上 下
21 / 49
第2章

第19話 バッドVSゴブリン

しおりを挟む
「……あった!」

 俺は分かれ道にたどり着いた。

「はぁ……はぁ……こっちから来たから……こっち!」

 すぐさま選ばれなかった方の道へと走り出した。

 体力は既に限界。もし、今この状況でモンスターなんかに出くわしたら……なんて考えてる暇か!

 助けなきゃ……助けなきゃ!  信じてもらったんだ!!

 俺はひたすら走り続けた。

「……あれは?」

 薄暗い道の先になにかの影が見えた。

 ……人?  にしては2つあるけど……

 その時俺は思い出した。ストローグさんの話を。

 人型の……モンスター!?

 さらに近づくと招待は明らかになった。
 そこには縄で縛られた女性と緑の肌の人型モンスターがいた。正しくそれはゴブリンであった。

 女性は上半身の服をビリビリにされており、下着姿であった。

「助けて!!」

 女性の太ももには、切りつけられた跡があり、かなり出血していた。

「助けに来ました!!  お名前はシュナさんですか!!」

 俺が走りながらそう聞くと、彼女は泣きながら縦に首を振った。

 俺は何も考えず、ゴブリンの所に走り出す。

「……まじかよ」

 そのゴブリンは、右手にナイフを持ち、俺に気が付いた瞬間、無言でこっちに走り出してきた。

 カキン!

「あっぶね!」

 俺は間一髪、剣で受け止め、弾き返した。

 にしても、このゴブリンの攻撃は重たかった。そして、ひとつ、疑問が生まれた。

 女性の様子だった。モンスターは知性を持たない。そう聞いた。でも、女性は縄で縛られ、服を破かれている。

 そして、悲鳴から時間が経っているのに、太もも以外に目立った外傷はなかった。

 ……まずは彼女の安全の確保だ。

「お~~りゃ~~!」

 俺はゴブリンに向かって突撃した。そして剣を振った。

「ぐへっ!」

 俺は弾き飛ばされてしまった。小さなナイフにいとも簡単に。

 本当に……これ……おかしいだろ!

 この洞窟に発生しているモンスターは格が違った。確かに、前世でもこのようなモンスター達は沢山、出会ったことはあった。

 でも、それは中央都市の大きなダンジョンでの事だ。

 こんな小さな村の近くに……こんなモンスターが発生するなんて……

「くそ!」

 俺は何度も何度も、ゴブリンにアタックしては吹き飛ばされてを繰り返した。

 クソ……勝てねぇ……目の前に助けなきゃ行けない人がいんのに……!

 その時だった。

「……助けて」

 弱々しいシュナさんの声だった。

 何やってんだよ!  馬鹿野郎!!

「……ストローグさん。ごめんなさい」

 俺は身体中に魔力を流した。
 大きく深呼吸をする。

 前よりも多く、そして早く。流せ……流せ!

「……!!!」

 俺はゴブリン目掛けて全力で走り、剣を振り下ろした。

「ギュア!?!?」

 ゴブリンは驚きを見せたが、ナイフで俺の攻撃を間一髪受け止めた。

 しかし、ゴブリンは攻撃の衝撃に耐えられず、左側側の壁へと吹き飛ばされ、激突した。

 大きな音と共に、パラパラと壁が崩れる音がした。

 ……安否確認!

「シュナさん!  大丈夫ですか!!」

 小さく頷いたのを見て、俺は剣で縄を切り、上の服を脱ぎ彼女に着させてあげた。

 ビリビリに破かれていた服を結び、太ももの傷跡にギュッ、と縛った。

 縛った時、「んっ!」と、痛みを我慢する彼女だったが、それ以外は何も見せなかった。

 強い子だ。そういえば弟の敵討ちって言ってたっけな。

 絶対助けて帰ろう……

「う、後ろ!!」

 彼女が叫んだ時、すぐに振り返ったがもう遅かった。

 目の前にはもう、殺意の満ちたゴブリンが現れていた。

 やべぇ……死ぬ!!!

 ブウォォォン!!!

「うわっ!!」

 その大きな音と同時に発生した巨大な風は、ゴブリンを吹き飛ばし、俺たちを助けてくれた。

「い、今のって……」

 両手を伸ばし、はぁはぁ、と荒い呼吸をする彼女に質問をしたが、返事はかえってこなかった。

 見ていなかったが、恐らく彼女の魔法だ。しかもかなりの魔力量だった。

 そう。かなりの魔力量。多分だが……

「やっぱか……」

 彼女は気を失いドサッ、と倒れてしまった。

 脈はある。まだ生きてる。俺は治癒魔法使えねぇから……早くケリつけて帰らねぇと。

 俺は立ち上がり、ゴブリンの方を向いた。
 ゴブリンも立ち上がり、こちらを睨めつける。

 知性のあるモンスター。ここまで厄介なものは初めてだ。

 ケイトも、ケイトを寝取ったアイツも、かなりの腕利きの冒険者であった。だから、難なくモンスターの討伐は出来ていた。

 でも……今は違う。1人だ。魔法も使えないただの剣士。

「正々堂々これでできるな……!」

 俺は身体中にもう一度魔力を流した。
 あの時とは違うけど、俺もまた違う。

 魔力の使い方も習得したし、戦い方もしっかり学んだ。そして、守るべきものも増えた。

 守るもんあるときぐらい、全力で約束破ります師匠……!

 一撃で終わらせる……だから……全部流せ……!

「ギュアァァァア!!」

 ゴブリンが走り出す。相手もさっきより段違いに魔力量が増えていた。

 スピードも圧も段違いだ。

 でも、なんでだろう。負ける気がしない。

「はぁぁぁぁあ!!!」

 ゴブリンがナイフを突き出して来た瞬間、その場で上から剣を振り下ろした。

 ゴブリンは咄嗟にナイフを持ち上げ、防御姿勢に入る。

 だが、俺の剣は止まることなく、ナイフを粉々にし、ゴブリンを脳天から真っ二つに切り裂いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...