幻影幽霊

再会

　僕の手は無意識に彼女の頬に触れていた。
　ふと、彼女が目を覚ました。僕のことをじっと見つめて動かない。やはり彼女は話したくても話せないのか、そう思った僕は気まずさから目を逸らした。

「来てくれたんだ、ありがとう」

　 涼しげで澄みきった声だった。
　 僕はすぐに顔を上げ、彼女を凝視した。                          
　僕は病院を訪れてから、部屋にいたのは彼女の生霊のようなものだったのだろうと解釈していた。そのため、彼女にとって僕は初対面の他人のはずだ。必死に記憶を辿るが、思い当たるものはない。

　 彼女を凝視した状態から動かない僕をみて何かを察したように彼女は悲しそうに笑った。
　 僕の方が胸を締め付けられるくらい悲しい笑みだった。見ていられなくなった僕は、また彼女から目を逸らした。
　 次に顔を上げた時には、そこにいたはずの彼女の姿はなかった。

　 結局彼女はなんだったのだろう。