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第2章

第29話 タラント国へ行こう

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 ゴスイ魔法学校の試験当日から時は3ヶ月ほど遡るある日のこと。

「バッド~あなた宛に手紙が来てるわよ~」

 お母さんのこの言葉で起きた俺は、眠い目をこすりながらリビングへと向かった。

 テーブルの上に置かれた一通の手紙にはバッド様へと書かれており、俺は何も考えず封を開けて中を確かめた。

 普段自分に手紙なんてくれる人はいない。あぁ……いない。ん?  じゃあ誰だ……?  ……もしかして、もしかして!!!

 ケイト……!  じゃない。誰だこれは。

 明らかにケイトの字ではない手紙を静かに読み始めた。


 シンフ国の長、ケルビットを助けてくれたお礼の品を是非、直接渡したい。少し話もしてみたいと思っているからな。
 この手紙を開封してから1ヶ月の間、タラントの王宮にて待っている。
 来れないは無しだ!

 タラント国 国王 ダルドより


「タラント国……ケルビッド……あ、あぁ。あれか」

 シンフ国とはケイトの住む小さなあの国のことであり、ケルビッドとはその国の国王。ケイトの父親の事だ。

 確かスペルさんが金貨百枚貰えるとか言ってたよな?

「あら、これってこの前お話貰ってたやつかしら」

「うん。多分そうだと思う」

 にしてもこの文章はなんだ。雑すぎるし特に最後の文。来れないは無しだと?  どれだけ俺暇だと思われてるんだよ!!

 ……まぁ、修行しかしてないけど。

「どうしよう。確かタラント国までは半月くらいかかったはずよ。一人で行けるかしら……」

 タラント国は俺の住むフスト町のあるセラト大陸の端の方にある大きな国だ。ここからだと歩いて3つほどの国を抜けたところにある。

「確かに……お母さん達昨日からロングクエストだって言ってたよね?」

「そうなの……最低でも1ヶ月はかかりそうだわ」

「うーん……さすがに行った方がいいよね」

「まぁ……相手は国王様だからねぇ……」

「……そうだ。ちょっとストローグさんに相談してみる。多分あの人は暇だろうから」

 俺はストローグさんにタラント国に行くのを手伝ってくれないか相談することにした。

 ☆☆☆

「あ、そういうことなら全然俺は大丈夫だぞ。お前の母さんにもこの前心配かけさせちまったからな。出発はいつでもいいのか?」

「はい。1ヶ月の間にこいって言われたので」

「まぁ、修行もあるしパパっと行って帰って来た方が良さそうだな。じゃあ……3日後、どうだ?」

「はい。大丈夫です。なんかめんどくさいこと巻き込んじゃってすいません」

「いやいや、いいってことよ。その代わり、いつも以上に今日からの3日間は集中して修行に取り組むように」

「はい!  任せてください!」

 こうして、俺はストローグさんとタラント国に行くことになった。

 ☆☆☆

 それから3日が経ち。

「うちの子をよろしくお願いします」

「はい。俺がいれば安心ですから。調べたところ特に危険な道とかは無かったのでバッドでも大丈夫だと思います」

「ほんとですか……バッド、ストローグさんに迷惑かけちゃいけないからね」

「うん、分かってるよ。それじゃあ、行ってきます!」

 お母さんとお父さんに別れを告げ、人生二週目初めての遠出をすることになった。

「ちょっとワクワクしますね」

「そうか?  普通の旅行と何ら変わらねぇだろ」

「旅行ってワクワクするじゃないですか!」

「そりゃあ……たしかにな」

 それから約2週間、3つの国を超え、タラント国に到着した。

「いやぁ、特になんのハプニングもありませんでしたね」

「まぁ、なんもないに超したことは無いだろ。にしても広い国だなここは。どっちに王宮があるんだ?」

「ちょっと街の人に聞いてみますか」

 右も左も分からないまま俺とストローグさんは歩き出した。大きな通りを歩いていると、商店街のような所に繋がり、多くの人で賑わっていた。

「うわ、ちょっと人多すぎますね……人見知り出ちゃいますよ」

「あはは!  こういう時は弱そうなやつに話しかければいいんだよ」

「弱そうとか言わないの師匠」

「すまんすまん。まぁ、軽くそこら辺の人たちに……」

 その時だった。

「待ってください!  シルフド様!」

「こっちこっち!  あはは!」

 前から大きな声を上げて走る男と楽しそうに逃げる少女がいた。少女と言っても今の俺と同い年か一個下位の年齢だろう。

「捕まえときます?」

「まぁ無視でもいいんじゃねぇのか?  楽しそうだし」

「確かに……」

「あはは!  まったくはいつも元気そうだな!」

「「ダルド様!?!?」」

 近くにいた買い物客の言葉に反応した俺とストローグさんは急いで少女の前に立ちはだかった。

「ちょ……だ、誰ですか……!」

「少しお話聞かせてくれるかな?」

「あぁ。少しだ少し」

 動揺する国王の子と呼ばれていた少女。沈黙が続き、走っていた男性がやっと追いついた。

「はぁ……はぁ……ありがとうございます……!  ほら、シルフド様。お家に戻りますよ」

「はぁ……今日はここまでかぁ……」

 残念そうにする少女を横目に、俺は肩で息をする男性に質問をなげかけた。

「あの……自分バッドって言うんですけど、ダルド様に呼ばれてここまで来ました。それで……」

 どこに王宮があるか、それを聞こうとした時だった。

「あなたがバッドだったの!!??」

「……!!!」

 初対面の少女が俺の名前を聞いた瞬間、全力で俺の胸にダイブしてきた。

 なんだよ……この展開は!!
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