる。残りの衣服の場所を教えてもらい、ようやくスッキリした。
***
着替えが終わった俺とフウに引き続き、魔王とライが着替える。魔王は際どいブラに下着姿のようなサキュバスに似た恰好だった。対してライは半袖短パンといういかにも活発少女というような恰好に着替えていた。
部屋へと向かう最中、なんとかアリシアに魔王と四天王であることを納得してもらうことに成功。そうして、再びフウの部屋に来たわけだが――
「お姉ちゃんお姉ちゃん!」
「ライちゃんどしたのー?」
「撫でてー!」
「いいよー!」
「ズルいわよ! 私も撫でなさい!」
「こらこら、ケンカしないの!」
「お姉ちゃんすきー!」
「ま、まあ、撫でるのが上手なのは褒めてあげるわよ!」
ベッドに腰かけるアリシアの右と左に魔王とライが座る。撫でるアリシアも揃ってご満悦な様子だった。
ゼクスはその正面の壁にもたれながら胡坐をかいて――その上に陣取っているのは安心して寝ているフウの姿。ゼクスの腕を枕にすやすやと眠っている。
「ねーねーゼクス!」
アリシアが嬉しそうにゼクスを見つめる。
「どうした?」
「私たちの子どもが出来たらこんな感じなのかなーって♪」
「そ、そうだな……」
「お姉ちゃん子どもってどう作るの?」
「え、いやぁ……ライちゃんにはまだ早いかなー……」
「ライ! そんなことも知らないの? オスとメスが交尾すれば出来るのよ!」
「「……」」
ド直球すぎる魔王の言葉の暴投に俺とアリシアは目を合わせた。
「可愛く言ってもダメだ、ほら、ちゃんと探してって――」
「ゼクスー!」
今度はなんだ……。
「どうした……――――ッ!?」
四天王のライと魔王がアリシアによって撫でられまくっていた。
「この子たち可愛いんだけど、持って帰っていいのかな!」
「いや、なんでそうなった……」
見ていない間に何があったんだ……。
「ゼクスが撫でてくれるみたいにしてみたらできた!」
どういうことだよ……。
「お姉ちゃん、なでなでじょうずー!」
「はーい、よしよし~♪」
「ま、まあ、悪くないわね!」
「ふふっ、ツンなところが可愛いなぁ~」
「ツンじゃないわよ! 褒めてあげてるの! 喜びなさい!」
「はいはい♪」
「うぐぅ……!」
アリシアは魔王と四天王のライを完全に――丸裸の状態で丸め込んでいた。背中に張り付いたフウに、気持ちよさそうに撫でられている二人。
「あれ、待てよ……」
四天王はたしか、風の龍と雷の龍-―ほかに水の龍と炎の龍もいたはずだ。
「なぁ、フウ」
「なに?」
背中に張り付いているフウに問いかける。状況がおかしいがとりあえず聞くしかない。
「四天王のあと二人はどこに?」
「スイちゃんがみずだして、エンくんがあたためてくれてるよ?」
水龍と炎龍の扱いが下っ端だった……。
「一番かわいそうじゃないか……」
「ん?」
「『ん?』じゃないよ、まったく……」
……。
「とりあえず上がるか?」
「うん」
アリシアの方へと近付いていくゼクス。その背中には全裸でくっつくフウの姿。
「アリシア、とりあえず話をするためにもここを出ないか?」
「え、ああ……うん!」
「なんか問題でもあったか?」
「ううん! 私は大丈夫!」
あはは、と照れるアリシア。「私は?」ってどういう意味なんだろうか。
「んじゃ、行こうか」
撫でられすぎてほわほわしている魔王たちの横を通り過ぎていく。
「ねえぜくす、ぜくすー」
「フウ、どうした?」
「ぜくすもタオルないよ?」
「……」
急いで視線を落として確認する――巻いていたはずのタオルがない!
「え、いつから……」
「おゆから、でたとき、から?」
「はぁ……、最初に言ってくれ……」
「つぎはそうするー」
「はぁ……」
魔王と戦っていた時とは違う疲れが肩にのしかかってくる……。いや、フウが乗っているのか……。
アリシアとの二人暮らしになる予定が初日で崩れ去っていく……。
とりあえず、着替えて――
「あれ、そういえば服が汚れたままじゃないか……」
「それならだいじょぶ」
「ん、どういうことだ?」
「ちょっとまってて」
ぺたぺたと大浴場から脱衣所に歩いていくフウ。そのあとを追いかける。
「みてみてー」
バサッと広げられた和服に絡まるフウ。見て欲しいのか遊びたいのか判断しにくいが――
「あれ、汚れが消えてる」
「スイちゃんがあらって、エンくんがあたためて、きれいきれい」
まだ出会ってもいない四天王たちが一番仕事をしている気がするんだが……。
「そのスイとエンってやつはどこに?」
「しごと?」
俺の和服にくるまったフウがあざとく頭を傾ける。
「……」
いやいや、仕事の配分がおかしい気がする……。
「どうしたの?」
「お前たちの役割分担ってどうなってるんだ?」
「スイちゃんとエンくんがせんたくものとかー……おふろ?」
問いかけたのになぜ疑問形なんだ……。
「それでね、魔王様とライがおしろのぼうえいなの」
「そうか……、それでフウは?」
「フウはごはんがかりー」
がおーっと両手を上げるフウ。当然の如く、巻き付けていた服が地べたに落ちていった。
ってか、こんなふわふわしたフウがごはんを作れるのか。
「まぁ、一旦、着替えてから話し合いするか……」
地べたに落ちた服を拾い上げる。残りの衣服の場所を教えてもらい、ようやくスッキリした。
***
着替えが終わった俺とフウに引き続き、魔王とライが着替える。魔王は際どいブラに下着姿のようなサキュバスに似た恰好だった。対してライは半袖短パンといういかにも活発少女というような恰好に着替えていた。
部屋へと向かう最中、なんとかアリシアに魔王と四天王であることを納得してもらうことに成功。そうして、再びフウの部屋に来たわけだが――
「お姉ちゃんお姉ちゃん!」
「ライちゃんどしたのー?」
「撫でてー!」
「いいよー!」
「ズルいわよ! 私も撫でなさい!」
「こらこら、ケンカしないの!」
「お姉ちゃんすきー!」
「ま、まあ、撫でるのが上手なのは褒めてあげるわよ!」
ベッドに腰かけるアリシアの右と左に魔王とライが座る。撫でるアリシアも揃ってご満悦な様子だった。
ゼクスはその正面の壁にもたれながら胡坐をかいて――その上に陣取っているのは安心して寝ているフウの姿。ゼクスの腕を枕にすやすやと眠っている。
「ねーねーゼクス!」
アリシアが嬉しそうにゼクスを見つめる。
「どうした?」
「私たちの子どもが出来たらこんな感じなのかなーって♪」
「そ、そうだな……」
「お姉ちゃん子どもってどう作るの?」
「え、いやぁ……ライちゃんにはまだ早いかなー……」
「ライ! そんなことも知らないの? オスとメスが交尾すれば出来るのよ!」
「「……」」
ド直球すぎる魔王の言葉の暴投に俺とアリシアは目を合わせた。
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