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第2章 少年期 剣術・魔術成長編
第22話 幸せ
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これは遡ること三十時間ほど前……
「ねぇ、グラリス。こんなところでなにをするの?」
「まぁまぁ、もうちょっと待って」
俺はリューネと共にケントルムから家に帰る途中、寄り道をしていた。
お父さんは時間はあると言っときながら「家で心配されたら困るからな」と、言って先に帰ってしまった。
全く、親として子どもを野放しにするのはどうなんだ?
とも思ったが、さっきのケントルムでの一件で少し、僕を信用してくれたのだろうか。
まぁ僕は負けたんだけどね!!
「よし……ここだ!」
「うわぁ……!」
俺が寄り道すると選んだところはここだ。
そこら中に小さく、たくさんの花が咲いているこの場所。
ここは俺が転移魔法を失敗した時に見つけた自然の花畑だ。
「ここなら綺麗なお花が沢山あるし、何かしらできるんじゃないかな?」
「……すごいわ! グラリスちょっと見てきてもいい!?」
「うん。いいよ」
リューネは楽しそうに花畑へと走っていった。
無邪気なリューネを見ると、やっぱり女の子だなぁと、親のような目でリューネを見ていた。
「ところでグラリスー? このお花で何か考えでもあるの?」
ちょっと離れたところから花を見ながら俺に話しかけるリューネ。
俺はそのリューネの元に近付き、一緒にしゃがんで花を見つめた。
「うーん、まぁ……お花屋さんくらい豪華なものは出来ないし……かと言って花束みたいにするのもあんまり迫力がないよなぁ……ってことで何も考えはありません!」
俺が正直に言うとリューネは「ばか」っと言って、頭をペシッと叩いてきた。
「そうね……あ! いいこと思いついたわ! 家にヘアゴム用のゴムってあったかしら」
「確かお母さんが着けてるからあると思うけど……何に使うんだ?」
「エイミーさん最近髪が伸びてきてたから、私たちでお花で装飾したヘアゴムをあげるの! どお!?」
「……うん……いいね!! じゃ各自好きなお花1つずつ見つけて持って帰ろう!」
こうして俺たちは思い思いのお花を見つけて家に帰った。
家に帰って俺たちはご飯を食べ、お母さんから使ってないヘアゴムを2つもらい、急いで自分たちの部屋に向かった。
「なんか……どっと疲れたわね……」
「そうだな……」
今日はいろんなことがあった。
花束を買いにケントルムに行き、そこでモンスターと出会い、リューネは変な男たちにさらわれてしまい、俺も戦ったが敗北。
その時、アコイスさんが助けてくれて、その後お父さんとアコイスさんが喧嘩して……あー、もうすごい疲れた!
「てか、リューネはこのお花をどうやってくっつけるか考えてたんですか?」
「……ごめん」
静かに謝るリューネに対して俺は、予想どうりの展開に少しニヤニヤしてしまっていた。
ふっふっふっ。ここは俺が一歩上手だったな。
「こんなこともあろうかと……これを準備しました!」
俺が「じゃーん!」と言って見せたのは、とても細い糸と針だ。
「これを使ってゴムにくくりつけましょう。一回くっついたら僕の魔法で何とかするから」
俺はそう言ってリューネに手本を見せた。
「この針めちゃくちゃ細いので注意してね」
この針は俺が、裁縫用に形を変え、更に細くしヘアゴムにまでも使えるようにした代物だ。
こっちの世界では魔法で色々できる。針くらいの小さな物だったら変形だってすることも出来ちゃうのだ。
「そしたらまず、この針に見えないと思うけど小さい穴があるから、そこに、この糸を入れます」
俺は神経を集中させ、スルッとものの五秒で針に糸を通した。
「そうしたらこんな感じに端っこを止めて、花とゴムを用意して、裏からゴムと花を貫通させるように針を指していきます」
俺はゴムの内側から設置した花に向けて針を通し、その周りをグルグルと糸で固定した。
「糸を切ったら後はこんな感じに……透過魔法と腐敗遅延魔法をかければ……こんな感じかな!」
俺は完成したヘアゴムを、静かに説明を聞いていたリューネに見せつけた。
「凄いけど……グラリスいつそんな魔法使えるようになったの?」
「えーっとね、透過魔法は僕の夢だったから色々調べて頑張ったんだけど、無機物にしか使えないらしくて、しかも、範囲はほんとにヘアゴムくらいしか無理でガッカリだったよ……腐敗遅延魔法に関しては、昔エイミーがご飯を作ってくれたんだけど、どうにか魔法で美味しくならないかなと頑張っていたらたまたま使えるようになっちゃったんだ。まぁ味は変わらずだったけどね」
長々と話しているとリューネは「そう……」とちょっと引いた目でこちらを見ていた。
「まぁいいわ。私もやってみるわ。やり方はもう完璧よ」
そう言って針に糸を通そうとするリューネであったが……
「痛っ!」
リューネは親指に針を指してしまった。
「ほら行っただろ気をつけろって」
「……分かってたわよ! ちょっと失敗しちゃっただけよ!」
親指を吸いながら俺に言い返してきた。
だが、まだ少し何か言いたげに俺を見つめて来るリューネ。
「……いれて……ください……」
リューネは針と糸を俺に差し出してきた。
ほほーう? もしや不器用だな?
「それはダメだよリューネ。自分で作らなきゃ。エイミーへのプレゼントなんだから」
俺は差し出してきた手を押し戻した。
「わ、分かったわよ……時間かかっても……待っててよね……」
「あぁ待つよ。そんな俺もせっかちじゃない」
──2時間後──
「ねぇ! 見て! グラリスってば! やっと入ったわ!」
「お、おう……おめでとう……」
長いよ! さすがに長すぎだよ!! もう途中からやってあげようかとも思っちゃったよ!!
嬉しそうにしていたリューネも糸が入った瞬間どっと疲れが来たのか、「……早く作っちゃいましょ……」と言って、ヘアゴムに針を刺し始めた。
そして───
「よし完成だ!」
俺たちは約三時間かけ、二つのオリジナルヘアゴムを作ることに成功したのだ!
「はぁ……ちょっと疲れたわグラリス……」
それから手紙を書いたって言う流れだ。
──────
「はい。僕たちが作ったヘアゴムです! 最近エイミーの髪が伸びてきて少し邪魔そうにしていたので……気に入ったら使ってみてください!」
それを聞いたエイミーは速攻二つのヘアゴムを黒く美しい髪の毛に着けた。
「……気に入らないことなんてありません!!」
エイミーは嬉しそうに俺たちに言った。
「エイミーさん。ヘアゴムは一つずつ使うのよ?」
リューネが微笑みながらそう言うと、「あ、す、すいません……つい嬉しくて……」と恥ずかしそうに頬をポリポリと搔いた。
「改めて……エイミー。二十歳のお誕生日おめでとう!」
俺たちは再びエイミーに飛びついた。
「これからもよろしくね、エイミー」
「これからもよろしくお願いします、エイミーさん」
エイミーは俺たちを強く抱き返す。
「……はい! こちらこそよろしくお願いします!」
エイミーの顔は涙ではなく、満面の笑みであった。
「も~う! 私は幸せ者です~!」
幸せ。そう、幸せ。
こうやって家族がいて、毎日目標があって、可愛い友達もいて。
あぁ、これが幸せなんだ。
この幸せが、ずっと続けばいいのにな……
そんなこと思ってから数年後。
最悪の出来事が起きた。
──────
ここは、魔王城跡地。
「おい。魔力は今どのくらい溜まった?」
銀色の髪の毛に豪勢な服を着た一人の男と、その配下のような男が一人ここにいた。
「ディボル様。恐らく後、百人ほどの魔力で、魔王へと進化されると思われます」
「そうか……はっはっはっ! もうすぐだ……もうすぐで……!」
最大で最悪な計画が進み続けていた。
「ねぇ、グラリス。こんなところでなにをするの?」
「まぁまぁ、もうちょっと待って」
俺はリューネと共にケントルムから家に帰る途中、寄り道をしていた。
お父さんは時間はあると言っときながら「家で心配されたら困るからな」と、言って先に帰ってしまった。
全く、親として子どもを野放しにするのはどうなんだ?
とも思ったが、さっきのケントルムでの一件で少し、僕を信用してくれたのだろうか。
まぁ僕は負けたんだけどね!!
「よし……ここだ!」
「うわぁ……!」
俺が寄り道すると選んだところはここだ。
そこら中に小さく、たくさんの花が咲いているこの場所。
ここは俺が転移魔法を失敗した時に見つけた自然の花畑だ。
「ここなら綺麗なお花が沢山あるし、何かしらできるんじゃないかな?」
「……すごいわ! グラリスちょっと見てきてもいい!?」
「うん。いいよ」
リューネは楽しそうに花畑へと走っていった。
無邪気なリューネを見ると、やっぱり女の子だなぁと、親のような目でリューネを見ていた。
「ところでグラリスー? このお花で何か考えでもあるの?」
ちょっと離れたところから花を見ながら俺に話しかけるリューネ。
俺はそのリューネの元に近付き、一緒にしゃがんで花を見つめた。
「うーん、まぁ……お花屋さんくらい豪華なものは出来ないし……かと言って花束みたいにするのもあんまり迫力がないよなぁ……ってことで何も考えはありません!」
俺が正直に言うとリューネは「ばか」っと言って、頭をペシッと叩いてきた。
「そうね……あ! いいこと思いついたわ! 家にヘアゴム用のゴムってあったかしら」
「確かお母さんが着けてるからあると思うけど……何に使うんだ?」
「エイミーさん最近髪が伸びてきてたから、私たちでお花で装飾したヘアゴムをあげるの! どお!?」
「……うん……いいね!! じゃ各自好きなお花1つずつ見つけて持って帰ろう!」
こうして俺たちは思い思いのお花を見つけて家に帰った。
家に帰って俺たちはご飯を食べ、お母さんから使ってないヘアゴムを2つもらい、急いで自分たちの部屋に向かった。
「なんか……どっと疲れたわね……」
「そうだな……」
今日はいろんなことがあった。
花束を買いにケントルムに行き、そこでモンスターと出会い、リューネは変な男たちにさらわれてしまい、俺も戦ったが敗北。
その時、アコイスさんが助けてくれて、その後お父さんとアコイスさんが喧嘩して……あー、もうすごい疲れた!
「てか、リューネはこのお花をどうやってくっつけるか考えてたんですか?」
「……ごめん」
静かに謝るリューネに対して俺は、予想どうりの展開に少しニヤニヤしてしまっていた。
ふっふっふっ。ここは俺が一歩上手だったな。
「こんなこともあろうかと……これを準備しました!」
俺が「じゃーん!」と言って見せたのは、とても細い糸と針だ。
「これを使ってゴムにくくりつけましょう。一回くっついたら僕の魔法で何とかするから」
俺はそう言ってリューネに手本を見せた。
「この針めちゃくちゃ細いので注意してね」
この針は俺が、裁縫用に形を変え、更に細くしヘアゴムにまでも使えるようにした代物だ。
こっちの世界では魔法で色々できる。針くらいの小さな物だったら変形だってすることも出来ちゃうのだ。
「そしたらまず、この針に見えないと思うけど小さい穴があるから、そこに、この糸を入れます」
俺は神経を集中させ、スルッとものの五秒で針に糸を通した。
「そうしたらこんな感じに端っこを止めて、花とゴムを用意して、裏からゴムと花を貫通させるように針を指していきます」
俺はゴムの内側から設置した花に向けて針を通し、その周りをグルグルと糸で固定した。
「糸を切ったら後はこんな感じに……透過魔法と腐敗遅延魔法をかければ……こんな感じかな!」
俺は完成したヘアゴムを、静かに説明を聞いていたリューネに見せつけた。
「凄いけど……グラリスいつそんな魔法使えるようになったの?」
「えーっとね、透過魔法は僕の夢だったから色々調べて頑張ったんだけど、無機物にしか使えないらしくて、しかも、範囲はほんとにヘアゴムくらいしか無理でガッカリだったよ……腐敗遅延魔法に関しては、昔エイミーがご飯を作ってくれたんだけど、どうにか魔法で美味しくならないかなと頑張っていたらたまたま使えるようになっちゃったんだ。まぁ味は変わらずだったけどね」
長々と話しているとリューネは「そう……」とちょっと引いた目でこちらを見ていた。
「まぁいいわ。私もやってみるわ。やり方はもう完璧よ」
そう言って針に糸を通そうとするリューネであったが……
「痛っ!」
リューネは親指に針を指してしまった。
「ほら行っただろ気をつけろって」
「……分かってたわよ! ちょっと失敗しちゃっただけよ!」
親指を吸いながら俺に言い返してきた。
だが、まだ少し何か言いたげに俺を見つめて来るリューネ。
「……いれて……ください……」
リューネは針と糸を俺に差し出してきた。
ほほーう? もしや不器用だな?
「それはダメだよリューネ。自分で作らなきゃ。エイミーへのプレゼントなんだから」
俺は差し出してきた手を押し戻した。
「わ、分かったわよ……時間かかっても……待っててよね……」
「あぁ待つよ。そんな俺もせっかちじゃない」
──2時間後──
「ねぇ! 見て! グラリスってば! やっと入ったわ!」
「お、おう……おめでとう……」
長いよ! さすがに長すぎだよ!! もう途中からやってあげようかとも思っちゃったよ!!
嬉しそうにしていたリューネも糸が入った瞬間どっと疲れが来たのか、「……早く作っちゃいましょ……」と言って、ヘアゴムに針を刺し始めた。
そして───
「よし完成だ!」
俺たちは約三時間かけ、二つのオリジナルヘアゴムを作ることに成功したのだ!
「はぁ……ちょっと疲れたわグラリス……」
それから手紙を書いたって言う流れだ。
──────
「はい。僕たちが作ったヘアゴムです! 最近エイミーの髪が伸びてきて少し邪魔そうにしていたので……気に入ったら使ってみてください!」
それを聞いたエイミーは速攻二つのヘアゴムを黒く美しい髪の毛に着けた。
「……気に入らないことなんてありません!!」
エイミーは嬉しそうに俺たちに言った。
「エイミーさん。ヘアゴムは一つずつ使うのよ?」
リューネが微笑みながらそう言うと、「あ、す、すいません……つい嬉しくて……」と恥ずかしそうに頬をポリポリと搔いた。
「改めて……エイミー。二十歳のお誕生日おめでとう!」
俺たちは再びエイミーに飛びついた。
「これからもよろしくね、エイミー」
「これからもよろしくお願いします、エイミーさん」
エイミーは俺たちを強く抱き返す。
「……はい! こちらこそよろしくお願いします!」
エイミーの顔は涙ではなく、満面の笑みであった。
「も~う! 私は幸せ者です~!」
幸せ。そう、幸せ。
こうやって家族がいて、毎日目標があって、可愛い友達もいて。
あぁ、これが幸せなんだ。
この幸せが、ずっと続けばいいのにな……
そんなこと思ってから数年後。
最悪の出来事が起きた。
──────
ここは、魔王城跡地。
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銀色の髪の毛に豪勢な服を着た一人の男と、その配下のような男が一人ここにいた。
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