地獄▶︎転生 もう地獄を見たくない俺はこっちの世界で最強を目指します

橋本 悠

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第1章 幼年期

第7話 初めての魔法

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 翌日。俺とエイミーは昼ごはんを食べたあと、家の庭に出てきていた。

「ところでエイミーの魔力属性は何なのですか?」

 この四年間。エイミーとは魔法や魔力の話は全くと言っていいほどして来なかった。特にあの一件があってからはわざと避けて通ってきた。A級魔法使いのエイミーがあそこまで暗い顔をしたのはあれが最初で最後であった。

 でも昨日の俺の要望も聞いてくれたし意外と大丈夫なのかなー?  といった心持ちで聞いてみることにした。

「確かにグラリス様には見せたこと無かったですよね。では……いいでしょう!  見せて差し上げましょう!」

 エイミーは元気よくそう言ってくれた。大丈夫そうだ。良かった良かった。

 エイミーは一歩前に出て、俺に「あそこの木を見ててください」と言ってかなり遠くの木を指さしてそう伝えてきた。

 ……あれをか?  数十メートルは離れている木に何をするのだろうか。

「エイミーあそこの木って……あそこの木でいいんだよね?」「はい。何かおかしいことでも言いましたか?」「い、いいえ。言ってません」「では!」

 そう言ってエイミーは、右手を遠く離れた木に向かって伸ばした。

 ゴロゴロ.....

 すると、その木の上部に黒みがかった雲が発生した。いや……あれは……雲ではない。雷雲だ!!

「エイミーあそこの木って……あそこの木でいいんだよね?」「はい。何かおかしいことでも言いましたか?」「い、いいえ。言ってません」「では!」

 そう言ってエイミーは、右手を遠く離れた木に向かって伸ばした。

 ゴロゴロ.....

 すると、その木の上部に黒みがかった雲が発生した。いや……あれは……雲ではない。雷雲だ!!

 それに気が付いた頃にはもう、エイミーはなにか詠唱を始めていた。

「神よ。その力を奮いこの地に雷《いかずち》を!  神雷《ボークグロム》!」

 その詠唱が終わったその時……

 ビリビリ……ドゴォォォン!!!!!

 雷雲は瞬く間に電気を纏い、それは大きな雷となって遠く離れた木に落ちた。その衝撃で周りの木に止まっていた鳥は一斉にバサッ!  と飛び立った。
 雷が落ちると雷雲はサーっと消えていった。

 ……かっけぇ!!!

「エイミー……かっこいい!!」
 心に秘めた言葉は直ぐに言語化された。

「いやぁ~それほどでも……ありますよね~」
 と照れた様子で頭を掻くエイミー。

 でも本当に凄かった。小さい手から放たれたこの魔法は俺には一生真似出来ないんじゃないかと思うくらい素晴らしいものだった。

「あ、質問に答えるの忘れてましたね!  私の魔力属性は【雷属性】です!」

 そう言ってエイミーはバチバチっと少量の雷を指先から出した。

「さっき見せたのは私の全力ですけど本当はもう少し小回りもきく優秀な属性なんですよ!」

 雷属性か……。ギャップ凄いな!!  またもやこれがギャップ萌え……。

 しかし今の見た感じ破壊力はピカイチと言ってもいいのではないかと思った。エイミーが雷属性の魔法を使えるとなると教えて貰えば俺もできるのかもしれない。

 そう思って俺はエイミーに「俺も雷出したい!  教えてください!」と申し出ると「私にできることならなんでもお申し付け下さい!」とまたまたこころよく了承してくれた。

 3時間後……

「エイミー!!  全く魔法が使えません!!」

 何故だ!!  なんでなんだ!!  魔法が全く使えない!!  静電気の一つや二つも出やしない!!  魔法が使えなかったら全属性だったとしても意味ないじゃないか!!

「グラリス様焦っちゃダメです!  誰でも初めはコツを掴めず魔力の出力ができないことが多いいのです。だから大丈夫ですよ!」

 と励まされるが実はこの言葉今日で五回目!  いやぁ五回も聞くと本当に焦らなくて大丈夫だって思ってきちゃったよ……ってなるかーー!!!

「で、でもエイミー……。かれこれ3時間静電気レベルの魔法も使えてないのですが……」

 凹む俺を見たエイミーは慌てた様子で

「お、恐らく雷属性の魔法が少し難しかったのかもしれません!  グラリス様は色んな魔力をお持ちですので、少なくとも善し悪しがあるんだと思います!  だ、だから一度他の魔法を試してみましょう!」

 エイミー、フォローありがとう。もう分かったよ俺に魔法の実力がないのは。はぁ、宝の持ち腐れを初めて感じる瞬間だなぁ……。

 まぁエイミーが提案してくれた事だし簡単なものから試してみるとするか。

「じゃぁ……一番簡単な魔法ってなんですか?  エイミー」

「よく聞くのは【風属性】は習得はかなり楽って聞いたことあります!  試してみましょう……って思ったんですけど、グラリス様は色んな魔力をお持ちですから……どうやって使い分けするのでしょうか」

 確かに。俺はまだ魔法とやらを使ったことがないから考えてもいなかったが、魔法にも使い方があるのだろうか。

「エイミーは魔法を使う時どんな感じで使っているのですか?」

「うーん。難しいですけど、なんか身体の中に引き出しがあるイメージで、そこから黄色く光る魔力を引き出して、手に集中させてばーん!  みたいな感じですかね」

 難しい。とても。
 その引き出しのイメージで行くのであれば俺はその引き出しから使いたい魔力を選んで放出する必要があるのか……もっと難しそうだ。

「と、とりあえず風属性やってみます」

 俺は右手をエイミーの方に向け、「風が来たら教えてください!」と伝えた目を瞑った。
 考えろ考えろ感じろ感じろ。身体の中の引き出しを……

 身体に意識を集中させるとあるイメージが浮かび上がった。
 引き出しだ。引き出しがある!
 俺はその中から白く光る【風属性】の魔力を引き出し、その魔力を伸ばした右手に集中させた。すると……

 ぶわっ!!

「きゃ!」

 エイミーの悲鳴を聞いてすかさず目を開けると俺が出したのか分からないが強風でエイミーのスカートがかなり大きくぶわっとめくれ上がっていた。……水色だ。ありよりのあり!

 っとそんなことはどうでもいい……訳では無いが俺はすぐにエイミーの方へと走って近付いた。

「エイミー!  今の風って……」

「はい!  グラリス様の魔力でした!  しかも私と同じくらいの……いや!  それ以上の魔力量を感じました!」

 俺は嬉しかった。めちゃくちゃ嬉しかった。飛び上がりそうなくらい嬉しかった。

「やりました!  エイミー!」

「はい!  やりましたね!  グラリス様!」

 俺はエイミーと大きくハイタッチをした。
 できる。俺にもできる。魔法ってやつが!!
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