地獄▶︎転生 もう地獄を見たくない俺はこっちの世界で最強を目指します

橋本 悠

文字の大きさ
上 下
6 / 29
第1章 幼年期

番外編 バルコット家のメイド エイミー

しおりを挟む
 私はバルコット家のメイドのエイミーです。
 この家にはある時ダンジョンで拾ったという子どもを引き取り、グラリス様と名付け、家族として一緒に暮らしてきました。

 私はなんだかグラリス様が本当に子どもには見えないのです。なんか私より大人っぽいというか……まぁ私が子どもっぽいだけですかね?

 不安の吐け口はいつもグラリス様。いつも私の言葉を理解しているかのような顔をして聞いてくださいます。

 グラリス様と一緒に暮らし、成長して、あーんしてあげたり、初めてのおねしょを掃除したり、一緒に散歩したりと私はグラリス様が大好きなのです!

 そして今日もグラリス様とお散歩に来ています。

「エイミー、はっぱ、ある」

 そう言ったグラリス様は走って葉っぱの方へ行ってしまいました。そんなところも可愛くて好きなのです。

 でも私の今の使命はグラリス様を危険からお守りすること!  直ぐについて行きますよ!
 なんて思った矢先、

 ドテッ

 グラリス様が転んでしまいました!  すぐに向かわなければ!

「グラリス様!  大丈夫ですか!」
 と、私は走って追いかけたのですが……

 ドテッ!

 グラリス様よりも盛大に転んでしまいました……。恥ずかしい……。これじゃぁ守れるものも守れませんよ……。

「いてててて……グラリス様はご無事でしょうか……」

 自分の心配なんかよりグラリス様の安否を確認しなければ!  と思い聞いたのですが、

「だいじょうぶ!  えいみぃ、だいじょうぶ?」

 思ったよりも大丈夫そうで私を心配する余裕もあるみたいですぅ~……。

「……は、はい!  私は大丈夫です!」

 私は負けじとすぐに立ち上がり、スカートに付いた砂を払ってグラリス様の所へと向かいました。
 恐らくですが膝擦りむいて出血もしてそうです……でも我慢我慢です!  

 何故かわかりませんが、スカートを覗かれてる気持ちになりましたが、多分気のせいでしょう。
 私はグラリス様の手を取り、立ち上がらせました。

「えいみぃ、けが、してる」

 バレてしまいました~……。どこまで出来た子なんですかグラリス様!  そんなとこも好きです!

 私は「大丈夫です!」と言いながらグラリス様の頭をくしゃくしゃと撫でました。

 するとびっくりです!  私がなにか話してましたがそんなのはもうどうでも良くて!  グラリス様が!  私の怪我を!  治癒魔法で!  治してくれたのです!

「……グラリス様……。やっぱりあなたは天才です!!  帰ったらすぐ報告しましょう!!」

 なんだか嫌な思い出が蘇っちゃ居そうになりましたが今はグラリス様のことで頭がいっぱいなのでそんなことどうでも良くなりました。

──────

 家に帰り、さっきあったことをラミリス様とグラディウス様にご報告をして、後日グラディウス様が魔法をお見せになってくれることになりました!
 実はこれは私も少しばかり楽しみなのです。

 そしてグラディウス様の休日の日。その日がやってきました!

 グラディウス様は大きな火の玉を作ってみてくださり、私はずっとそれに見とれていました。

 私は思わず拍手をしてしまっていました。それに合わせてグラリス様もぺちぺちと可愛い拍手をしていました。

「ちゆ、ぞくせい、なに?」

 そんなことをグラリス様が聞き始めたのです。こればかりは本当に天才だと思いました。賢いとかのレベルじゃありません!  天才です!

 でも私は無属性魔法は使えません。もうグラリス様に抜かれてしまいそうです。
 そんなときグラディウス様は私の方に話題振ってくださいました。

「ちなみにだがエイミーはA級魔法使いなんだぞ。な、エイミー」

 そうなんです。実は私A級魔法使いなんです。S級じゃないのかよ!  って言うツッコミはお断りです。A級でも凄いんですよ?  魔法使いの上位5パーセントくらいしかいないって噂ですからね!

 ……まぁ、でも私は無属性魔法使えないので……。

「私……A級ですけど……無属性魔法何も使えないんです……」

 私は素直にお教えしました。でも少し恥ずかしいかったのでグラリス様の目線まで状態を落としました。
 お2人は「そうだったのか!?」と驚いた様子で。まぁ無理もありません。

「無属性魔法を使えないA級なんてただのお荷物ですよ。だから冒険者じゃなくてメイドになったんです」

 なんでか分かりませんが次から次へと言葉が出てきます。それと一緒に魔法学生だった頃の嫌な思い出も出てきました。

「脳筋お荷物なんかと誰がペア組むかよ」「なんかエイミーさんって……少し変わってますよね」「エイミー。そろそろ無属性魔法は使えるようになったのか?  ははははは」

 自然と目線が下に向きます。もうやめてください。思い出したくありません。

 その時でした。2つの小さな何かが私のほっぺたをロックしました。そうしてその2つの何かは私の顔をグラリス様の方へと向かせてきました。

 その時に気が付きました。2つの小さな何かはグラリス様の手だったのだと。その瞬間、小さかった何かはとても大きく、優しい手に感じました。

 グラリス様は私と目を合わせてにひひと可愛く笑って見せてくれました。

 全ての感情が溢れだしそうになりました。泣きそう。でも泣いちゃダメ。

 ーー惜しくも一滴涙はこぼれてしまいました。

 グラリス様は気が付いたでしょうか。私は誤魔化すようににひひと笑い返して上げました。

「なんかすみません!  暗くしてしまって!  では私は掃除の時間ですので」

 涙が溢れ出てしまう前に私はバルコット家に背を向けて逃げるように家の中へと向かいました。

「エイミー!  これからもよろしく頼むぞ!」「エイミー。いつもありがとね!」

 やめてください……もっと涙が溢れてきちゃいますから……。

 涙で視界が悪くなって転けた話は恥ずかしいので割愛します。

 グラリス様。あなたはやっぱり私よりも大人っぽく見えます。そんなグラリス様が私は好きです。

 この好きは人としてか、それとも異性としてか。
 そんなこと分かりません。まだ幼い彼がとっても大きく見えるのです。まるで同い年の青年とお話してるみたいです。

 でも、ひとつ言えるのは今私はとても幸せです。

 バルコット家の皆さん私は皆さんが大好きです!!
 転んだ後私たちは4人顔を合わせて大爆笑しました。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

錆びた剣(鈴木さん)と少年

へたまろ
ファンタジー
鈴木は気が付いたら剣だった。 誰にも気づかれず何十年……いや、何百年土の中に。 そこに、偶然通りかかった不運な少年ニコに拾われて、異世界で諸国漫遊の旅に。 剣になった鈴木が、気弱なニコに憑依してあれこれする話です。 そして、鈴木はなんと! 斬った相手の血からスキルを習得する魔剣だった。 チートキタコレ! いや、錆びた鉄のような剣ですが ちょっとアレな性格で、愉快な鈴木。 不幸な生い立ちで、対人恐怖症発症中のニコ。 凸凹コンビの珍道中。 お楽しみください。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...