妄想誤訳・吾妻鏡

やまの龍

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バカばっかだな全く

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「うんうん、今日も血色が良いではないか。どうだ? 新妻の調子は。しかし遅刻とはいい度胸だな。それにその直垂はいかんぞ。おい、政子、ちょっと見てみろ」



 到着するなり、御所と御台所に目ざとく見つけられる。



「まぁ、真朝があんなに一生懸命準備してたのに、小四郎ったら着てあげなかったの? 真朝が可哀想だったら! ちょっとこっちにいらっしゃい! 大体、別に選ぶにしたってもうちょっとマシなのあるでしょうに。なんなの、その地味っぷり」



「誠、誠。だが小四郎の場合、直垂をいくら派手にしても目立たないのは変わらないがなぁ」



「本当そうよね。まぁ、でも小四郎の場合、御所様の護衛が一番の任務だし、盾と陰になるには、やっぱりこの地味加減が一番かしら」



 鎌倉殿ご夫婦のセクハラ&パワハラ攻撃は今日も健在だ。



 小四郎は一連の流れをサクッと済ますと、イベント会場へと急いで向かった。

 その控室である侍所の詰所からは、賑やかな……いや度を超した騒音と陽気過ぎる笑い声が響いてくる。



——あいつら、もう酒を入れてやがる。イベント前は絶対に樽を開けるなと、昨日あれだけ言ったのに。



 とにかく、酒豪で暴れ上戸&泣き上戸の重忠が合流してしまう前に、やつら全員外に追い出さないと。



 と思ったそばから、重忠がピタッと隣に並んで走っていた。

咄嗟に足を引っ掛けて転ばせようとするものの、そヤツはの身体に似合わぬ敏捷さでヒラッと飛び上がり、詰所の戸をガラッと開ける。


「お前ら、何、先に楽しんでやがるんだ! 俺も混ぜろ!!」



 戸の前でバンザイする重忠の背を後ろから蹴り倒し、同時に叫ぶ。



「お前ら全員、減俸だ! とっとと外に出ろ!」

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