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歓迎パーティー
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煌びやかに飾られた王城の会場には隣国オード王国の王太子であるアレックス・オードとその妹姫メルレル・オードが拍手と共に入場した。
アレックスは俺と年が近いが童顔で妹姫と似た顔をしている…が腹は黒い。
オード王国の王族自体が俺は好きではない。なぜなら王族のくせに奔放な者が多いからだ。
「やあ!ロイ」
「長い旅はどうでしたか?」
馴れ馴れしい態度も好きではない。我が国と同盟を結んでもいないのに昔からこんな態度を取る。
「はは!今回は妹、メルレルが一緒だったから退屈はしなかったよ」
「まぁお兄様、嬉しいことをおっしゃるのね」
まるで双子のように似ているから不気味だ。
『…イ…ま…すて…』
俺はメルレル王女に一歩近づき、手入れのされた手を掴み口づける。
『きゃ…ロイ様…はぁ…素敵だわぁ…たくましい体も…冷たく見える眼差しも…お兄様は本当に私をこの国へ嫁がせてくれるの?いい…ロイ様がいい…ロイ様なら…』
人が多い場所のせいで雑音が俺を襲っていたが、こうして触れると相手の声は鮮明に聞こえる。
なるほど…アレックスは妹を嫁がせて繋がりを求めているのか?
だがリリアーナの存在はオード王国でも知られているはずだ。王女を側妃…にと提案するか?
「メルレル王女、歓迎します。我が国に来るのは初めてですから不安もあるでしょうが、私の臣下が精一杯もてなします。茶会の場を用意します。令嬢らにオード王国の話を聞かせてやってください」
頬を染められても困るが…
ちらとアレックスを見ればニコニコと人懐っこい表情をしてこちらを見ていた。
「よかったね、メルレル」
「はい」
『な…だよ…のろ…はせい…しなか』
俺はひきつりそうになる頬を耐えている。
確かにアレックスの声で“呪い”と聞こえた。そして想像が正しければ…“成功”と続いた。
あの一族の居座っていた辺境はオード王国側だ…嫌な想像が広がる。
「どうしたの?ロイ。僕の顔になにかついてる?」
「いや…我が…婚約者がこの場にいないことを謝ろうと思ってな」
「…そうだね…いないね」
アレックスはわざとらしい仕草で辺りを見回し微笑んだ。
「流行り病のようでな…父親の公爵は全快したが…彼女は…まだな…」
俺はアレックスにだけ届く小さな声で伝える。
「え…心配だねぇ…未来の王太子妃だ…大切にしないと」
微笑む顔が胡散臭いと感じるのは仕方ないだろう。
「さあ…我が国の貴族達にオード王族の顔を見せてやってくれ。皆が話したがっている」
俺はアレックスの肩に触れる。
『んー呪えてないじゃないか…やっぱりあの一族の言っていた呪術は嘘か。わざわざ金貨を渡してアルゾーグリー側に入れたのに…一族のなかに潜ませた密偵は殺されちゃったし…金貨五百が無駄になった』
後ろに立つライドの腰に下がっている剣を引き抜き、アレックスの細い首を落とす…想像をしてしまった。
不自然に思われないよう肩から手を離し、臣下の待つ場へ誘う。そこには酒を片手に談笑する父王もいる。
アレックス…そうか…なぜあんな場所に居着いたかと不思議ではあった。辺境の村の子供が拐われていなければ奴らの存在は今もわからなかったろう。
静かな場所で考えたいが、まだこの場を離れることはできない…が…人々の声が重なりあって頭に響く。これは…愚痴だろうと猥褻だろうと一人の声を聞いていたほうが耐えられた。
地下牢に行かねばならない。あの男に知っていることを吐かせなければ…
アレックス…よくも…我が民…我が国を愚弄してくれたな。
「殿下」
声に意識を向ける。
「マイル公爵、タイラル公爵」
「…メルレル王女の訪問は報せにはありませんでした」
ブルーノが小声で伝える。
「ああ…私も知らなかった」
オード王国からはアレックスだけが来るとあったが、実際は王女を共に連れて来た。それになにか意味はあるのか?
もう一度、アレックスに触れれば…
『オード姫…アルゾーグリーの王族に加える……アレック…殿下はわしの血筋を王家に』
「タイラル」
「なんですかな?殿下」
俺を見上げるタイラルはいつもの笑顔だった。この顔の下にくだらない欲望が…そんなことを考えていたとはな。
「マイル公爵が元気になって安心したろう?」
「もちろんでございます」
『殿下が…盛った…なく…ただの……』
人が多すぎるのか聞きづらいうえに頭痛もする。
『イリ……リリア……リヤ……とだえ……』
「マイル公爵、タイラル公爵。少し場を離れる。客人の相手を頼めるか?」
「どうかされましたか?」
ああ…ブルーノ。イリヤはタイラルと繋がっているぞとここで言えば、タイラルを殴るだろうな。
「客の泊まる離宮の確認をしてくる」
「そんなことは臣下にさせればよろしいのでは?」
機嫌良さそうにワインを口に含むタイラルを見る。
「その通りだがな、アレックスだけと思っていたからな…王女の使う部屋は少し飾らないとならない…大切な姫だ…だろう?」
あんな女は好みではないがな、タイラル…俺が姫を気遣っていると勘違いしておけ。
「ほほ!殿下、婚約者の父君が聞いておりますぞ」
「マイル公爵は心が広い…変な誤解はしないよな?」
「はい」
ちくしょう…頭が割れるほど痛むぞ…
アレックスは俺と年が近いが童顔で妹姫と似た顔をしている…が腹は黒い。
オード王国の王族自体が俺は好きではない。なぜなら王族のくせに奔放な者が多いからだ。
「やあ!ロイ」
「長い旅はどうでしたか?」
馴れ馴れしい態度も好きではない。我が国と同盟を結んでもいないのに昔からこんな態度を取る。
「はは!今回は妹、メルレルが一緒だったから退屈はしなかったよ」
「まぁお兄様、嬉しいことをおっしゃるのね」
まるで双子のように似ているから不気味だ。
『…イ…ま…すて…』
俺はメルレル王女に一歩近づき、手入れのされた手を掴み口づける。
『きゃ…ロイ様…はぁ…素敵だわぁ…たくましい体も…冷たく見える眼差しも…お兄様は本当に私をこの国へ嫁がせてくれるの?いい…ロイ様がいい…ロイ様なら…』
人が多い場所のせいで雑音が俺を襲っていたが、こうして触れると相手の声は鮮明に聞こえる。
なるほど…アレックスは妹を嫁がせて繋がりを求めているのか?
だがリリアーナの存在はオード王国でも知られているはずだ。王女を側妃…にと提案するか?
「メルレル王女、歓迎します。我が国に来るのは初めてですから不安もあるでしょうが、私の臣下が精一杯もてなします。茶会の場を用意します。令嬢らにオード王国の話を聞かせてやってください」
頬を染められても困るが…
ちらとアレックスを見ればニコニコと人懐っこい表情をしてこちらを見ていた。
「よかったね、メルレル」
「はい」
『な…だよ…のろ…はせい…しなか』
俺はひきつりそうになる頬を耐えている。
確かにアレックスの声で“呪い”と聞こえた。そして想像が正しければ…“成功”と続いた。
あの一族の居座っていた辺境はオード王国側だ…嫌な想像が広がる。
「どうしたの?ロイ。僕の顔になにかついてる?」
「いや…我が…婚約者がこの場にいないことを謝ろうと思ってな」
「…そうだね…いないね」
アレックスはわざとらしい仕草で辺りを見回し微笑んだ。
「流行り病のようでな…父親の公爵は全快したが…彼女は…まだな…」
俺はアレックスにだけ届く小さな声で伝える。
「え…心配だねぇ…未来の王太子妃だ…大切にしないと」
微笑む顔が胡散臭いと感じるのは仕方ないだろう。
「さあ…我が国の貴族達にオード王族の顔を見せてやってくれ。皆が話したがっている」
俺はアレックスの肩に触れる。
『んー呪えてないじゃないか…やっぱりあの一族の言っていた呪術は嘘か。わざわざ金貨を渡してアルゾーグリー側に入れたのに…一族のなかに潜ませた密偵は殺されちゃったし…金貨五百が無駄になった』
後ろに立つライドの腰に下がっている剣を引き抜き、アレックスの細い首を落とす…想像をしてしまった。
不自然に思われないよう肩から手を離し、臣下の待つ場へ誘う。そこには酒を片手に談笑する父王もいる。
アレックス…そうか…なぜあんな場所に居着いたかと不思議ではあった。辺境の村の子供が拐われていなければ奴らの存在は今もわからなかったろう。
静かな場所で考えたいが、まだこの場を離れることはできない…が…人々の声が重なりあって頭に響く。これは…愚痴だろうと猥褻だろうと一人の声を聞いていたほうが耐えられた。
地下牢に行かねばならない。あの男に知っていることを吐かせなければ…
アレックス…よくも…我が民…我が国を愚弄してくれたな。
「殿下」
声に意識を向ける。
「マイル公爵、タイラル公爵」
「…メルレル王女の訪問は報せにはありませんでした」
ブルーノが小声で伝える。
「ああ…私も知らなかった」
オード王国からはアレックスだけが来るとあったが、実際は王女を共に連れて来た。それになにか意味はあるのか?
もう一度、アレックスに触れれば…
『オード姫…アルゾーグリーの王族に加える……アレック…殿下はわしの血筋を王家に』
「タイラル」
「なんですかな?殿下」
俺を見上げるタイラルはいつもの笑顔だった。この顔の下にくだらない欲望が…そんなことを考えていたとはな。
「マイル公爵が元気になって安心したろう?」
「もちろんでございます」
『殿下が…盛った…なく…ただの……』
人が多すぎるのか聞きづらいうえに頭痛もする。
『イリ……リリア……リヤ……とだえ……』
「マイル公爵、タイラル公爵。少し場を離れる。客人の相手を頼めるか?」
「どうかされましたか?」
ああ…ブルーノ。イリヤはタイラルと繋がっているぞとここで言えば、タイラルを殴るだろうな。
「客の泊まる離宮の確認をしてくる」
「そんなことは臣下にさせればよろしいのでは?」
機嫌良さそうにワインを口に含むタイラルを見る。
「その通りだがな、アレックスだけと思っていたからな…王女の使う部屋は少し飾らないとならない…大切な姫だ…だろう?」
あんな女は好みではないがな、タイラル…俺が姫を気遣っていると勘違いしておけ。
「ほほ!殿下、婚約者の父君が聞いておりますぞ」
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「はい」
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