21 / 23
2. ご主人様はクールで過保護
2-9 心配性のアッシュ様
しおりを挟む
おれが、こんな格好してるから……変な目で見られるんじゃないかって。主人であるアッシュ様の評判を、汚してしまうんじゃないかって。そんな嫌な可能性を、思いきって言ってみると。
アッシュ様は、ぱちり、と瞬きをして――すぐに俺の問いに答える。
「違う」
「あ、違うんだ」
「まあ……変か、変でないかで言ったら……変だとは思うが。客観的に見て」
「……」
うーん、ばっさり言うなぁ……。
アッシュ様が椅子にもたれかかる。ぎし、と小さな軋みの音がする。
「お前がそういう格好をしたいのなら、すればいい。俺は別に、周りに褒められようが貶されようが気にならないからな」
「……そっか」
まあでも、逆に安心かな。アッシュ様の考えのブレなさに。
ずっと『好きにしていい』ってスタンスなのは変わらないからね。だからこそ、おれはおれらしくいる決意ができた……とも言えますし。
「で……そろそろ教えてよ。なんで外に出ちゃダメなのか」
いよいよじれったくなって、おれが聞くと。
「お前を外に出さないのは、お前が使い魔だからだ」
アッシュ様は、そう答えた。
「魔術師が生成した『使い魔』は、人間とは身体の構造が違う。魔力を多く蓄えることができるんだ。だから、俺の目の届かない場所で、変な輩に狙われるんじゃないかと思ってな」
なるほど……それは確かに、危険かも。と、おれは頷く。
おれはこっちの世界のこともあんまり知らないわけだし。うっかり騙されたりしたら、大変だよね。
「そうなると……使い魔が襲われたり、誘拐されたりって事件は多いのかな」
「……いや。使い魔を生成できる魔術師は、高い能力を持つ者ばかりだから……基本的には、使い魔に危険が及ぶようなことがあればすぐに気付ける。そういう事件が起こることは、まずないな」
ん? あれ?
何か想像と違うな。
「えーっと……? じゃあ『使い魔はお屋敷の外に出てはならない』とか決まりがあるわけでもなく……?」
「そうだな。むしろ用事に同行させたり、買い物に行かせたりするのは一般的なことだと聞く」
「で、アッシュ様は……おれが一人で外に出かけて、何かあったとしても、すぐ分かるってことだよね……?」
「まあ、そうだが」
アッシュ様は、おれの目をじっと見て言う。
「そうだとしても、心配するに越したことはないだろう」
うん、そうね。
そうだけどさ……。
「過保護じゃない!?」
おれは思わず叫んだ。
本来、世の使い魔は安心して外に出られてるってことですよね? 心配だからって、ここまで徹底的に外出を制限する必要はないですよね!?
「あの、ご主人様。おれ、これでも男だから! 悪い奴に会ったらちゃんと逃げられるからっ!」
「その『悪い奴』かどうかはどうやって見抜く気なんだ。食べ物をくれるとか言って、騙されたらどうする」
「おれのこと何だと思ってるのぉ!?」
そんな簡単には釣られませんが!? こちとら義務教育修業済みの成人男性ですが!?
「じゃ、じゃあ、最悪ずっと監視つけてくれててもいいから……」
「俺にも仕事があるんだぞ。目を話した隙に何かあったら」
「もぉ~~~~っ!」
アッシュ様とおれによる平行線の問答は、しばらくの間続いたのだった……。
アッシュ様は、ぱちり、と瞬きをして――すぐに俺の問いに答える。
「違う」
「あ、違うんだ」
「まあ……変か、変でないかで言ったら……変だとは思うが。客観的に見て」
「……」
うーん、ばっさり言うなぁ……。
アッシュ様が椅子にもたれかかる。ぎし、と小さな軋みの音がする。
「お前がそういう格好をしたいのなら、すればいい。俺は別に、周りに褒められようが貶されようが気にならないからな」
「……そっか」
まあでも、逆に安心かな。アッシュ様の考えのブレなさに。
ずっと『好きにしていい』ってスタンスなのは変わらないからね。だからこそ、おれはおれらしくいる決意ができた……とも言えますし。
「で……そろそろ教えてよ。なんで外に出ちゃダメなのか」
いよいよじれったくなって、おれが聞くと。
「お前を外に出さないのは、お前が使い魔だからだ」
アッシュ様は、そう答えた。
「魔術師が生成した『使い魔』は、人間とは身体の構造が違う。魔力を多く蓄えることができるんだ。だから、俺の目の届かない場所で、変な輩に狙われるんじゃないかと思ってな」
なるほど……それは確かに、危険かも。と、おれは頷く。
おれはこっちの世界のこともあんまり知らないわけだし。うっかり騙されたりしたら、大変だよね。
「そうなると……使い魔が襲われたり、誘拐されたりって事件は多いのかな」
「……いや。使い魔を生成できる魔術師は、高い能力を持つ者ばかりだから……基本的には、使い魔に危険が及ぶようなことがあればすぐに気付ける。そういう事件が起こることは、まずないな」
ん? あれ?
何か想像と違うな。
「えーっと……? じゃあ『使い魔はお屋敷の外に出てはならない』とか決まりがあるわけでもなく……?」
「そうだな。むしろ用事に同行させたり、買い物に行かせたりするのは一般的なことだと聞く」
「で、アッシュ様は……おれが一人で外に出かけて、何かあったとしても、すぐ分かるってことだよね……?」
「まあ、そうだが」
アッシュ様は、おれの目をじっと見て言う。
「そうだとしても、心配するに越したことはないだろう」
うん、そうね。
そうだけどさ……。
「過保護じゃない!?」
おれは思わず叫んだ。
本来、世の使い魔は安心して外に出られてるってことですよね? 心配だからって、ここまで徹底的に外出を制限する必要はないですよね!?
「あの、ご主人様。おれ、これでも男だから! 悪い奴に会ったらちゃんと逃げられるからっ!」
「その『悪い奴』かどうかはどうやって見抜く気なんだ。食べ物をくれるとか言って、騙されたらどうする」
「おれのこと何だと思ってるのぉ!?」
そんな簡単には釣られませんが!? こちとら義務教育修業済みの成人男性ですが!?
「じゃ、じゃあ、最悪ずっと監視つけてくれててもいいから……」
「俺にも仕事があるんだぞ。目を話した隙に何かあったら」
「もぉ~~~~っ!」
アッシュ様とおれによる平行線の問答は、しばらくの間続いたのだった……。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う
まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。
新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!!
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
ハッピーエンド保証!
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。
※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。
自衛お願いします。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
無愛想な彼に可愛い婚約者ができたようなので潔く身を引いたら逆に執着されるようになりました
かるぼん
BL
もうまさにタイトル通りな内容です。
↓↓↓
無愛想な彼。
でもそれは、ほんとは主人公のことが好きすぎるあまり手も出せない顔も見れないという不器用なやつ、というよくあるやつです。
それで誤解されてしまい、別れを告げられたら本性現し執着まっしぐら。
「私から離れるなんて許さないよ」
見切り発車で書いたものなので、いろいろ細かい設定すっ飛ばしてます。
需要あるのかこれ、と思いつつ、とりあえず書いたところまでは投稿供養しておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる