貴公子、淫獄に堕つ

桃山夜舟

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妻問

初夜※

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 月の光を浴びながら、口付けを交わす。
 浪月ろうげつは時折口を離しては盃を呷り、含んだ酒を真霧まきりに呑ませた。
 飲み込みきれない酒が真霧の喉を伝い、うちぎの合わせ目から胸へ滴り落ちる。
 それを唇で追いかけながら、浪月が襟を開く。

「あ……」

 露わになった胸は、滴り落ちた酒のせいばかりではなく濡れている。
 ぷっくりと赤く立ち上がった胸の先を、浪月は口に含んだ。

「あ、あんっ」

 じっくり舌で転がされながら、優しく吸われ、真霧はたまらず浪月の頭を抱えた。
 もっととねだるようなはしたない仕草は浪月を喜ばせたようで、益々愛しげに吸い上げられた。

「あ、あ、ぁ……、浪月様ぁ……っ」

 左右の胸を交互に吸われ、真霧はうっとりと甘い声を溢す。
 たっぷりと胸の蜜を味わい、そこだけで数度真霧を甘く極めさせると、浪月は真霧を抱え上げ、几帳の後ろに運んだ。

「真霧……」

 そっとしとねに横たえられ、髪を掻き上げられて、名を呼ばれながら耳朶を噛まれた。

「んんっ」

 耳元で囁かれるだけでもぞくぞくと肌が粟立ってしまうのに、感じやすい耳朶を甘く嬲られ、耳穴に舌を差し入れられて、びくびくとわななきながら褥に爪を立てる。

「あ……っ」

 浪月の唇が首筋に滑り、脈の上をきつく吸い上げた。
 きっと痕が付いただろう。
 まっさらな肌に印を刻まれたのは初めてのことだ。
 以前は、帝の痕を上から辿っただけだった。
 おそらくは、他の場所に印を残して、真霧が帝に咎められることがないように。

(でももういいのだ。私は浪月様のものになるのだから────)

 喜びが込み上げてきて、真霧は浪月の首に腕を回した。

「もっと……、私が浪月様の物だという証をもっと付けてくださいませ……!」
「望みとあらばいくらでも」

 浪月が微笑い、真霧の衣を脱がしながら、全身に唇の雨を降らせる。
 白くしなやかな肢体が全て曝け出される頃には、赤い証は十を超えていた。
 自らも衣を脱いだ浪月は、真霧を見下ろし、感嘆の声を漏らした。

「そなたはまことに美しいな」
「そんな……浪月様こそ……」

 鍛え抜かれた肉体と、そして既に腹につくほど反り返った屹立を見上げ、真霧もまたうっとりと吐息を零した。

「どうか私にも浪月様をお与えください」

 身を起こし、猛り切った浪月自身に口を寄せる。
 懸命に唇を開いて、長大なそれを口に含んだ。
 全部は含みきれないものの、根元は手で、先の方は唇でしごきながら舌を絡ませれば、先端の穴から先走りが溢れ出す。

(ああ、浪月様の味だ……)

 久しぶりに味わう愛しい男の味に頭がくらくらとしてくる。

「ふ……っ」

 頭上で浪月が熱い息を吐くのが聞こえる。

(感じて下さっている……)

 そう思うと嬉しくて、腹の奥がきゅんきゅんと疼く。


「私にもそなたをかわいがらせてくれ」

 浪月の上に上下逆に跨らされ、互いの脚の間の物を頬張る。
 この上なく淫らな体勢を取らされ、恥ずかしくてたまらないのに、それ以上に興奮している。

「んん……ッ」

 浪月が真霧の花芯を咥えながら、後孔に指を挿し入れた。
 妻問つまどいのつもりだと言っていただけあり、香油を用意していたらしい。
 ぬめりをまとった指は難なく真霧の中を暴いていく。

「ん、ふぅ…、う、ん、ぁ、は……っ」

 真霧の体を知り尽くした浪月に、中と外から的確に攻められてはもうだめだった。
 気持ちがよすぎて、浪月の上に崩れ落ちそうになったところで、抱き抱えられ、褥に背を預けさせられた。
 膝を割られ、物欲しげにひくつく窄まりに、真霧の唾液でじゅうぶんに濡れた剛直が押し当てられる。

「真霧、そなたは私のものだ」

 少し掠れた、艶めいた声で囁かれ、そして奥までこじ開けられた。

「あぁあー…────ッ!」

 甘い衝撃に真霧はのけぞった。
 弾みで逃げを打つ体を引き寄せられた。
 腕の中に閉じ込められて深く穿たれ、それだけで達してしまう。

「あぁっ、はあっ、あ、いい……っ、浪月……さ、ま……っ」
「真霧……っ」

 汗ばむ裸身を重ね合わせ、強く弱く揺すられる。
 絶頂の波にたゆたいながら、名を呼び合う。
 互いの思いを明かして睦み合える初めての悦びを、噛み締める。

 浪月が、真霧の腹をそっと撫でた。

「ん……っ」
「そういえば、鬼に孕まされそうになっていたな。私の子も産むか」

 浪月は面白そうに薄く咲っている。
 戯れ言だ。
 男の真霧が子を成せるはずがない。

(でも……浪月様の法力を持ってすればできるのかもしれない……)

 そんな考えが頭に浮かんだ途端、きゅうっと強く下腹が収縮した。
 体が勝手に浪月の子種を欲しがって、媚肉がうねっているのが自分でもわかる。

「は、あ……っ、産みまする……、どうか中に……っ、んんっ、子種をくださいませ……っ」

 気づけば、熱に浮かされたように口走っていた。
 刹那、浪月の双眸が、獰猛に光った。

「ひあぁっ」

 どちゅんっと強く腰を叩きつけられた。
 一突きごとに体が浮き上がるほどの激しさで、最も感じる深奥を抉りながら突き込まれる。

「ひんッ、んっ、あっ、やあ……っ。激しいの、いいっ、ああっ、すごい……っ、あぁ、ああんッ」
「く……っ、……しっかり孕むのだぞ」

 耳にそう吹き込まれるや否や、奥深くに切先を嵌め込まれ、熱い精を注がれた。

「は、あ、アア……────ッ」

 愛しい男の種を腹の奥に撒かれ、真霧はめくるめくような法悦に酔いしれた。
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