貴公子、淫獄に堕つ

桃山夜舟

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宵祭

湯殿※

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 気がつくと、湯に浸かっていた。
 はじめに湯浴みをした湯殿の岩風呂だ。

「気がつかれましたか」

 影親かげちかの武者の声だった。
 一人は力の抜けた真霧まきりの体を後ろから抱き抱えていて、もう一人は正面から真霧の顔を覗き込んでいる。
 彼らは湯帷子ゆかたびらを身につけているが、真霧は裸のままだ。

「目を覚まされる気配がなかったので、我らでお体を清めさせていただいておりました」

 正面の男が慇懃無礼にそう述べ、すくった湯をかけながら真霧の胸を撫でた。

「ん……」

 ひくりと体が震え、意識が鮮明になっていく。

「あ……、私、は……」

 宵祭の儀だと言われ、あの美しい宮司に抱かれた。
 そればかりか、何人もの信徒たちや、この者たちにまで。
 蘇る狂乱の交わりの記憶に、目眩を覚えた。
 あれはまことにうつつのできごとだったのだろうか。
 もしや、淫らな夢を見させられていたのでは────
 
 だが、ふと湯の中の我が身を見下ろすと、紋様が目に入った。

(確か、神子の徴だとか言っていた……)

 これが刻まれているということは、あれはやはり現のことだったのだ。
 思えば、あの香や酒に心を惑わす効き目があったのだろう。

(そうでなければ、あんな────)

 己の痴態を思い出すと、凄まじい羞恥が込み上げてくる。
 真霧は湯の中をいざって離れると、二人を睨み据えた。

「こんなことをさせられるとは聞いていない!そなたらは祭があのようなものであると知っていたのか」
「定かには」
「ですが、魔斗羅神は交合を尊ぶ神。自ずと想像はつきましょう」

 滔々と返され、怒りの矛先を失う。
 それは、つまり、何も知らず、気づかなかった真霧が物知らずで浅慮だという意味だ。

 ────知っていれば断っただろうか。
 答えは否だ。
 都一の権力者の命を断ることなど、できるはずもない。

 唇を噛み、うなだれる。
 右大臣の呪詛の証を得るまで、帰ることはできない。
 つまり、この先も淫らな祭に身を捧げねばならないということだ。

 下腹に浮かぶ徴にそっと触れてみた。
 途端に甘い痺れが走り、おののいて手を離す。
 腹の奥がほんのりと熱い。
 祭の間、何人もの男達に身体中を嬲られ、腹の奥を穢されて────

 思い出した瞬間、ぞくりと官能が蘇った。
 は、と密かに熱い息をこぼしていると、ぐっと腰を掴まれた。

「な、なんだ、ひ……っ」

 ぐいと引き寄せられたかと思うと、双丘のあわいに指を差し入れられた。

「あ、何を……っ」
「途中で目を覚まされましたので、中はまだ清めておりませぬ」
「やっ、よ、せ…っ」

 中にたっぷりと出された白濁を指で掻き出される。
 指先で内壁を擦られる感覚に、背筋がぞくぞくとわななく。

「んんっ、やめ……っ、湯、が、入って……っ」
「じっとなさいませ。ああ、それにしてもたくさん出されましたな。どろどろだ」
「あ、んぅ……っ、やぁ……っ」
「奥の方は届きませぬな」

 しつこく中を掻き回され、息も絶え絶えになったところで、指を引き抜かれた。
 ほっとしたのも束の間、まだ柔らかく開いていたそこに背後から硬い物を押し当てられた。

「あ…っ、ああぁ────ッ!」

 膝に乗せられ、猛った剛直で貫かれた。
 初めて暴かれたばかりの最奥をずうんと突き上げられ途端、鋭い快感にびりびりと腰が痺れて、真霧は息を詰めて背を震わせた。

「や……ぁ……っ、くうぅ……んっ」
「そのように締め付けられては、掻き出して差し上げれませぬぞ」

 もう一人が胸の先に舌を這わせた。

「ここも、すっかり赤く腫れ上がって、おいたわしい」
「あ、んんっ、そこ、やあ……っ」

 ちろちろと舐められては、緩急をつけて吸い上げられて、濡れた黒髪を振り乱して身悶える。

「ん…っ、んぅ……ああぁっ」
「胸をいじられるのがずいぶんとお好きなようですね、よく締まる」
「そ、んな、こと……っ、やっ、あああ……ッ」

 胸を嬲られながら、腹の奥深く繰り返し抉られ、真霧はあっけなく達した。
 一晩かけて絞り上げられた花芯からは僅かな薄い蜜が湯に撒かれただけだったが、腹の奥はびくびくと蠕動し、収縮が止まらない。
 内壁の蠢きに促され、男も熱い飛沫を叩きつける。

「かように締め付けて……、また中に出してしまいましたぞ」
「では、次は俺が掻き出して差し上げましょう」

 湯の中に頽れかけた真霧をもう一人が抱き寄せ、向かい合わせに串刺しにした。

「あっ、あっああ……っ」

 先程とはまった角度で突き上げられ、新たな愉悦が迸る。
 
 嵐のように水面が揺れている。
 揺すられながら、胸の先をきつく吸われ、痺れるような官能に身を震わせる。
 絶頂はすぐにまたやってきた。
 絡みつく柔肉に引き絞られ、男がうそぶく。

「あとで掻き出して差し上げますから、このまま中に出してよろしいですね」
「や……ああ~~────ッ!」 

 昨夜から何度目かもわからない男の精を、真霧は腹の奥で貪欲に啜り上げた。

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