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第4章 大商人グリフレッド

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「本当に効くのか?」
「ただの水じゃないだろうな」
「この価格で薬が出せるわけがないじゃないか」

「いえ、大丈夫ですよ。
 効果は保証します」
 わたしは商売人の笑顔で対応する。

 たしかに薬というのは、いちばん騙しやすい商品だ。
 成分は門外不出と言えばいいし、効かなかったとしても責任を追う必要はない。
 それにフラシーボ効果と言って、信じれば本当に病気が治ってしまうこともある。
 人間の意思の力も侮れるものではない。
 わたしたちの薬も人間の治癒力に作用する。
 普通の回復薬ではなく、ブラックウッドさんが古代の魔導により編み出した薬だ。

 そう言っても、今日ここに店をだしたばかりのわたしを信じるものは誰もいない。
 一応は安さに足を止めてくれるけど、買ってくれるものは誰もいない。
 
「やっぱやめとくわ」
 おじさんはそう言って他に行こうとする。

「ありがとうございます。
 また、お越しください。
 それで、今日開店したばかりなんで、試供品をお渡ししています。
 これをどうぞ」
 わたしは小瓶を渡す。
 これは以前もやった方法だ。
 この前は効果を証明するために。
 いちおう店としての信用はあったわけだから、薬の宣伝のためだった。
 今回はこの店の宣伝をかねてだ。
 タダでものがもらえるとなったら、このあたりの人はすぐに群がってくるだろう。
 
「そうか、それならいただこう」
 おじさんはそれを受け取る。
 さて、忙しくなるぞ。

「おれにもくれよ」
「わたしにも」
 まわりの人が手を出してくる。
 それから、その声を聞いた人も群がってくる。

「ニャンコロッド商会、本日開店です。
 深淵の森の近くのドラの町から参りました。
 これからこの町でお世話になりたいと思っています。
 本日は試供品を配っています。
 わたしどもの薬はよく効きます。
 その効果の程をお試しください。
 ただ、限定100本となっています。
 なくなり次第終了です」
 わたしは声を上げる。
 そのとたん、わたしの店は多くのひとに囲まれるのだった。
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