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第2章

第26話 リュナさん

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 リュナさんの家へと向かっている途中のこと。

「そういえば自分、ゴブリンと戦ったんですけど……多分、いや、90パーセントくらいで知性がありました」

 何気なく話題を提示した俺だったのだが……

「ゴブリンに知性が!?!?」

 ストローグさんは足を止め、顔をグイッ、とこちらに近づけてきた。

「は、はい……ちょ、近いです……。てか、そんなに驚くことなんですか?」

 正直ここまでストローグさんが驚くとは思っていなかった。

 俺は生前、ありとあらゆる知性のあるモンスターと対峙したことがあった。

 だから、あまりおかしいとは思わなかった。ここら辺では出ないと言われていたから少し驚いた位だった。

「そうだぞ!  基本モンスターは知性を持たない。知性を持つのは上級、いや、それ以上のモンスター達だけだ。……下級のゴブリンが持ってるとは到底思えねぇよ」

 そんなものなのか?  中央都市とは考え方が少し違うのだろうか。ゴスイを卒業出来たら、そっちの方のダンジョンにでもストローグさんを連れて行ってみよう。

 俺とストローグさんはまた歩き出した。

「ここだな。リュナさんの家は」

 そう言ってストローグさんはドアをコンコン、と2回ノックし、「ストローグです」と、家の中に伝えた。

 その瞬間、家の中からドタバタと音が鳴り、リュナさんが家から飛び出てきた。

「ストローグさん!!  あ、あとバッド君!!  本当にありがとうございました!!」

 外に出てきた途端、土下座をするリュナさんの肩をストローグさんがポンッ、と叩く。

「いえいえ。当たり前のことですよ。シュナちゃんの様態はどうなんですか?」

「さっき一瞬目を覚ましたんですけど……バッド君の心配だけしてまた眠っちゃいました。怪我は太ももの傷だけだったのでチョウさんに。あ、洋服洗って返します……すいません!!」

「あ、全然大丈夫ですよ。シュナさんが無事で良かったです」

 慌ただしいリュナさんにそう返事をすると、凄い形相でこちらに近づいてきた。

「え、えっと……どうかしました……か?」

「……この御恩、どうお返しすればいいのか……ストローグさんから聞きました……バッド君がシュナを見つけて助けてくれたって……」

「い、いや!  ストローグさんが居なかったら俺も危なかったですし……」

「もし良かったら……」

「……?」

「うちの娘を妻に向かい入れてくれませんか!?!?」

「つ、つま!?!?  え、い、いや、ち、ちょっと……」

 いきなり過ぎて驚きを隠せなかった俺を見てストローグさんが話し出した。

「ははははは!!  ごめんなさいねリュナさん。こいつ、好きな女の子いるんですよ」

「あ……そうなんですかごめんなさい!」

「ちょ、す、好きとかじゃないですから!!」

 反射的にストローグさんをポコポコ叩く。

「シュナちゃんも結構可愛いんじゃないのか……?」

「そういうこと言わない……!」

 コソコソ話す俺とストローグさん。そんな中、リュナさんが真面目そうに口を開いた。

「でも、本当にありがとうございました」

 そう言って深く頭を下げ、お礼を言ったリュナさん。
 
 良かった。本当に良かった。助けられて。

「そういえば、リュカ君は大丈夫なんですか?」

「はい。今はシュナの面倒見てくれてます」

「そうなんですね。じゃ、今日はここら辺で帰らせて貰います」

「あ、今度シュナからもお礼を言わせなくちゃだから……また来てくれますか?  バッド君は服の件もありますし」

 ストローグさんがこちらをチラッ、と見つめる。

「はい。もちろんです。歳も近いので仲良くさせてください」

「ありがとうございます!」

 こうして、長かったモンスター討伐も幕を閉じた。

☆☆☆

「うちの子がお世話になってたなんて……バッドの母のイナスと申します。……本当にすいません!」

「あ、いえいえ、俺は全然大丈夫ですし、今回の件は俺が誘っちゃったんで……」

 今、我が家に来ている。そして、ストローグさんがお母さん達に今日の出来事について話している。

「おい……バッド。俺との関係言ってなかったのかよ……」

「はい……そういえば言ってませんでした……」

 コソコソと会話をする俺とストローグさん。目の前には驚いた顔をした両親がいた。

 確かに言ってなかったな……ケイトのことは言ってたけど、そういえばストローグさんの事は全く言ったこと無かった。

「でも、無事でよかったです。ストローグさんも」

「すいませんでした。これからはもっと注意深く接しようと思います。それではここら辺で」

 そう言ってから軽く挨拶をし、ストローグさんは家へと戻って行った。

「バッド……」

「はい……」

「この前のケイトちゃんの家の件もそうだけど、たまたまあなたは無事で居られている。怪我はしてるけどね。でも……でもね」

 お母さんの表情が真剣に変わった。俺は静かに聞く。

「もう、命に関わるような危ないことは極力さけなさい」

「……分かりました」

 確かにそうだ。俺は勘違いしていた。
 今、俺はまだ14歳。まだまだ子どもだ。心は23歳だけどな。

 お母さん達にも、命に関わるようなことはやめてって言いたいけど。やめておこう。

 あとは、もう、危ないことはやめよう。人に心配かけることを。

☆☆☆

 数日後。

「え、えっと……バッドって言います」

「ほら、シュナ。挨拶とお礼」

「しゅ、シュナ……です。この前は……ありがとうございま……した……」

 母親譲りの綺麗な青い髪の毛の彼女。なんだかとても想像とは違った性格の女の子であった。
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