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1. おれ、使い魔になる!?
1-3 生まれ変わっちゃえ!
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おれはメイドさんたちによって、広間に案内された。ここも洋館っぽい雰囲気……っていうか、異世界なんだから大体こんな感じかぁ。馴染みのない雰囲気だから、何となくそわそわしちゃう。
ここは、アッシュ様のお屋敷らしい。
お屋敷に住んでいるのはアッシュ様一人だけで、あとは家事担当のメイドさんたちが、離れに寝泊まりしているんだそうだ。おれはアッシュ様の『使い魔』として、ここで暮らすことになるらしいけど……うーん、何だかまだ実感が湧かない。っていうか。
(……好きにしろって、言われたけど)
突然異世界に喚び出されて、何をしろって言うのやら。『使い魔』だからって、ご主人様のお手伝いを命じられたわけでもないし。スマホもないから、時間を潰そうにも困るし。現状の癒やしは、今座っているふっかふかの大きなソファくらいのものだ。
ふよん、と尻尾もハテナを描く。
……。
「……え!? 尻尾!?」
見間違い……じゃない!?
人間には生えていないはずのパーツを、おれは思わず二度見した。きゅっと手で掴んでみると、腰の辺りが引っ張られるような感覚がする。
ほ、本物……!?
「ふふ、驚いていらっしゃいますね? 『使い魔』には、猫に似た耳と尻尾が生えているのが特徴なんですよ」
おれの姿を、メイドさんが微笑ましげに見守っている。
猫……ああ、なるほどねぇ。魔術師と使い魔は、魔女と魔女猫みたいなイメージか。
「せっかくですし、鏡をご覧になりますか? 元の世界の姿とは、少し変わっているかもしれませんし」
「あー、ありがとうございますっ」
メイドさんの一人に、手鏡を渡される。
猫耳と尻尾……成人男性にはちょっと荷が重くないかな。いやでも、案外似合ってるかもしれないし?
期待半分、不安半分の心境の中、鏡をおそるおそる覗き込んで……。
「!」
おれは、目を丸くした。
そこに映っていた『おれ』の姿は、すごく、すごく。
「……かぁいい……!」
ぴこん、と動く黒い猫耳。ふわふわの長い尻尾。
それに何より……顔もかわいい!
元の世界の姿と似てるけど、ちょっと童顔で中性的になった感じだ。
(これ、女の子の服でも余裕で着こなせちゃうんじゃ……!?)
男が頑張ってする『女装』じゃなくて、性別に捕らわれない『かぁいい着こなし』が……出来ちゃうんじゃないかな。
元の世界のおれは、どうしても『男の自分』が捨てきれなかった。
カフェのバイト中は、かわいい特製メイド服に、長い髪のウィッグで、着飾っていたけど――カフェの外では普通の男のふりをして生きていた。変な目で見られるのが怖くて。知り合いにバレてしまうのが恐ろしくて。
でも、今のおれは――異世界からやって来た、そもそもが異質な存在なわけで。
恐れるものも、失うものも……ないわけで?
思いきって、この世界でリスタート……してみちゃう?
とびきり『かぁいい』おれに、なってみちゃう!?
(うわ……なんか、わくわくするかも……!)
『異世界に召喚された』って聞いた時以上に、テンションが上がってる自分がいる。
そうだよ、生まれ変わっちゃおう。『桑山萌』でも『めぐぴ』でもなくて――新しい、使い魔の『メグム』としてのおれに!
「ね、メイドさん」
胸の高鳴りを抑えきれないまま、顔を上げてメイドさんに聞いてみる。
「そのメイド服って、余りとかある? あと、使っていい布とか、裁縫道具とか」
「……? ええ、探せばもちろん、あると思いますが……。どうなさるおつもりですか?」
そう尋ねられて、おれは――心からの笑顔を見せて言った。
「んふふ。おれもそれ、着てみたいなって!」
かわいいおれなら、絶対に着こなせる。
今のおれには、そんな絶対的な自信があった。
ここは、アッシュ様のお屋敷らしい。
お屋敷に住んでいるのはアッシュ様一人だけで、あとは家事担当のメイドさんたちが、離れに寝泊まりしているんだそうだ。おれはアッシュ様の『使い魔』として、ここで暮らすことになるらしいけど……うーん、何だかまだ実感が湧かない。っていうか。
(……好きにしろって、言われたけど)
突然異世界に喚び出されて、何をしろって言うのやら。『使い魔』だからって、ご主人様のお手伝いを命じられたわけでもないし。スマホもないから、時間を潰そうにも困るし。現状の癒やしは、今座っているふっかふかの大きなソファくらいのものだ。
ふよん、と尻尾もハテナを描く。
……。
「……え!? 尻尾!?」
見間違い……じゃない!?
人間には生えていないはずのパーツを、おれは思わず二度見した。きゅっと手で掴んでみると、腰の辺りが引っ張られるような感覚がする。
ほ、本物……!?
「ふふ、驚いていらっしゃいますね? 『使い魔』には、猫に似た耳と尻尾が生えているのが特徴なんですよ」
おれの姿を、メイドさんが微笑ましげに見守っている。
猫……ああ、なるほどねぇ。魔術師と使い魔は、魔女と魔女猫みたいなイメージか。
「せっかくですし、鏡をご覧になりますか? 元の世界の姿とは、少し変わっているかもしれませんし」
「あー、ありがとうございますっ」
メイドさんの一人に、手鏡を渡される。
猫耳と尻尾……成人男性にはちょっと荷が重くないかな。いやでも、案外似合ってるかもしれないし?
期待半分、不安半分の心境の中、鏡をおそるおそる覗き込んで……。
「!」
おれは、目を丸くした。
そこに映っていた『おれ』の姿は、すごく、すごく。
「……かぁいい……!」
ぴこん、と動く黒い猫耳。ふわふわの長い尻尾。
それに何より……顔もかわいい!
元の世界の姿と似てるけど、ちょっと童顔で中性的になった感じだ。
(これ、女の子の服でも余裕で着こなせちゃうんじゃ……!?)
男が頑張ってする『女装』じゃなくて、性別に捕らわれない『かぁいい着こなし』が……出来ちゃうんじゃないかな。
元の世界のおれは、どうしても『男の自分』が捨てきれなかった。
カフェのバイト中は、かわいい特製メイド服に、長い髪のウィッグで、着飾っていたけど――カフェの外では普通の男のふりをして生きていた。変な目で見られるのが怖くて。知り合いにバレてしまうのが恐ろしくて。
でも、今のおれは――異世界からやって来た、そもそもが異質な存在なわけで。
恐れるものも、失うものも……ないわけで?
思いきって、この世界でリスタート……してみちゃう?
とびきり『かぁいい』おれに、なってみちゃう!?
(うわ……なんか、わくわくするかも……!)
『異世界に召喚された』って聞いた時以上に、テンションが上がってる自分がいる。
そうだよ、生まれ変わっちゃおう。『桑山萌』でも『めぐぴ』でもなくて――新しい、使い魔の『メグム』としてのおれに!
「ね、メイドさん」
胸の高鳴りを抑えきれないまま、顔を上げてメイドさんに聞いてみる。
「そのメイド服って、余りとかある? あと、使っていい布とか、裁縫道具とか」
「……? ええ、探せばもちろん、あると思いますが……。どうなさるおつもりですか?」
そう尋ねられて、おれは――心からの笑顔を見せて言った。
「んふふ。おれもそれ、着てみたいなって!」
かわいいおれなら、絶対に着こなせる。
今のおれには、そんな絶対的な自信があった。
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