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第1章 エリック・ブラッドストーンの目覚め
1-4 ヒロイン(男)との出会い
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放課後の校舎の一角。
一人の生徒が、廊下の真ん中で立ち尽くしている。
ふんわりした淡い茶髪、星の意匠らしきペンダント。その特徴は――ゲームのヒロイン、ルイーズと一致していた。
(……あれが、ルイーズのこの世界での姿か)
俺は曲がり角の陰から、彼の様子を観察していた。
男だからか、ショートボブだった髪型はさらに短くなってるし、背も結構高いけど……雰囲気はルイーズとよく似ている。
名前は何て言うんだろうな。確かルイーズは新学期になってこの学校に転入してきたばかりだから、俺と接点がないんだ。同じ二年生ではあるけど、クラスが違うからな。
(よし……声をかけるぞ……!)
俺は張り切って、男ルイーズ(仮)のもとに向かう。
彼はどうやら、手にした紙に目を通しているようだった。どうやら校内の地図みたいだ。ゲームでマップを開いてる間って、周りから見たらこんな感じなのかな……。
「ちょっと、そこのきみ」
俺が声をかけると……男ルイーズは、くるりと俺の方を振り向いた。
薔薇色の丸い瞳が、きょとんと俺の姿を映している。
「どいてくれないか。通行の邪魔だ」
「あ、ごめんなさい~……」
「何をぼうっと突っ立っていたんだ? 用がないなら出ていきたまえ」
あ~~~~! 言葉の全てが悪役令嬢ナイズされてる~~~~~!!
そうだ、エリカってこういう奴なんだった。高慢で、いちいち言葉に棘があるっていうか……まあツンデレとも取ることができるし、そこが魅力の一つでもあるんだけど……。
しかしながら、初対面の男ルイーズにそれが伝わるわけがない。第一印象、大失敗だろ。
ともかく……俺は、こほん、と咳払いをして。
「……きみ、名前は?」
これで仕切り直せるのかは分からないが……。
そう尋ねれば、目の前の彼はまだ少し戸惑いを残しつつも、すんなりと答えてくれる。
「ルイス・アンバーです」
ほうほう、『ルイス』ね。やっぱり名前は似てるんだ。
男ルイーズ改めルイスは、俺の顔を見ながら首を傾げる。
「ええと、あなたは……」
「ふん。俺を知らないのか?」
俺は腕組みをすると、じっとルイスに視線を向けた。
「学年主席、エリック・ブラッドストーンとはこの俺のこと。よおく覚えておきたまえ」
……そうなんだよな。俺、実は勉強も魔術も一流なんだ。悪役令嬢エリカの高いプライドは、確かな実力によって裏打ちされてるってわけ……。
だからこそ、前世の俺の意思だけじゃ、言動を簡単に曲げることは出来ないんだろう。『エリック・ブラッドストーン』は、俺が目覚めるずっと前から、この世界で生きてきた人間なんだから。
「エリックくん……。ごめんなさい、知らなくて。よろしくお願いしますね~!」
「ふぅん?」
ルイス、強いぞ。俺のこんな振る舞いに対しても、物怖じする様子がない。
ゆるふわな雰囲気でありながら、この度胸。やっぱりルイーズそっくりだ。これが、皆に愛されるヒロインの力……!
こうなったら俺も、友好的に返したいところだが……。
「この俺に対して、その口の聞き方? 礼儀がなっていないようだな」
ダメだ! 何を言っても墓穴を掘るだけだこれ!
いや分かるんだよ、エリカがそう言うってことは。俺のことを知らない相手に馴れ馴れしく話しかけられたら、そりゃ機嫌を損ねるよなってことは。
でも俺は俺であって、エリカじゃないんだよ! もうちょっと自由に喋らせてくれよ!
(もしかして運命を捻じ曲げるの、想像以上に大変か……?)
そんなことを考え始めた時。
廊下の中央を陣取る俺たちに向かって、声がかかる。
「……エリック、あまり意地悪をしてはいけないよ」
一人の生徒が、廊下の真ん中で立ち尽くしている。
ふんわりした淡い茶髪、星の意匠らしきペンダント。その特徴は――ゲームのヒロイン、ルイーズと一致していた。
(……あれが、ルイーズのこの世界での姿か)
俺は曲がり角の陰から、彼の様子を観察していた。
男だからか、ショートボブだった髪型はさらに短くなってるし、背も結構高いけど……雰囲気はルイーズとよく似ている。
名前は何て言うんだろうな。確かルイーズは新学期になってこの学校に転入してきたばかりだから、俺と接点がないんだ。同じ二年生ではあるけど、クラスが違うからな。
(よし……声をかけるぞ……!)
俺は張り切って、男ルイーズ(仮)のもとに向かう。
彼はどうやら、手にした紙に目を通しているようだった。どうやら校内の地図みたいだ。ゲームでマップを開いてる間って、周りから見たらこんな感じなのかな……。
「ちょっと、そこのきみ」
俺が声をかけると……男ルイーズは、くるりと俺の方を振り向いた。
薔薇色の丸い瞳が、きょとんと俺の姿を映している。
「どいてくれないか。通行の邪魔だ」
「あ、ごめんなさい~……」
「何をぼうっと突っ立っていたんだ? 用がないなら出ていきたまえ」
あ~~~~! 言葉の全てが悪役令嬢ナイズされてる~~~~~!!
そうだ、エリカってこういう奴なんだった。高慢で、いちいち言葉に棘があるっていうか……まあツンデレとも取ることができるし、そこが魅力の一つでもあるんだけど……。
しかしながら、初対面の男ルイーズにそれが伝わるわけがない。第一印象、大失敗だろ。
ともかく……俺は、こほん、と咳払いをして。
「……きみ、名前は?」
これで仕切り直せるのかは分からないが……。
そう尋ねれば、目の前の彼はまだ少し戸惑いを残しつつも、すんなりと答えてくれる。
「ルイス・アンバーです」
ほうほう、『ルイス』ね。やっぱり名前は似てるんだ。
男ルイーズ改めルイスは、俺の顔を見ながら首を傾げる。
「ええと、あなたは……」
「ふん。俺を知らないのか?」
俺は腕組みをすると、じっとルイスに視線を向けた。
「学年主席、エリック・ブラッドストーンとはこの俺のこと。よおく覚えておきたまえ」
……そうなんだよな。俺、実は勉強も魔術も一流なんだ。悪役令嬢エリカの高いプライドは、確かな実力によって裏打ちされてるってわけ……。
だからこそ、前世の俺の意思だけじゃ、言動を簡単に曲げることは出来ないんだろう。『エリック・ブラッドストーン』は、俺が目覚めるずっと前から、この世界で生きてきた人間なんだから。
「エリックくん……。ごめんなさい、知らなくて。よろしくお願いしますね~!」
「ふぅん?」
ルイス、強いぞ。俺のこんな振る舞いに対しても、物怖じする様子がない。
ゆるふわな雰囲気でありながら、この度胸。やっぱりルイーズそっくりだ。これが、皆に愛されるヒロインの力……!
こうなったら俺も、友好的に返したいところだが……。
「この俺に対して、その口の聞き方? 礼儀がなっていないようだな」
ダメだ! 何を言っても墓穴を掘るだけだこれ!
いや分かるんだよ、エリカがそう言うってことは。俺のことを知らない相手に馴れ馴れしく話しかけられたら、そりゃ機嫌を損ねるよなってことは。
でも俺は俺であって、エリカじゃないんだよ! もうちょっと自由に喋らせてくれよ!
(もしかして運命を捻じ曲げるの、想像以上に大変か……?)
そんなことを考え始めた時。
廊下の中央を陣取る俺たちに向かって、声がかかる。
「……エリック、あまり意地悪をしてはいけないよ」
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