前世は拾われた猫だったので。転生したら人間を拾っています。

第４章 大商人グリフレッド

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　馬車の中から疲れ切った感じの中年男性。
　他に老人と女の人、子供が２人。
　家族と従者ってとこか。
　無謀だよ。次の村までなんてさ。

　あれっ？この人みたことがある。
　モーガンさんだよね。

「この度は助けていただいてありがとうございます。
　わたしはエクレルの町の商人でトーマスというものです」
　
　いや、モーガンだよ。
　あんた絶対にモーガンだよ。

　モーガンはわたしの顔を見る。
　そのとたん、表情が変わる。
　もしかして、気が付いた？
　
「おまえは…」
　わたしをさす指は震えている。
　
「何をおっしゃっているのかわかりませんね。
　わたしはドラの町の商人、ニャンコロッド商会のケビンです」

「お前は、グリフレッドだろ、鉱山に行く途中でレイモンドと一緒に死んだ」

「いえ、わたしはドラの町の商人です」
　めんどくさいからしらばっくれておこう。
　
「まあいい、わしを助けてくれ。
　次の村まで送ってくれ。
　そうしたら、おまえが罪人であることは黙っておいてやる」

「意味がわからないですね。
　わたしたちは急いでいるのです。
　次の商品を届けないとならないので。
　元の村に戻ることはできません。
　しかしエクレルの町までなら送ることはできますよ。
　馬車には４人くらい乗れますから」

「頼む。わしらを逃がしてくれ。
　次の村まででいいんだ」
　モーガンは土下座して頼み込む。

　なにがあったかわからないけど、こいつの言うことを聞く必要はない。

「馬もゴブリンに殺されて、つぎの村まで徒歩なんて無理ですよ。
　でも、どうしてもっていうんなら止めませんが。
　どうします？
　わたしも急いでるんですが」
　わたしは微笑んでモーガンに問いかける。
　モーガンはあきらめたように立ち上がり、わたしの馬車に乗る準備を始めるのだった。