あの日振られた君へ

雨森

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動揺と後悔

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 私は逃げるように家に帰った。帰り道もずっと頭の中が真っ白だった。

 家につき、少し落ち着いた私はあらためて告白の返事について考え、頭を悩ませていた。様々な疑問が次々と浮かび、整理が追いつかなかったからだ。
 まず、彼は七瀬ちゃんのことが好きだったはずだ。それは彼の口から聞いたのだから間違いない。だが、これを確認しない訳にもいかないため、彼に連絡した。

“北沢、七瀬ちゃんのことが好きなんじゃなかった?”

 すぐに返信がきた。

“好きってことばれたくなくて嘘ついた”

 私は、いっそのこと聞きたいことを全て聞いてしまおうと思い、質問を続けた。

“えっと、好きって恋愛的な意味?”

 今思えば、告白してきた相手にわざわざこんなことを聞くのもどうかと思うが、その時の私は、初めての告白にどうすれば良いか分からず、自分のことで精一杯だったのだ。

“うん、そうだよ”

 本当にそうなんだと実感したことで私は少し混乱していた。そのせいだろうか、私は結局告白を断ってしまった。早く答えを返さなければいけないという焦燥感で正常な判断が出来なかったのだろう。
 






 それから約一年半がすぎた後も、私はふとした時に彼のことを考えてしまう。あの時断らなければよかったという後悔と、上手く対応出来なかったことに対する後悔が込み上げてくるのだ。
 
 私は、混乱によって正常な判断が出来なかったと述べたがそれは嘘だ。本当は彼の言葉を信じることが出来なかった。彼自身に問題があった訳ではない。私の自己肯定感の低さが問題だったのだ。
 彼からの告白を受けた時、自分の中を様々な考えが巡った。

“私なんかを好きになるはずない”

“真剣だった。嘘じゃないはず”

“嘘の告白かもしれない”

“好きになってくれて嬉しい”

“本当かどうか分からない…”

 そうやって考えを巡らせた結果、結局私を好きだと言う彼の言葉を信じきれなかった。自分勝手な自分。
 
“私は彼のことが好きだった”

 時が経つほどに降りつもっていく想いに、私は気づかずにはいられなかった。
 失ってから気づいても、もう遅いのに。
 彼は、勇気をだして告白してきっと傷付いたはずだ。
 自分勝手な考えで彼を傷付けてまで、何がしたかったのか分からない。その上、実は好きでした、なんて笑えない話だ。
 
 私は、後悔してもしきれないこの想いをどこかに吐き出したくて、この文章を書いた。
 
 もし彼に一言伝えられるなら…いや、そう考えることすらもおこがましいだろう。この苦しみが自分への罰だ。
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