5 / 49
第1章
第4話 記憶
しおりを挟む
「ねぇ! 見て見て! ガオーっ!」
……全く集中できん!!!
俺は今、ケイトとショッピングに来ている。
目の前でライオンのぬいぐるみを操り、俺に攻撃してくる彼女の服装はもはや裸も同然だった。
どこ見ればいいんだよ!! もう見ちゃうよ!! いろいろと!!
「バッド君はなにか買わないの?」
両手に大きな袋を2つ持つケイトが首を傾げ聞いてきた。
俺は大きな袋を1つ奪いながら会話を続けた。
「俺は特に……欲しいものは無いしな……あ、1つ店寄ってもいいかな」
アンサーをしてから数秒沈黙が続く。
あれ? 聞いてない?
俺はケイトが見つめる先を見ると、奪った大きな袋を見つめていた。
「ケイト?」
「あっ! ごめんごめん。いいよ! どこに行きたいの?」
焦ったように返事をしたケイトは少しオドオドしていた。
「ちょっとお母さんとお父さんに買っていきたいものがあってさ。てか、どうしたの? なんかあった?」
「え、あ、違うの。バッド君って意外と気遣いできるんだなーって」
「そりゃ出来るよ。なんて言ったって男の子ですから」
「……なにそれ。ははは!!!」
俺はケイトの笑いにつられて笑ってしまった。
その笑みは俺の知ってるケイトと何ら変わらない。
「まぁいいわ。行きましょ!」
こうして俺とケイトはある店へと向かった。
──────
「何買ってきたの? お母さん達に何かって言ってたけど……」
俺は買ってきたものが入っている袋からそれを取りだした。
「高級折り紙と……あとはこれだ。魔力本。お母さんの趣味が折り紙でお父さんの趣味は読書だからせっかくだしと思ってさ」
「高級折り紙はサイズが思い通りになるって聞いたことあるけど……魔力本ってなに?」
「魔力本は約100冊の方が読めるんだ。この1冊でね。本棚に沢山飾るってのが趣味な人もいるけどうちそんなに広くないからさ。コンパクト重視って訳だよ」
「うふふ。なんかバッド君って結構喋るんだね」
「さっきっからなんだよそれ! バカにしてんのか?」
「違うってば。少なからずバカにはしてないよ」
「少なからずってなんだよ!」
小馬鹿にするように話しかけてくる彼女に嫌な気分にはならなかった。
むしろ心地よかった。
でも、彼女といるとふと蘇る。あの時の記憶が。
最悪な記憶が……
──────
これは俺が22歳の時だ。
今日もアイツに押し付けられた残業をこなしていた。
珍しく今日は早く終わったからケイトに何か買って行ってあげよう。
そう思って俺は小さな町に出向き、彼女の好きな動物の置物と甘いお菓子を買っていった。
日が落ちてきた頃。俺は家のドアを開けた。
いつもより静かな家だった。
「ただいま……ってあれ?」
見覚えのない、いや、見覚えはある靴が1つ玄関にあった。
俺はそれが誰の靴か少し考えて思い出した。アイツのか。何をしてるんだ。少しはクエスト探し手伝ってくれてんのかな。
そんな淡い期待もつかの間。俺はリビングへと行く。
「誰もいない……」
恐る恐るケイトの部屋のドアを開けた。
するとびっくり。全裸の男女がベットにいるではないか。
こんな静かに性行為するもんかね。
俺はこの時の感情を覚えていない。怒りなのか悲しみなのか。はたまたま自分への哀れみなのか。
その後の記憶は鮮明に覚えている。
何もせず、何も言わず俺は出ていってホテルへと向かった。
部屋を出る時、ケイトは何か喋っていた気がするが全く何言ってるかさっぱりだった。
っていうか聞く気にもならなかった。聞こえていても理解しようとしなかった。
ホテルで自慰行為して寝た。いちばん気持ちよくない日だった。
それから……
「どうしたの!! バッド君!!」
「あ、あぁごめんごめん。ちょっと考え事してて」
だめだ。どうしても蘇る。
彼女は本当に素直でいい子なのだろうか。
もし、仮にもう一度付き合い結婚したとしても、裏切らない保証はあるのだろうか。
この2日間で惚れたり疑ったり。もう、うんざりだ。
どうせ結局俺は付き合ったって、結婚したって。最終的には誰かに負けてさよならバイバイだ。
「今日、連れ回しちゃってごめんね。疲れちゃったよね」
「あ、いや、本当に、謝らないで。疲れてなんかないしすっごい楽しかったよ」
俺は今ちゃんと笑えてるだろうか。心が読まれてないだろうか。
「……なら良かった。私また明後日暇なの。今返事しなくていいからさ。また良かったら今日とまた同じ場所と同じ時間に」
「え、あ」
「じゃーね! 私もすっっっごく楽しかったよ!」
そう言って、彼女は俺の手から大きな袋を奪い返し、手を振りながら反対方向へと走っていった。
──────
その日の夜。
「あーー! もう! 何してんだ俺!」
迷っていた。
明後日俺が行かなければ恐らく、彼女との関わりも切れる。
少なくとも、考えうるバッドエンドが1つ無くなるということだ。
多分、俺はこのまま行けば彼女のことを本気でまた好きになってしまう。
本能がそう言ってる。
でも、もうひとつ。本能が訴えかけてくることがある。
それは、ケイトは悪くない、という事だ。
でも、振り返ってみれば恐らくケイトにも非がある。
俺に黙って浮気して、アイツとみだらな行為をして、そんでもって俺を捨てて離婚……
……あれ? てか……俺って……どうやって離婚したんだっけ……?
……全く集中できん!!!
俺は今、ケイトとショッピングに来ている。
目の前でライオンのぬいぐるみを操り、俺に攻撃してくる彼女の服装はもはや裸も同然だった。
どこ見ればいいんだよ!! もう見ちゃうよ!! いろいろと!!
「バッド君はなにか買わないの?」
両手に大きな袋を2つ持つケイトが首を傾げ聞いてきた。
俺は大きな袋を1つ奪いながら会話を続けた。
「俺は特に……欲しいものは無いしな……あ、1つ店寄ってもいいかな」
アンサーをしてから数秒沈黙が続く。
あれ? 聞いてない?
俺はケイトが見つめる先を見ると、奪った大きな袋を見つめていた。
「ケイト?」
「あっ! ごめんごめん。いいよ! どこに行きたいの?」
焦ったように返事をしたケイトは少しオドオドしていた。
「ちょっとお母さんとお父さんに買っていきたいものがあってさ。てか、どうしたの? なんかあった?」
「え、あ、違うの。バッド君って意外と気遣いできるんだなーって」
「そりゃ出来るよ。なんて言ったって男の子ですから」
「……なにそれ。ははは!!!」
俺はケイトの笑いにつられて笑ってしまった。
その笑みは俺の知ってるケイトと何ら変わらない。
「まぁいいわ。行きましょ!」
こうして俺とケイトはある店へと向かった。
──────
「何買ってきたの? お母さん達に何かって言ってたけど……」
俺は買ってきたものが入っている袋からそれを取りだした。
「高級折り紙と……あとはこれだ。魔力本。お母さんの趣味が折り紙でお父さんの趣味は読書だからせっかくだしと思ってさ」
「高級折り紙はサイズが思い通りになるって聞いたことあるけど……魔力本ってなに?」
「魔力本は約100冊の方が読めるんだ。この1冊でね。本棚に沢山飾るってのが趣味な人もいるけどうちそんなに広くないからさ。コンパクト重視って訳だよ」
「うふふ。なんかバッド君って結構喋るんだね」
「さっきっからなんだよそれ! バカにしてんのか?」
「違うってば。少なからずバカにはしてないよ」
「少なからずってなんだよ!」
小馬鹿にするように話しかけてくる彼女に嫌な気分にはならなかった。
むしろ心地よかった。
でも、彼女といるとふと蘇る。あの時の記憶が。
最悪な記憶が……
──────
これは俺が22歳の時だ。
今日もアイツに押し付けられた残業をこなしていた。
珍しく今日は早く終わったからケイトに何か買って行ってあげよう。
そう思って俺は小さな町に出向き、彼女の好きな動物の置物と甘いお菓子を買っていった。
日が落ちてきた頃。俺は家のドアを開けた。
いつもより静かな家だった。
「ただいま……ってあれ?」
見覚えのない、いや、見覚えはある靴が1つ玄関にあった。
俺はそれが誰の靴か少し考えて思い出した。アイツのか。何をしてるんだ。少しはクエスト探し手伝ってくれてんのかな。
そんな淡い期待もつかの間。俺はリビングへと行く。
「誰もいない……」
恐る恐るケイトの部屋のドアを開けた。
するとびっくり。全裸の男女がベットにいるではないか。
こんな静かに性行為するもんかね。
俺はこの時の感情を覚えていない。怒りなのか悲しみなのか。はたまたま自分への哀れみなのか。
その後の記憶は鮮明に覚えている。
何もせず、何も言わず俺は出ていってホテルへと向かった。
部屋を出る時、ケイトは何か喋っていた気がするが全く何言ってるかさっぱりだった。
っていうか聞く気にもならなかった。聞こえていても理解しようとしなかった。
ホテルで自慰行為して寝た。いちばん気持ちよくない日だった。
それから……
「どうしたの!! バッド君!!」
「あ、あぁごめんごめん。ちょっと考え事してて」
だめだ。どうしても蘇る。
彼女は本当に素直でいい子なのだろうか。
もし、仮にもう一度付き合い結婚したとしても、裏切らない保証はあるのだろうか。
この2日間で惚れたり疑ったり。もう、うんざりだ。
どうせ結局俺は付き合ったって、結婚したって。最終的には誰かに負けてさよならバイバイだ。
「今日、連れ回しちゃってごめんね。疲れちゃったよね」
「あ、いや、本当に、謝らないで。疲れてなんかないしすっごい楽しかったよ」
俺は今ちゃんと笑えてるだろうか。心が読まれてないだろうか。
「……なら良かった。私また明後日暇なの。今返事しなくていいからさ。また良かったら今日とまた同じ場所と同じ時間に」
「え、あ」
「じゃーね! 私もすっっっごく楽しかったよ!」
そう言って、彼女は俺の手から大きな袋を奪い返し、手を振りながら反対方向へと走っていった。
──────
その日の夜。
「あーー! もう! 何してんだ俺!」
迷っていた。
明後日俺が行かなければ恐らく、彼女との関わりも切れる。
少なくとも、考えうるバッドエンドが1つ無くなるということだ。
多分、俺はこのまま行けば彼女のことを本気でまた好きになってしまう。
本能がそう言ってる。
でも、もうひとつ。本能が訴えかけてくることがある。
それは、ケイトは悪くない、という事だ。
でも、振り返ってみれば恐らくケイトにも非がある。
俺に黙って浮気して、アイツとみだらな行為をして、そんでもって俺を捨てて離婚……
……あれ? てか……俺って……どうやって離婚したんだっけ……?
0
お気に入りに追加
697
あなたにおすすめの小説
妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜
橋本 悠
ファンタジー
両親の死、いじめ、NTRなどありとあらゆる`最悪`を経験し、終いにはパーティーメンバーに刺殺された俺は、異世界転生に成功した……と思いきや。
もしかして……また俺かよ!!
人生の最悪を賭けた二周目の俺が始まる……ってもうあんな最悪見たくない!!!
さいっっっっこうの人生送ってやるよ!!
☆
こちらの作品は元あった作品を改変したものとなります。軸は変わりませんが時系列や新たなエピソードなど変わる部分が多々あります。ぜひお楽しみください
浮気したけど『ざまぁ』されなかった女の慟哭
Raccoon
恋愛
ある日夫——正樹が死んでしまった。
失意の中私——亜衣が見つけたのは一冊の黒い日記帳。
そこに書かれてあったのは私の罪。もう許されることのない罪。消えることのない罪。
この日記を最後まで読んだ時、私はどうなっているのだろうか。
浮気した妻が死んだ夫の10年分の日記読むお話。
愛しい彼女に浮気され、絶望で川に飛び込んだ俺~死に損なった時に初めて激しい怒りが込み上げて来た~
こまの ととと
恋愛
休日の土曜日、高岡悠は前々から楽しみにしていた恋人である水木桃子とのデートを突然キャンセルされる。
仕方なく街中を歩いていた時、ホテルから出て来る一組のカップルを発見。その片方は最愛の彼女、桃子だった。
問い詰めるも悪びれる事なく別れを告げ、浮気相手と一緒に街中へと消えて行く。
人生を掛けて愛すると誓った相手に裏切られ、絶望した悠は橋の上から川へと身投げするが、助かってしまう。
その時になり、何故自分がこれ程苦しい思いをしてあの二人は幸せなんだと激しい怒りを燃やす。
復讐を決意した悠は二人を追い込む為に人鬼へと変貌する。
勇者、追放される ~仲間がクズばかりだったので、魔王とお茶してのんびり過ごす。戻ってこいと言われても断固拒否。~
秋鷺 照
ファンタジー
強すぎて勇者になってしまったレッグは、パーティーを追放され、一人で魔王城へ行く。美味しいと噂の、魔族領の茶を飲むために!(ちゃんと人類も守る)
悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。
ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。
【破天荒注意】陰キャの俺、異世界の女神の力を借り俺を裏切った幼なじみと寝取った陽キャ男子に復讐する
花町ぴろん
ファンタジー
陰キャの俺にはアヤネという大切な幼なじみがいた。
俺たち二人は高校入学と同時に恋人同士となった。
だがしかし、そんな幸福な時間は長くは続かなかった。
アヤネはあっさりと俺を捨て、イケメンの陽キャ男子に寝取られてしまったのだ。
絶望に打ちひしがれる俺。夢も希望も無い毎日。
そんな俺に一筋の光明が差し込む。
夢の中で出会った女神エリステア。俺は女神の加護を受け辛く険しい修行に耐え抜き、他人を自由自在に操る力を手に入れる。
今こそ復讐のときだ!俺は俺を裏切った幼なじみと俺の心を踏みにじった陽キャイケメン野郎を絶対に許さない!!
★寝取られ→ざまぁのカタルシスをお楽しみください。
※この小説は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
仲間を庇って半年間ダンジョン深層を彷徨った俺。仲間に裏切られて婚約破棄&パーティー追放&市民権剥奪されたけど婚約者の妹だけは優しかった。
蒼井星空
恋愛
俺はこの街のトップ冒険者パーティーのリーダーだ。
ダンジョン探索は文字通り生死をかけた戦いだ。今日も俺たちは準備万端で挑む。しかし仲間のシーフがやらかしやがった。罠解除はお前の役割だろ?なんで踏み抜くんだよ。当然俺はリーダーとしてそのシーフを庇った結果、深層へと落ちてしまった。
そこからは地獄の日々だった。襲い来る超強力なモンスター。飢餓と毒との戦い。どこに進めばいいのかも分からない中で死に物狂いで戦い続け、ようやく帰っていた。
そこで待っていたのは、恋人とシーフの裏切りだった。ふざけんなよ?なんで俺が罠にかかって仲間を危険に晒したことになってんだ!?
街から出て行けだと?言われなくてもこっちから願い下げだよ!
と思ったんだが、元恋人の妹だけは慰めてくれた。
あのあと、元仲間たちはダンジョンを放置したせいでスタンピードが起こって街もパーティも大変らしい。ざまぁ!!!!
と思ってたら、妹ちゃんがピンチ……。
当然助けるぜ?
深層を生き抜いた俺の力を見せてやるぜ!
恋人を寝取られた挙句イジメられ殺された僕はゲームの裏ボス姿で現代に転生して学校生活と復讐を両立する
くじけ
ファンタジー
胸糞な展開は6話分で終わります。
幼い頃に両親が離婚し母子家庭で育った少年|黒羽 真央《くろは まお》は中学3年生の頃に母親が何者かに殺された。
母親の殺された現場には覚醒剤(アイス)と思われる物が発見される。
だがそんな物を家で一度も見た事ない真央は警察にその事を訴えたが信じてもらえず逆に疑いを掛けられ過酷な取調べを受ける。
その後無事に開放されたが住んでいた地域には母親と自分の黒い噂が広まり居られなくなった真央は、親族で唯一繋がりのあった死んだ母親の兄の奥さんである伯母の元に引き取られ転校し中学を卒業。
自分の過去を知らない高校に入り学校でも有名な美少女 |青海万季《おおみまき》と付き合う事になるが、ある日学校で一番人気のあるイケメン |氷川勇樹《ひかわゆうき》と万季が放課後の教室で愛し合っている現場を見てしまう。
その現場を見られた勇樹は真央の根も葉もない悪い噂を流すとその噂を信じたクラスメイト達は真央を毎日壮絶に虐めていく。
虐められる過程で万季と別れた真央はある日学校の帰り道に駅のホームで何者かに突き落とされ真央としての人生を無念のまま終えたはずに見えたが、次に目を覚ました真央は何故か自分のベッドに寝ており外見は別人になっており、その姿は自分が母親に最期に買ってくれたゲームの最強の裏ボスとして登場する容姿端麗な邪神の人間体に瓜二つだった。
またそれと同時に主人公に発現した現実世界ではあり得ない謎の能力『サタナフェクティオ』。
その能力はゲーム内で邪神が扱っていた複数のチートスキルそのものだった。
真央は名前を変え、|明星 亜依羅《みよせ あいら》として表向きは前の人生で送れなかった高校生活を満喫し、裏では邪神の能力を駆使しあらゆる方法で自分を陥れた者達に絶望の復讐していく現代転生物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる