貴公子、淫獄に堕つ

終章 東下り

再宴※

　邸の裏手にある温泉いでゆに浸かりながら、真霧は浪月の広い胸にもたれかかっていた。

「浪月様が大変な法力の持ち主であることはわかっておりましたが、よもやあのようなことまでお出来になるとは……」

　浪月が、湯の中に沈めた手で真霧の肌を撫でながら、微笑う。

「仕置きにはならなかったがな」
「はい……」

　二人の浪月に嬲られ、乱れ切ってしまったことを思い出し、真霧の頬に朱が差す。

　都を離れるにあたり、浪月が用意した新たな住処は、かつてこの地に赴任していた、とある親王が建てた山荘に手を入れたものだった。
　広すぎも狭すぎもしないそこは住みやすく、山と一体となった庭は大変に風情がある。
　すぐ裏に温泉いでゆが湧いているのもとても気に入っている。

　従者は、浪月と真霧それぞれの昔からの馴染みの者たち数人が付き従って来てくれた。
　都にいる時より、人数はずっと少なくなったが、十分に事足りている。

　苦労はさせぬと浪月が約した通り、暮らしに困ることはなかった。
　親王である浪月は所領からの貢納があり、また浪月の法力を頼みにくる者たちからの礼の品々も豊富だった。

　真霧は及ばずながら浪月の手伝いをする中で、都での貴族としての生き方より、目の前にいる民を救える今の暮らしの方が性に合っていることに気がついた。
　だからこそ、此度も息子のために泣きつく男を放っておけなかったのだが。


「ところで、先程文が届いていたのだが、魔斗羅教の次の奉納祭の場所は、九儺止くなど島に決まったそうだ」

　浪月の言葉に、真霧ははっとして頭を上げた。

「九儺止……。影親かげちか様の遠流おんるの地ではありませぬか」
「そうだ。宮司も神子も不慣れゆえ、手助けに来てくれと頼まれたのだが────引き受けるか？」
「え……」

　どきりと鼓動が音を立てた。

「それは……、私もまた神子としてのお役目を果たすということでしょうか……」
「そうなるな」

（またあの祭りを……）

　百人を超える男たちに抱かれ、数多の淫妖と交わった、あの狂乱の宴を再び味わうだなんて。

　ぞくりと背筋が震えた。
　想像しただけで、体が煮えたように熱くなる。
　胸の先がつんと尖り、びくびくと腰が震え始める。

　そんな真霧を見て浪月が口の端を上げ、淫らに尖った乳首を指で弾いた。

「あんっ」
「聞くまでもなかったな」

　そして真霧を膝の上に抱き寄せると、膨れた胸粒を吸った。

「ああ……っ」

　真霧は浪月の頭を抱えるように縋りながら、胸の先から溢れ出す快感に悶えた。
　揺らめく腰を浪月が引き下ろし、まだ柔らかい蕾に、疲れを知らない怒張を突き立てた。

「あああ……ッ」

　熱い湯とともにずぶずぶと浪月の物が真霧の中に押し入ってくる。
　抱きすくめられながら揺さぶられ、真霧は腹の奥から巻き起こる悦楽に吐息をこぼした。
　浪月が、勃ち上がり始めた真霧の花芯を握った。

「やあ……んっ」

　揉むように扱きながら、手の甲で下腹を撫でる。

「またここに、神子の徴を刻んでやろう。楽しみにしていろ」
「はい……────」

　ぞくぞくと下腹を引き攣らせ、真霧は従順に頷いた。




（完）