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第六話「彩香のバレーサークル入部問題」彩香side story

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 ――ファミレスを四人で行った翌日の朝。


「やばいよやばいよー! 先輩に連絡返すの忘れてたー!」
「……彩香、朝からうるさい……」

 カーテン越しに彩芽の可愛い声が聞こえる!

「ご、ごめんね彩芽! お姉ちゃんちょっと大学行ってくるよ!」
「ん……分かった……」
「……」

 そろりそろりとカーテン越しに彩芽の寝顔チェック。布団からひょこっと顔を出して小動物みたいな小顔がっ。
 丁度こっちに顔向いててラッキー!

「フッフッフ……」

 バレーよりも先輩よりも、彩芽の寝顔に比べれば取るに足らないっ。

「……」

 忍び足で彩芽の枕元に近付いてスマホで撮影っ。
 カシャッ。カシャカシャッ。カシャカシャカシャカシャ……。

「はぁー、今日も可愛いなぁ……」

 撮った画像を確認してと……。

「よし! いい感じ!」
「彩香、うっさい……」
「はわっ! ご、ごめんね!」
「むぅ……次やったら許さな――すー……すー……」
「はぁー、可愛いなぁ……。でも、そろそろ行かなきゃ……」

 大学まで近いし寝間着のシャツで行ってもいいかなぁ……。
 目線を落として見つめるも、薄目のシャツにノーブラ……。

「にゃははー、さすがにダメかなぁ……」

 シャツと寝間着のズボンを脱いで、ブラ付けてと……。

「んっ……よっ……ほっ……できたっ」

 後ろフックのブラやだなぁ。次買う時は前フックにしよう……。

「うーん……」

 まだ外も涼しそうだし、一枚羽織るかな。パンツも長いのにしようっと――

「……よし、行くか!」

 ジャケット羽織って準備オッケー!

「んじゃ、彩芽、お昼くらいには戻って来るね!」

 部屋の外から彩芽の顔を見つめながら行ってきますの挨拶っ。

「ん……今、何時……」

 こっちを向いて目を瞑ったまま返事をする彩芽が可愛いぃ……。

「ハァハァ……」
「今何時よ……」
「あ、えっとね、十時くらい!」
「ん、分かった……ご飯は……?」

 布団にもぐろうとしながらデレる彩芽がたまらないっ。

「彩芽が作ってくれるならなんでもオッケーだよっ」
「そ……分かった……」

 朝から彩芽のツンデレと味わえるとは今日は良い日に違いないっ。
 靴を履いて、と……よし。

「んじゃ、行ってきまーす!」
「……すー……すー……」

 彩芽の寝息も録音したいけれど……ここは我慢だ……。
 玄関をそっと閉めて――

「さてとー、行くかー!」

 両手を上げて寝起きの身体を伸ばす。

「うん?」

 また胸大きくなったかな……。
 もみもみ。

「むむ……これは……」

 多分、成長している。

「はぁ……肩凝るから嫌なのにー……」

 ……。

「とりあえず行くかー、」

 ――デニム生地のジャケットの襟を軽く正し、彩香は大学へと向かって行った。



「……えっと、確か部室棟は広場抜けて向こうだね」

 それにしても日曜日でも大学って空いてるんだなー。土日まで勉強する人って他に楽しみないのかな。あ、でも、部活とかもあるもんなー。

 そういえば、鍵と携帯しか持ってきてないけど大丈夫かな……。

「彩香さーん!」
「ん?」

 後ろから聞こえてきた声に振り返ると、茶髪のポニテ先輩が胸を揺らしながら走り寄って来ていた。

「城川先輩おはようございます!」
「おはよー!」

 目の前で立ち止まった城川先輩の胸がふよんっと揺れた。
 ほほう……。白シャツに水色の爽やかな短パンのバレーボールウェアか。
 うんうん、可愛らしい顔と後ろでまとめられたポニテと相まって高得点っ。
 城川先輩、出会えてよかったー!

「もー、彩香さん来てくれないと思って……わたしっ……わたし……うぅ……」
「え、ええ⁉ ちょっと先輩! なんで泣きそうなんですか!」
「うぅ……だって……連絡もくれないし……最初の時、しつこく誘ったから嫌われちゃったのかなって……」

 目に涙を浮かべて泣きだしそうなユカ先輩に思わず戸惑ってしまう。

「そ、そんなことないですよ!」
「ほんと……?」
「ほ、ほんとですっ」
「嘘じゃない?」

 私の胸と先輩の胸がくっつく距離まで迫られ問いかけられた。
 くぅ……このタイミングで上目遣いはズルい……。

「う、嘘じゃないですって……それより胸、胸当たってますっ!」
「は、はわっ! ……ご、ごめんなさい!」

 後ろに下がって照れながら胸を押さえる城川先輩。
 うん。この先輩はきっと腹黒いな……。
 こういう人に限って実は裏であんなことやこんなことを――

「彩香さんっ」
「は、はいっ」

 両肩を掴まれて少し背の小さな城川先輩と見つめ合う。
 うっ……意外と恥ずかしいな……。

「バレーサークル、入ってくれるよね?」
「いやぁ……それがちょっと……」

 城川先輩から目線を逸らして頭を片手で押さえる。
 彩芽と離れる時間増えるのはなぁ……。彩芽もバレーしてくれればいいけど、「絶対嫌っ!」って言うだろうし……。

「ダメ……なの……?」
「いやぁ、その、妹の面倒見ないといけないので……」
「うぅ……うぐっ……ダメ、なのね……」

 城川先輩が泣きだして目を擦る。確かに可愛い。確かに申し訳ない……。
 でも、この技でどれほどの男子が沈んだのか、そっちの方が地味に気になる……。

 銀治も泣いて抱きつかれたらどうなるのかな。
 って、なんで私まで……。

「と、とりあえず城川先輩、部室行きましょ!」
「うぅ……うっ……」

 広場のど真ん中で泣かれるから、いくら日曜日とはいえ人の目が!

「ほら、城川先輩!」
「えっ」

 城川先輩の手を引っ張り、そのまま部室棟へと小走りで向かう。

「や、その、彩香さん……!」
「なんですかー」
「そ、そのっ……」

 あぁ……出来れば自分の力で走って欲しい……、人の手を掴みながら走るの結構しんどいんだけどなぁ……。

「どうしたんですか?」
「じ、自分で走るから……その……」
「ん?」

 振り返ると、城川先輩の顔が真っ赤になっていた。

「城川先輩どうしたんですか! 顔真っ赤ですけどっ!」

 思わずビックリして大声で問いかけてしまった。
「う、ううん……気にしないでっ……ふぁぁ……」

 両手で顔を隠してしゃがみこむ城川先輩。

「ちょ、城川先輩⁉」
「は、恥ずかしい……」

 な、なな、何なんだこの人はぁあああ!
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