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第1章

第14話 嘆き

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「ケイト!!  お前……!!!!」

 お父さんが怒鳴り散らかす。この時はもう俺も止める気力はなかった。

 理由は簡単。ケイトが加害者だからだ。そして、お父さんたちは今は被害者だ。

 重たい空気が流れる。
 すると、ケイトが泣きながら口を開く。

「いつもお前お前って……何様なの!!」

 ケイトの逆ギレだった。初めての事だったのか、お父さんも少し驚いた表情で静まり返る。

 ケイトの嘆きは続く。

「お父さんはほとんど家に居ないくせに……帰ってきたと思ったらお母さんに暴力ふるって……知らない女とえっちばっかして!  私の知らないところでたくさん子ども作って……!  血筋があるのはお母さん。お父さんがどれだけ知らない子ども作ったて跡継ぎにはならないのに……!」

 最悪だ。聞けば聞くほど最悪な父親だ。
 俺は膝から崩れ落ちたケイトに寄り添い、何も言わず背中を摩った。

「お母さんが妊娠できないって分かった途端このザマ……仕舞いにはどっかの知らない貴族の息子と私をやらせて……そんなに権力が大事なの?  跡継ぎは必要なの?」

 纏まらない話を、感情を吐き出すケイト。
 あの時の涙の理由がやっとわかった気がした。あの、俺の部屋での。

 彼女の嘆きは終わらない。

「でも……私はそれが普通だと思ってた。親って言うのはこういうものなんだって。小さい頃から2人は喧嘩ばっかで……外には自由に出させて貰えないし、他の人との交流は大体わたしの体目的。お父さんが周りと繋がり作るための道具。私の初めてだって……でも……仕方ないのかなって思ったよ……」

「……何をつらつら語っているんだ!」

 我に返ったのか、嘆くケイトを止めに入るお父さん。

 ちょうどその時、家の炎は消火され、骨組みだけが顕になった。

 場が静まる。

 もう、彼女は止まらなかった。

「でもね……バッド君と出会って気づいたの。バッド君はちゃんと両親に愛されて……私を友達にしてくれて……ちゃんと私の身体を守ってくれた」

 俺は涙が止まらなかった。涙の理由なんて分からない。色んなものが込み上げすぎた。

 もし、俺がいた過去にもこんなことがあったというのなら。何もしてやれなかった。

 あの時、本当はダンジョンではなくて彼女の手で両親を殺していたというのなら。

「う、うるさい!」

 そう言ってお父さんはケイトに近づき、腕を振り上げた。

 拳を握り、ケイトめがけて振り下ろす時、俺は間に入りその拳を受けた。

「バッド君!」

 絶対に倒れるな……!  ここで倒れたら……今、彼女の支えになれるのは……俺だけなんだ!

「話……聞いてなかったんですか」

「だから!  家族の話に入ってくるなと……」

「さっきの話!  ……本当なんですか?」

「本当だったらなんだって言うんだ!  ケイトのやった事は立派な犯罪なんだぞ!  殺人未遂だ!!」

 その時。後ろから足音が聞こえた。

「すいませんね。少し遠くから話は聞いていました」

「誰だよ!」

「中央警察です」

「……!」

 警察だ。事件現場に来たらしい。そして話を聞いていたらしい。

 どこからどこまで聞いていたのか分からない。でも、まぁ、魔法の世界だ。盗聴くらい容易いだろう。

 ……ケイトの罪は重い。決して庇えるものじゃない。

「……お話。ちゃんと聞いてあげてください」

 俺は警察にそう言い残した。そして最後にケイトに一言、言葉をかけて帰ろうとした。その時だった。

 あれ?  視界がぼやけて……

 バタン

 俺は魔力の使いすぎで気を失ってしまった。

 ──────

「ケイト!」

「バッド君!」

「ケーイートー!」

「バッドくーーん!」

 はっ!  ……夢か。

 ここはどこだ?

「目、覚めましたか」

「ここは……」

「病院ですよ。前も君いきなり来て入院して行ったよね」

 この看護師さん見たことあるな……

「あはは……痛!!」

「あんまり動かない方がいいですよ。骨盤の骨の骨折と全身軽い火傷ですから。上位魔法での治療は明日行います。あと、話は聞いてます」

 魔力を纏っていても火傷するのか……痛覚は無くなってたな。あんまり多用しすぎると良くなさそうだ。

 後は骨盤。恐らく2階から飛び降りた時、足にだけ魔力を集中させたが、着地の反動で骨盤にまで響いてしまったっぽいな。

 なんか、あの時は色々出すぎて痛みも感じなかったぬ……

 ……んなことよりケイトは!?

「バッド君……だよね。起きたとこいきなりごめんな」

 看護師と入れ替わるように入ってきた男性。その男性はカーテンを閉め、椅子に座った。

「どなた……ですか?」

「流石に覚えてないか。あの時現場にいた警察のスペルだ」

 警察……!  って事はこれ……事情聴取か!?

「え、えっと!  お疲れ様です!」

「なに、そんなに固くなくていいから。ちょっと伝えたいことがあるのと、お話を聞きたくてね」

「伝えたいこと?」

「あぁ」

「それはなんですか?」

「君に国から表彰があるって話とあの時現場にいたケイトって子の話だ」

 国から表彰!?!?!?  ……んな事よりケイトの話だケイト!!!!

「ケイトは!!  どうなったんですか!!」

「待て待て。まずは表彰だ。小さな街の領主だったが、君が命をかけて助けたってのは事実だ。そのことを踏まえてこの街を支配下に置いてる親国から報酬が出ている」

「報酬?」

「後で渡されるが……金貨100枚だ」

「金貨……100枚!?!?」

 ゴスイの学費を丸々払えてしまうくらいの大金を聞いた俺は、一瞬、時が止まったように感じた。
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