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第2章 S級冒険者炎王アッシュ

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 ぼくたちはバカだった。
 やつらが言うように、冒険者になるにはきちんと手順を踏むべきだったのだ。
 ほとんどの簿検車は都会出身または田舎から出てきてそれなりの期間を経てから志願するものなのだ。
 ギルドにいけば、簡単な講習でライセンスはもらえる。
 それだけでは、冒険者にはなれないのだ。

 都会のやつらは、それがわかっているから、専門学校に行く。
 冒険者をやりながら基礎知識を覚えるのは危険すぎるのだ。
 それに都市出身者は読みかきができる。
 ぼくみたいにわけのかわらない書類にサインをすることなんてないのだ。

 ぼくがクレイブに目をつけられたのは、素質があるからではなかった。
 ただ、田舎者だったからなんだ。
 あとで聞いたことだが、クレイブは田舎の出身ではない。
 都会の出身だ。
 ゴーディもケリーもジェシカもそう。
 って言っても血筋がいいわけではない。
 全員スラムの出身。
 全員生きるために盗みや暴力を行っていたやつらだ。
 それも一種の地獄のような世界。
 毒虫同士の戦いを勝ち上がった毒虫の王たちだ。
 
 田舎の出身と言ったのはぼくたちの共感を得るため。
 真っ赤な嘘だ。

 あと、暁の虎がぼくたちを奴隷にしたのは、下働きをさせるため。
 そして、魔獣の餌として。
 ギルドは魔獣の生息地はだいたい把握しているが、時々イレギュラーがある。
 A級、B級の魔獣や悪魔が予想外に出現するということがあるのだ。
 基本的にレベルの高い魔獣や悪魔は群れない。
 だから、奴隷を生贄にして逃げることができるのだ。

 こき使うだけこき使って、そういうことがあったら魔獣の餌に捧げられる。
 それが冒険者の奴隷だ。
 冒険者学校ではそういうことも教えてくれる。
 だから、こんな境遇に陥るのはぼくたちのような田舎者だけ。

 それじゃあ、逃げればいいと思った。
 しかし、この腕輪と契約書。
 それがある限り、こいつらから逃げられないのだ。
 契約書から一定の距離離れると腕輪は爆発する。
 それと契約をやぶると腕輪は爆発する。
 つまり、利き腕を失うわけだ。
 命までとられるわけではない。
 しかし、利き腕を失ってこいつらから逃げられるとは思わない。
 
 ぼくは、自分たちの境遇を受け入れるしかなかった。
 ただ、ひとつ良かったことはゴーディに稽古をつけてもらえるということだった。
 彼らとしてもぼくたちが少しは戦えるほうが都合がいい。
 魔獣と戦わせることができるからだ。
 ゴーディはストレス解消のため、稽古と称してぼくを鍛えてくれた。
 それでゴブリンや角鼠、狼くらいは倒せるようになったのだった。
 
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