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第2章
第23話 親子
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「シュナ」
お母さんの顔はいつにも増して真面目で、不穏な空気を放っていた。
「リュナ……さん?」
俺は咄嗟に声に出してしまったが、親子の耳には届いていなかった。
シュナの表情も自然と曇り始めた。
やばいかもしれない。俺のあの軽率な会話が……やばいかもしれない!
「あなたがやりたいことしなさい」
「……え?」
シュナは驚き、呆気に取られていた。
「だから、働くとかどうとかじゃなくて、今あなたがしたいことは何なの?」
「でも……でも……!」
その言葉を聞いたリュナさんはシュナの方へと近づき、頭に手をポンっ、と置いた。
「お母さんはね。あなたがしたいことして笑っている姿を見るのが……一番幸せなの」
そう言い放ったリュナさんはニコッ、と笑いシュナの頭を撫でた。
数秒沈黙が続く。シュナの鼻をすする音だけが場に響く。
「……ゴスイ魔法学校に……いぎ……だい……」
それを聞いた瞬間、リュナさんは泣いているシュナをギュッ、と抱き寄せた。
「シュナ。言ってくれてありがとう。あなたいつもしたい事全然言わないから……」
「ううん。違うの。お母さんに負担かけられないと思って……リュカもいるし……」
「私の中ではあなたもまだまだ子ども。もっと甘えたりわがまま言ったりしていいんだよ」
「うん……!」
俺はただ、静かに見守ることしか出来なかった。でも、良かった。この親子の仲が悪くならなくて。良い方向に進んだみたいで。
しばらくして落ち着いたシュナはお母さんの腕の中から抜け出し、俺の方へと来た。
「なんか……ごめんね」
「あ、いやいや。全然大丈夫だよ」
「まだ行けるって確定した訳じゃないけど……お金の話とかもきっとあるし……でも、もし良かったら……あと二ヶ月間……テスト勉強付き合ってくれる?」
俺は満面の笑みを見せ、右手でグッドマークを作った。
もし彼女が受かったら生前とは違う未来が広がってくる。
これがいい方向へと転ぶか悪い方向へと転ぶかはやってみないと分からない。
でも、今はただ。彼女の思いを踏みにじらないように。
──────
後日。シュナ宅にて勉強会が開かれた。
「あー……分からないよう……」
「大丈夫。2ヶ月もあればきっと合格点までは乗れるから」
俺は彼女にお金のことは聞かなかった。恐らく、解決はしたのだろう。
お父さんも悪い人ではなさそうだし、出稼ぎから戻ってきたらある程度生活は潤うはずだしな。
そして、ゴスイの入試方式。魔法科のテストは全部で3つだ。
1つ目に筆記試験。2つ目に実技試験。最後に魔力試験だ。
1つ目の筆記試験は魔法やモンスター、冒険者になった時の基本事項などの問題が出る。
生前の記憶を甦らせ、最近は復習しているおかげで、恐らく俺は大丈夫だろう。テストの内容知ってるしな。チートだチート。
そして2つ目の実技試験。これは、あまり魔法科合格には関与して無いと思われる。
では、なぜやるのか。それは、魔法科から落ちた時、滑り止めの剣士科に入れるかどうかがここで決まる。
まぁ、魔法科落ちたら剣士科蹴る人が多く、浪人かもう諦める人が大半だ。
と言っても、この学校を受けるのにまず、金貨10枚ほど必要になってくる。
合格してしまえば、3年間で100金貨と他の学校に比べたら安い学費となっているが、毎年金貨10枚かけて受けて落ちる、となるとかなり金銭的にも精神的にもきつくなってくる。
ゴスイはやはり名門。名が通ってるだけはある。
最後に魔力試験。これが合格に大いに関わってくるだろう。
これは単純で魔力総量を調べるだけの試験だ。受験者側は何もせず、変な石を触るだけでOKだ。
あんなので魔力量分かっちまうって思うとすげぇなって思う。
と、まぁこんな感じがゴスイの魔法科の入試だ。
「あ、私言ってなかったんだけど……今年もし落ちちゃったらゴスイは諦めることにする」
「そっか……じゃ、尚更気合い入れて一緒に準備していこう!」
「……うん!」
こうして残りの二ヶ月間。修行と勉強を両立し、文武両道で頑張った。
シュナは思いのほか容量が良く、直ぐにテスト範囲をある程度覚えた。
俺は1年必死に勉強して合格点ギリギリだったんだけどな……これが差ってやつか……
そして、2ヵ月後。暑さも和らぎ、過ごしやすくなった頃。
「ここが……ゴスイ……!」
今日。俺とシュナはゴスイ魔法学校魔法科の受験日当日である。
「緊張……してる?」
「そ、そりゃ……! 私こんなおっきい街来たことないし……でも……でも。頑張らなきゃ」
「うん。頑張ろう。この2ヶ月は無駄じゃない」
俺とシュナはゴスイ魔法学校の門をくぐった。
ゴスイ魔法学校は、俺の家から約1時間程歩いた所にある中央都市セントレルという大きな街の中央にあり、その敷地面積は恐らく、シュナの住んでいる村2つ分位はあるだろう。
キャンパス内には寮もあり、かなり遠くから受験して入学する者もいる。
それくらいここは有名で凄い学校なのだ。
そして、俺はここの2度目の受験をする。
お母さんから貰ったお守りを握り、シュナと入試へと向かった。
俺はもう、間違えない。もう一度入学して……未来を変える!
お母さんの顔はいつにも増して真面目で、不穏な空気を放っていた。
「リュナ……さん?」
俺は咄嗟に声に出してしまったが、親子の耳には届いていなかった。
シュナの表情も自然と曇り始めた。
やばいかもしれない。俺のあの軽率な会話が……やばいかもしれない!
「あなたがやりたいことしなさい」
「……え?」
シュナは驚き、呆気に取られていた。
「だから、働くとかどうとかじゃなくて、今あなたがしたいことは何なの?」
「でも……でも……!」
その言葉を聞いたリュナさんはシュナの方へと近づき、頭に手をポンっ、と置いた。
「お母さんはね。あなたがしたいことして笑っている姿を見るのが……一番幸せなの」
そう言い放ったリュナさんはニコッ、と笑いシュナの頭を撫でた。
数秒沈黙が続く。シュナの鼻をすする音だけが場に響く。
「……ゴスイ魔法学校に……いぎ……だい……」
それを聞いた瞬間、リュナさんは泣いているシュナをギュッ、と抱き寄せた。
「シュナ。言ってくれてありがとう。あなたいつもしたい事全然言わないから……」
「ううん。違うの。お母さんに負担かけられないと思って……リュカもいるし……」
「私の中ではあなたもまだまだ子ども。もっと甘えたりわがまま言ったりしていいんだよ」
「うん……!」
俺はただ、静かに見守ることしか出来なかった。でも、良かった。この親子の仲が悪くならなくて。良い方向に進んだみたいで。
しばらくして落ち着いたシュナはお母さんの腕の中から抜け出し、俺の方へと来た。
「なんか……ごめんね」
「あ、いやいや。全然大丈夫だよ」
「まだ行けるって確定した訳じゃないけど……お金の話とかもきっとあるし……でも、もし良かったら……あと二ヶ月間……テスト勉強付き合ってくれる?」
俺は満面の笑みを見せ、右手でグッドマークを作った。
もし彼女が受かったら生前とは違う未来が広がってくる。
これがいい方向へと転ぶか悪い方向へと転ぶかはやってみないと分からない。
でも、今はただ。彼女の思いを踏みにじらないように。
──────
後日。シュナ宅にて勉強会が開かれた。
「あー……分からないよう……」
「大丈夫。2ヶ月もあればきっと合格点までは乗れるから」
俺は彼女にお金のことは聞かなかった。恐らく、解決はしたのだろう。
お父さんも悪い人ではなさそうだし、出稼ぎから戻ってきたらある程度生活は潤うはずだしな。
そして、ゴスイの入試方式。魔法科のテストは全部で3つだ。
1つ目に筆記試験。2つ目に実技試験。最後に魔力試験だ。
1つ目の筆記試験は魔法やモンスター、冒険者になった時の基本事項などの問題が出る。
生前の記憶を甦らせ、最近は復習しているおかげで、恐らく俺は大丈夫だろう。テストの内容知ってるしな。チートだチート。
そして2つ目の実技試験。これは、あまり魔法科合格には関与して無いと思われる。
では、なぜやるのか。それは、魔法科から落ちた時、滑り止めの剣士科に入れるかどうかがここで決まる。
まぁ、魔法科落ちたら剣士科蹴る人が多く、浪人かもう諦める人が大半だ。
と言っても、この学校を受けるのにまず、金貨10枚ほど必要になってくる。
合格してしまえば、3年間で100金貨と他の学校に比べたら安い学費となっているが、毎年金貨10枚かけて受けて落ちる、となるとかなり金銭的にも精神的にもきつくなってくる。
ゴスイはやはり名門。名が通ってるだけはある。
最後に魔力試験。これが合格に大いに関わってくるだろう。
これは単純で魔力総量を調べるだけの試験だ。受験者側は何もせず、変な石を触るだけでOKだ。
あんなので魔力量分かっちまうって思うとすげぇなって思う。
と、まぁこんな感じがゴスイの魔法科の入試だ。
「あ、私言ってなかったんだけど……今年もし落ちちゃったらゴスイは諦めることにする」
「そっか……じゃ、尚更気合い入れて一緒に準備していこう!」
「……うん!」
こうして残りの二ヶ月間。修行と勉強を両立し、文武両道で頑張った。
シュナは思いのほか容量が良く、直ぐにテスト範囲をある程度覚えた。
俺は1年必死に勉強して合格点ギリギリだったんだけどな……これが差ってやつか……
そして、2ヵ月後。暑さも和らぎ、過ごしやすくなった頃。
「ここが……ゴスイ……!」
今日。俺とシュナはゴスイ魔法学校魔法科の受験日当日である。
「緊張……してる?」
「そ、そりゃ……! 私こんなおっきい街来たことないし……でも……でも。頑張らなきゃ」
「うん。頑張ろう。この2ヶ月は無駄じゃない」
俺とシュナはゴスイ魔法学校の門をくぐった。
ゴスイ魔法学校は、俺の家から約1時間程歩いた所にある中央都市セントレルという大きな街の中央にあり、その敷地面積は恐らく、シュナの住んでいる村2つ分位はあるだろう。
キャンパス内には寮もあり、かなり遠くから受験して入学する者もいる。
それくらいここは有名で凄い学校なのだ。
そして、俺はここの2度目の受験をする。
お母さんから貰ったお守りを握り、シュナと入試へと向かった。
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