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第一回捜査会議

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「わたしを完全に包囲してあんたたちどうするつもりーーー」
そう問われた観客たちはもちろんこのセリフを叫ぶことになっている
「逮捕しちゃうぞぉぉぉー」
「捕まえられるもんなら捕まえてごらん」
A級戦犯アイドル、シナリーこと椎名りほなは国民のターゲットというコンセプトを基に絶大な人気を誇るアイドルでありまさに全員から狙われる存在になっている。
「じゃあ、一曲目いっくよー」
囚人パラドックスのイントロが流れ出し囚人服チックなピンクと赤のストライプのスカートを翻して画面の中のシナリーが踊りだす。
「シナリーぃぃぃぃーー」
相田さんが絞り出すように叫んだ
「静かにしろよ、シナリーの弔いにならないだろ」
たまらずうなぎ先輩が相田さんをなだめる
「こんなに元気だったのに、どーしてだよシナリーいいぃーーー」
「お前もかよ静かにしろよ」
相田さんと、いっちゃんが双子の赤子のように同時に泣き出した。1ヶ月前に自殺したシナリーを弔う会が開かれることになったのはうなぎ先輩の自宅だった。集まったのはいつもの5人、うなぎ先輩、相田さん、いっちゃん、五朗さんと僕だ。
「しかし、見たかったよな武道館ライブ」
「あーもう、しけたこと言わないでください、だからこうして集まったんじゃないですか」
5人の前には今日モガれるはずだったライブのチケットが置かれている。本当なら今頃シナリーの初武道館ライブに熱狂しているはずだった。
「シナリーってなんで死んじゃったんだろうなぁ」
うなぎ先輩は画面を見つめたまましみじみと呟いた。
「急に、何言い出すんですか」
「理由はわかりませんけど、屋上から飛び降りたんですよね」
「まさか、国民的指名手配アイドルが自ら死を選ぶとはな」
「うなぎの言う通りだ。俺たちはこれから誰を追えばいいってんだ」
五朗さんのセリフを聞いてなぜか頭の中にルパンを失った銭形警部が浮かび上がった。
「あの作り話とかも誰が言い始めたんでしょうかね」
「あぁ、あれね、ありえん話だよな」
「都市伝説にしても、あれは限度を超えてますよ」
相田さんは怒りを思い出したように声を荒げた
「ちょっと待ってください、なんのことですか」
「なんだお前知らないのか」
「2ちゃんねるで言われてんだよ、死ぬ前の日に出た生番組のシナリーは偽物だったんじゃないかってな」
「ミュージッククロニクルですか、あれなら見てましたよ」
「あの時のシナリーがシナリーじゃなかったらあれは誰なんだよ」
「その番組のDVDなら持ってますけど」
いっちゃんが顔の前でDVDをチラつかせた
「見ますか」
僕の意見にみんなが頷き、姿勢を正して画面に正対した。あの日のシナリーが本物だってことを確かめるために。
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