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第1章

第2話 魔法

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「どうすれば魔法って使えんのかなぁ……」

 俺は人生で1度も魔法を使えたことがない。
 妻を救った時のように譲渡はできるが発生させることは出来ない。

 基本、魔力を使えばなんでも生み出すことができる。

 人によってはそれを上手く応用して冒険者ではなく、店を開いているものもいる。

 上質なレンガを生み出すことができる人は家創りの仕事をしていたり、陶芸が上手くできる人はそれを売り物として生計を立てていたりもする。

 でもまぁ基本は魔法科に入ったものは冒険者として生きていく。

 炎や水、風を起こす方がよっぽど前者よりも簡単だからだ。

 そして冒険者はかなり稼ぎが良い。
 数年経つと物価が上昇し、生活が困難になるが、新しい制度も相まって更に人気な職となる。

「炎の一つくらい出せればなぁ……」

 俺は一つ目の最悪。両親の死を覆すための計画があった。

 それはこの魔法。両親が死ぬ日、魔法を使えるようになりダンジョンへと一緒に向かう。

 そうして俺が魔法でモンスターから助けるって算段だ。

 まぁ冒険者2人で勝てなかったモンスターに俺が勝てるとも思えないが……
 実は、あの時俺も一緒にダンジョンに連れて行ってもらっていた。

 思い出したくもない、もう記憶から消し去ってしまったあの情景を……

「そんなこたぁどうでもいい!  まずは魔法だ」

 昔、教えてもらった方法はこうだ。

 まず、身体の魔力をひとつに集中させる。
 やりやすいのは手だ。

 手に魔力を集め、頭の中で出したいものを意識する。

 その時、具現化される……ってなんだよそれ!
 そんなので出来るのどっかの主人公だけだよ!

 そんなこんなで一日目の魔法の練習は、水一滴も出ずに終わった。

 ──────

 死に戻りから数ヶ月が経った。

「あーもう!!  全くできない!!」

 未だに修行中である。
 なんとなくだが魔力を感じることはできるようになってきた。

 魔力の譲渡も人に触れることによって相手の魔力を感じる。

 そこに流し込むように魔力を移動させる。
 これができるおかげで魔力を感じることは意外と簡単に出来た。

 でもここからだ。今、俺はちゃんと本気で魔力の練習に取り組めている。

 一度死ぬ前は本当にどうでも良くなっていた。
 いじめが始まってから努力することを忘れていた。

 でも、今は違う。まだ希望がある。
 未来が分かるって最高じゃんか。

 たとえそれが最悪な未来だとしても。

「……絶対変えてやるかんな」

 俺はただその一心を原動力に修行を続けた。


 ー数時間後ー

「やっぱ今日も無理だ!」

 ──────

 その日の夜ご飯の時。

「バッド、お前最近コソコソひとりでどこいってるんだ?」

 ……バレてた。
 いつもお父さんたちが出ていった後に出かけ、帰ってくる前に帰ってきていたのだが普通にバレてしまった。

「え、えっと……」

 回答に迷って居ると、お母さんが口を開く。

「もしかして……お友達でもできたの!?」

 ……大不正解だ。
 どうしよう。反応に困る。

「あ、えっと、いや」

「やっぱりそうだったのか~。まぁお前も14歳だもんな!  来年からもっと友達増えるぞ~」

 勘違いも程々にしてよ!
 ……でも、お父さんたちが嬉しそうな顔をして俺の方に話しかけてくる。

 こんな幸せなのに。
 なのに数ヶ月後には2人とも死ぬ。

 過去を、いや、未来を本当に変えることが出来るのだろうか。

 ……違う。出来るのかじゃない。やるんだ。絶対に。

 俺のためじゃない。家族のために俺は今、頑張らなきゃ行けないんだ。

「う、うん。ま、まぁね」

 この回答は俺も大不正解だ。
 友達なんて居ないよ!!   だって毎日穴に籠ってるだけだからね!?

 でも、俺が今やってる事は圧倒的な法律違反。
 そして俺はまだ未成年。来年成人とは言え、子どもは子ども。この違反の罪は親に被されてしまう。

 これは俺だけの秘密にしよう。

 こうして俺は隠し事をふたつも抱えてしまったのだった。

「じゃあ今度うちに呼んでちょうだい。もてなすわ!」

 これは大変なことになってしまった……

「う、うん。分かった……」

 ──────

 翌日、俺は洞穴ではなく、隣町まで来ていた。

「友達かぁ……」

 俺の家の周りは老人ばかりで友達と呼べるような人はいなかった。
 みんないい人なんだけどな。

 ってことで少し栄えてる隣町まで来てみたのだが……

「これ友達なんて……出来なくね?」

 無理だ。絶対無理だ。
 学校でもろくに話せずコミュ障全開だった俺がいきなり街に出て友達ができるわけが無い。

 ……今日は帰るか。
 俺が帰路に着こうとしたその時だった。

「きゃっ!!」

「おいおいどこ見て歩いんてんの嬢ちゃん」

「お、ちょっと可愛いじゃん。こっち来いよ」

 俺と同い年位の女の子がヤンキー二人に絡まれていた。
 お気の毒だな……
 でも、助ける勇気も強さも、俺には無いから、ここはそーっと帰るのが一番……

 その時だった。怯える女の子を見て俺は驚愕した。

 俺の勘違いかもしれない。でも、明らかに見覚えがあった。

 綺麗な金髪ロング。綺麗な顔立ち。そして付けているネックレス。

 その瞬間、俺は動き出していた。

「や、やめてください!」

 手を広げて守ろうとしている彼女は、20歳の時に結婚する妻であった。
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