前世は拾われた猫だったので。転生したら人間を拾っています。

第5章 ランドバルク王国王女イグレーヌ

イグレーヌ12

「どれが本体かわからないにゃん？」
　
「そうだろう、下等生物にぼくの動きが見えるわけがない」

「わからないから、みんな殴るにゃん」
　猫ちゃんは、そう言うと弾ける。
　えっ？猫ちゃんは分裂する。
　ピーター一人に対して２匹づつ。
　しかし、たぶん猫ちゃんの分身はピーターの分身とは違う。
　本当に分裂しているのだ。
　全部の猫ちゃんが攻撃に移る。
　猫パンチだ。
　それも地面に叩きつけるように。
　ピーターは地面と衝突する。

　そこに猫ちゃんが全員集る。
　ピーターは猫ちゃんたちにぼこぼこにされる。
　猫ちゃんが離れると伸びたピーターが残される。
　得意そうに猫ちゃんは戻ってくる。

　これで窮地は乗り越えたはずだ。
　猫ちゃんのおかげだ。
　
「猫ちゃんありがとう」
　わたしは猫ちゃんの頭を撫でる。

「どういたましてにゃん。
　でも猫ちゃんじゃなくてドラだにゃん」

「ありがとう。ドラちゃん」
「ありがとう。ドラ」
「ありがとうございますドラ殿」
　みんなでお礼を言う。
　猫ちゃんは目を細める。
　その可愛さに少し癒される。
　ただ、ここにとどまっているのも危険だ。
　仲間がいるかしれない。

「さあ、ドラ殿にお礼を言ったら先を急ぎましょう。
　たぶん、次の追っ手までは時間は稼げるはずです」
　エヴァンスが先を急ごうとする。
　そう、今のわたしたちには時間は大事だ。

「ぼくの町にくればいいにゃん」
　ドラちゃんがわたしの顔を見て言う。

「ドラちゃんの町に…」
　どうしよう。ドラちゃんがいれば追っ手が来ても大丈夫だろう。

「ドラについていこう。
　どうせこのままじゃ、悪魔には勝てない。
　すこし修行の時間がほしい」
　ランスロットはそう意見する。

　わたしたちは相談の上、ドラちゃんについていくことに決めたのだった。