貴公子、淫獄に堕つ

桃山夜舟

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裏祭

百鬼夜行※

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 蔓の拘束がほどけ、真霧まきりはどさりと崩れ落ちた。
 極めたまま鎮まらない体は、びくびくと痙攣している。
 開きっぱなしの唇からは、浅い息が絶え間なく吐き出される。

「喜べ、今宵は我らだけではないぞ」

 鬼の言葉に、ぐったりと閉じていた瞼を持ち上げた。
 見れば、黒い炎に縁取られた闇がゆらめき、中から重い獣のような足音がいくつも聞こえてくる。

 やがて闇の中から現れたのは、見上げるほどに大きな異形の獣たちだった。
 三つ目の犬や、三つ首の大蛇、二足歩行の牛や馬の鬼────
 それぞれどこか奇怪でかつ巨大なむつくつけき獣たちだ。

「こんな……、これでは……、百鬼夜行のよう……」

 目を瞠り、呆然と呟いた真霧を、妖獣たちが取り囲んだ。





「あんんんっ……っ、く、うん……っ」

 四つ足の獣の姿勢で、三つ目の犬の長大な物を受け入れていた。
 のしかかられている背中はふさふさとした獣毛にくすぐられていて、獣と交わる禁忌を犯しているという事実を突きつけてくる。
 おぞましいはずなのに、たまらなく感じてしまい、一突きされるごとに甘く達している。

 結合部からはじゅぶじゅぶと淫らな水音が聞こえる。
 犬が射精しながら腰を打ちつけているからだ。
 もう四半刻は精を注ぎ込まれながら、肉壺を掻き回され続けている。

「や……っ、あ…、もう……っ、おなか、いっぱい……っ、も、お、出さないでぇ……っ、あ、あぁっ」

 過ぎた快感に逃げを打とうとしても、瘤のように膨らんだ肉茎の根元が嵌まり込んでいて抜けず、なす術もなく喘ぐことしかできない。

 淫らにくねる体には大蛇が巻きつき、三つある口はそれぞれ、胸と下肢を嬲っていた。
 二股に別れた細い舌でちろちろと乳首を舐められるだけでもたまらないのに、花芯はすっぽりと咥え込まれ、舌を絡められつつ、搾り取るように吸い上げられている。

「く……ぁっ、うう…ん…っ」

 大蛇の冷たい鱗がぞろりと肌を這い、太い胴体で締め上げられた。
 苦痛すれすれの快感にぞくぞくと背筋がわななく。
 体のあちこちを同時に嬲られて、湧き上がる愉悦にただ感じ入り、悶え喘ぐ。

「犬の射精は長くてかなわんな」
「口を使わせてもらおう」

 牛頭ごず馬頭めずは口が聞けるようで、口々に言い合うと、淫液を滴らせる怒張を真霧の唇に押し付けてきた。

「んぅ……っ、あ、んむ……っ」

 どちらも長大でずっしりと重量があり、猛々しく筋が浮き出ていた。
 その逞しさとむっと立ち昇る雄の匂いにくらくらと目眩を覚えながら、それらを交互に舐めしゃぶった。
 口を精一杯開いて喉の奥までほうばり、もう片方は手を使って扱いてやれば、獣頭たちは嬉しげに声を上げた。
 
「おお、よい心持ちじゃ。人の子の口は狭くて具合がよいのう」
「んくぅ……、ふ……っ、うう……っ」
「かように小さな口では飲みきれまい。そのかわゆらしい顔にかけてやろう」

 咥えていた馬頭の陰茎がぐぐっと膨れ上がった。
 次の瞬間、引き抜かれ、そして熱く滾った白濁が顔に浴びせかけられた。

「っ、あ、ん……」

 その熱さにびくびくと身を震わせていると、今度は牛頭が漲りを真霧の頬に擦り付け、精を放つ。
 濃厚な妖の精を鼻先に浴び、くらくらと目眩を覚える。

 全身を淫獣たちに嬲られ、犯されている。
 この上なくおぞましい目に合っているのに、紋様はひくひくと脈打ち、胸や花芯からはとめどなく蜜が溢れ出す。
 異形の獣に蹂躙されることに、被虐の悦びを感じているのだ。





 長い犬の射精が終わると、他の淫獣たちと代わる代わる交わった。
 牛頭や馬頭には逞しい剛直で腹の奥まで突き上げられ、蛇にはびっしりと突起の生えた二本の陰茎を代わる代わる挿入されて、真霧は泣いて感じ入った。

「あ、あっ、いい…っ、いいっ、もっと……っ」

 嬌声を上げて縋り付く真霧に獣たちは悦び、腹の中にたっぷりと精を注ぎ込む。
 真霧は汗を振り絞り、全身を震わせて、極め続けていた。
 高みに昇った切り、もうずっと降りてくることができない。


 全ての獣の精を受け止め切った後も、絶頂の波にわななき続ける真霧の顎を捉え、赤鬼が尋ねた。
 
「どうじゃ、飢えは満たされたか」
「────……いいえ」

 真霧は艶やかに赤い唇をなめかしく舌で湿らせると、細くしなやかな脚を持ち上げ、誘うように開いて見せた。

「まだ足りませぬ……」
「……そなたはまことに極上じゃ」

 鬼は笑い、真霧の足を掴み寄せると、疲れを知らない剛直を突き立てた。

「あ──……っ、はあぁっ、もっと……っ、奥まできて……っ」

 淫らに啜り泣く真霧に他の淫妖が群がり集まる。
 空が白むまで、妖たちと交わり続けた。





 向かいの山の端が赤く染まり、夜明けが訪れると、妖たちは帰って行った。
 意識を失いかけた真霧を抱き上げ、浪月ろうげつが告げた。

「これより三日三晩かけて直会なおらいを行う。神子にはその間に百人の信徒と交わってもらう。全てが終わった時に、奉納の儀は成る」

 ────ああ、では祭はまだ終わらないのだ。

 浪月の腕の中で、真霧は我知らずうっとりと微笑んでいた。

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