あの日振られた君へ

雨森

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靄【二】

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 それからの私は自然と北沢のことを避けるようになっていた。あの時の肯定が私にとって何故か引っかかるものだったからだ。悲しいような、裏切られたような不思議な情緒に陥った私には彼を前にして、以前の様に話す勇気がなかった。
  それでも放課後になると、二人になる時間は訪れてしまう。私は出来るだけ違和感がないように注意して話すようにした。
  私が彼を避けるようにする一方で、私と彼の距離は縮んでいった。彼が前よりも私に話しかけるようになったからだ。
  私は、他に好きな女の子がいるのに絡みにくる彼に、嫌悪感と嬉しい気持ちのどちらも存在するような不思議な情緒に再び陥ることになった。



  私の情緒がある程度落ち着き、以前と同じように話せるようになった頃。私は彼に漫画を貸してもらうほどの仲になり、漫画を取りに家まで行くこともよくあった。
  彼は私が帰ろうとすると、いつも私のことを引き留めた。まるでもう少し一緒に居たいとでも言うように。そう感じた瞬間、自分の自惚れを恥ずかしく思って早々と立ち去るのがいつもの流れになっていた。
  私はある日彼に言った。
「ごめん!もう借りにくるのやめる」
「え、なんで?」
 彼は不思議そうな顔をする。
「借りに来るのがちょっと…」
 最後まで言うのを躊躇った私は、気まずくなり、目を逸らした。
「面倒くさくなっちゃった?」
 私の性格をよく把握している彼からすれば、言い当てることは簡単だっただろう。私はさらに俯き、彼と目を合わすことをしなかった。いや、出来なかった。
「じゃあ、新山さんの家まで持っていくよ」
 予想外の言葉が飛んできた。驚いた私は一瞬顔を上げ、またすぐに俯いた。
「そんなの悪いから、いい。ごめんね、勝手なこと言って。この漫画はちゃんと返しにくるから。」
  そう言って引き留めようとする彼の手を振り切って帰った。
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