あの日振られた君へ

雨森

文字の大きさ
上 下
4 / 5

告白

しおりを挟む
 数日後、漫画を読み終えた私は返しに行く時のことを考えて憂鬱な気持ちになっていた。それでも返しに行かない訳にはいかない。放課後に彼と打ち合わせをして、今週末に返しに行くことになった。


  当日、気が重いまま彼の家に向かう。それほど遠い距離でもないので、気持ちとは裏腹にすぐに着いてしまう。彼が出てきた。
「おはよ」
「おはよう…」

 二人の間に気まずい沈黙が流れる。

「一旦漫画置いてきていい?」

「うん、わかった。」
  
 了承したのはいいものの、彼から何を言われるのか私には想像もつかず、恐れる気持ちさえあった。

「おまたせ~」
  
 いつも通りだ。そんな彼に安心した私は漫画の感想を話し、いつの間にか気まずさも忘れていた。話を終えた私は帰ろうと思い、声をかけた。

「北沢、私そろそろ帰るね~」


「待って。」
  
 引き留められると思っていなかった私は少し驚きつつもその場に留まった。やけに真剣な顔をしている彼を不思議に思った。

「なに?どしたの?」
  質問してみても彼は黙ったままだった。
 言いづらい話なのかもしれないと考え、何も言わず待った。

 少しして、彼は私を真っ直ぐ見つめたと思うと手を差し出した。


「好きです。付き合ってください」




「えっと…考えさせてください」


  彼の飾り気のない、シンプルともいえる告白が私には心地よく感じられた。だが、その場で告白を処理しきるほどの経験も能力も持ち合わせていなかった私には考える時間が必要だったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

勘違い令嬢の心の声

にのまえ
恋愛
僕の婚約者 シンシアの心の声が聞こえた。 シア、それは君の勘違いだ。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔

しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。 彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。 そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。 なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。 その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。

5年経っても軽率に故郷に戻っては駄目!

158
恋愛
伯爵令嬢であるオリビアは、この世界が前世でやった乙女ゲームの世界であることに気づく。このまま学園に入学してしまうと、死亡エンドの可能性があるため学園に入学する前に家出することにした。婚約者もさらっとスルーして、早や5年。結局誰ルートを主人公は選んだのかしらと軽率にも故郷に舞い戻ってしまい・・・ 2話完結を目指してます!

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

処理中です...